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第63話 健闘むなしく僕の戦車は破壊され、再出撃する

 バギーにはA4も乗っていた。

 A4が駆けよってきて、ブロートーチ(小さいガスバーナーみたいなやつ)で戦車の修理を始める。


 大破していた戦車の体力が、みるみる回復していく。

 ジェシカさんが手配してくれたんだな。最高のタイミング。助かりすぎる!


 BoDシリーズ究極の兵器は、このブロートーチだよな。

 数十秒で戦車を完全修理できるし、敵兵士を焼き殺すこともできるし、恐ろしいテクノロジーだぜ。


 A4が「ベイグン脅威のメカニズム……」謎の言葉を口にした。


「A1はスパロボとかで知った口だろ?」


「今だと動画配信とかあるし、そっちで知った?」


「えっと。父さんがブルーレイボックスを持ってるんです」


「あー。そっか親がリアルタイムで見た世代なんだ」


「高校生がリアルタイムって、Xとか?」


「あ。中学のときにDEESの劇場版を見にいきました」


「中学で、DEES劇場版……」


「若っ……。ジェネレーションギャップ感じるわー。俺、中学のとき、Gだぞ」


 同時に喋られると、どっちがどっちか分からないけど、却って会話がしやすい。

 言いたいことをとりあえず言ってみる会話はけっこう楽だ。

 あまり面識のない人と、その場のノリで適当な会話をすることが、ゲーム中のチャットの醍醐味だ。


 けど、雑談はいつまでも続かなかった。


 せっかくの緩い雰囲気を、真っ赤な爆炎が吹き飛ばした。


 狙いすましたように戦車砲が、ブロックの陰にいたA3を葬り去ったのだ。

 僕は一瞬、画面に出たキルログを疑った。


「は? この距離で1撃? 弾頭強化? 狙撃パック? 爆風ダメージの範囲、広い? ヘッショ判定喰らった? なんで?」


 再び爆発音がし、少し離れた位置で対人トラップを仕掛けていたA4も吹き飛んだ。


「ビルの隙間と隙間を抜ける一瞬を狙って、戦車砲が当たる? 見えてから撃ったって着弾は間にあわないし、そもそも、いつ通るか分からないのに、予め撃った?」


 難しいが不可能ではない。

 予め、敵が現れるであろう位置に攻撃を置いておくことはある。


 不審に思いながらも僕は自分の戦車を敵の射線上から逃がす。

 僕の後退を好機と見たのであろう敵の戦車2両と歩兵ふたりが、猛攻を開始した。


 僕はゲーム台詞を口にする余裕をなくし、必死に活路を求める。


 プロチームは、ゲームシステムをよく理解した攻撃をしてきた。


 僕の戦車が弾を再装填している間に、プロチームは戦車砲では壊せないブロックに隠れる。


 普通に上手い!


「やっべえ。敵の戦車を警戒しないといけないのに、歩兵が横に回りこもうとしてる。あ。ヤバい、ヤバい。RPG来た!」


 敵の攻撃を喰らい、車体のいたる所から煙が吹きだし、動きが遅くなってきた。車内に黒い煙が充満し、視界がほとんど奪われている。


「くそっ。逃げる!」


 遠距離にいる敵の射線上に車体を晒すことになるが、退いた方が助かる見込みが大きい。


 だが、僕の戦車が交差点にさしかかった瞬間、125mm砲の火線と、ロケットランチャーの噴煙が見えた。直撃コースだ。


「駄目だ! 当たる! 死ぬ前にッ!」


 最後の戦車砲を放つのと同時に、金属のひしゃげる音が耳元で響きゲーム画面は暗転、コントローラーが激しく振動。


 戦車は爆発し、僕は死んだ。


「くそっ……。悔しいけど、敵が上手すぎた。連携が取れすぎている。完全にこっちの行動が読まれている。……まさか、どこかから見られてる?」


 次々とキルログが出てくる。

 配信者チームは、ほぼ壊滅している。

 僕が呆然としていると、単独で自由行動をしていたアリサも死亡した。


「ヤバいヤバい。今マップ上に何人残ってる? 早く再出撃しないと!」


 僕はボタンを連打した。

 連打は無意味な行為だが、気が焦るばかりで、どうにもならない。

 爆発物装備の人か戦車がいないと、敵戦車に中央道を押し切られる!


 さっき、やられる寸前に敵戦車の履帯を狙って撃っておいたから、命中していれば、それなりの時間稼ぎにはなったはずだけど……。


 1分経過して再出撃すると、直後、アリサも出撃した。


 まずい。アリサが死んでいたということは地下道を突破されたことを意味する。


 敵は中央の橋を越えて、米軍拠点間近まで来ているはず。こもままだとユウシさんの宣言どおり、レイプされてしまう。


 ジェシカさんや他のプレイヤーも一斉に再出撃してくる。

 さすがに相手はプロだ。殆どの味方が同タイミングでやられていた!


「シンさん! 作戦変更! 敵はもうマップ南側に来てる。戦車砲もRPGも吸いつくような命中精度。ヤバいです。地上で迎え撃つしかない!」


「ああ。全員、聞け! 的になるだけだから車両は禁止! 酷なことを言うが、死んでもいいから敵歩兵を撃ってくれ。カズ、お前はケツをオレ達に託して前線。アリサは狙撃で援護!」


 つまり、僕は死にまくって時間稼ぎをしろってことだな。

 へへっ、最高だぜ!


「了解……! 先に地獄に行ってるぜ!」


「寂しがるなよ。すぐにオレも行く」


 僕は興奮してきた。

 だけどアリサが「えー。狙撃ー?」と不満そうに頬を膨らませた。

 アリサは突砂を得意とするが、隠れ潜んでの狙撃も超絶技量だ。

 アリサが狙撃すれば、キルレートを下げたくない敵プレイヤーの動きは鈍るはず。


「命令に従え、アリサ上等兵。勝利したらアイスを買ってやる」


「もっといいのがいいーっ」


「しょうがないなー。『ドジクール』社製の高性能コントローラーを買ってやるから」


「わーい! やったー! えっと……。ドジルークのコントローラー、ほしーい!」


 ドジクールって、今日のイベントのスポンサーだよね?

 なんか露骨によいしょしてない?

 ジェシカさんは自然な感じで喋ってたけど、アリサはめちゃくちゃ日本語がたどたどしかった。

 それに、アリサはスポンサーの名前、言い間違えてなかった? 大丈夫?

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