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第20話 アリサが泣きながら助けを求めてくる。いったい何が

 アリサは僕の腕に触れると、袖を掴んでくいくいっと引っ張ってきた。


「カズ、助けて。4人組にレイプされた……」


 泣きそうな声は小さかったけど、近くにいた数名をぎょっとさせたようだ。


「あ、ああ。ゲームで敵にフルボッコにされたんだね!」


 僕は慌てて誰にでもなく説明した。

 非FPSプレイヤーはレイプの意味を絶対に勘違いするはず。だから、誤解を解くためにも、僕は人前で大声を出すしかなかった。恥ずかしい……。


 ゴーグルを脱いだアリサは、薄らと涙ぐんでいる……。


「ん……」


 ゴーグルを僕の方に差しだしてきた。


「見ろってこと?」


「うん……」


 僕はアリサのゴーグルを借りて装着――。

 きっつ!

 ヘッドバンド、きっつ!

 いったん外してヘッドバンドを緩めてから被る。


「え? 2キル25デス?」


 2回敵を倒して、25回自分が死んだという記録だ。

 25回も殺されているのに、よく中断せずに続けているな。


 そうだよな……。

 Sinさんって、どんな負け試合でも中断せずに最後まで続けるよな。


「移動とエイムをスティックにしてたんでしょ? 不慣れな新作だし、こんなもんじゃないの?」


「アリサが下手なんじゃないもん。こいつらが卑怯なんだもん」


「卑怯? うわっ」


 おっ、驚いたぁ。いきなり手に柔らかいものが触れた。

 どうやらアリサが僕にコントローラーを握らせようとしているらしい。

 女の子に手を触られると、なんか緊張するな。

 右に続いて左もコントローラーを渡された。僕は大人しく、なすがままだ。


 そして、両手にコントローラーが収まったので、ゲームメニューを操作してみ――。


 英語だった。


 わっかんねえよ!

 あ、いや、同じゲームで遊んでるから、なんとなく分かるけど!


 とりあえずチーム一覧くらいは分かるから見てみたら、1対4だった。細かいルール設定は分からないけど、この人数差が不公平なのは間違いない。


「あー。全員アカウント名の先頭にJP_Gunmansってついているし、クランかな。マッチング仕様がⅢと同じなら小隊組んだら同じチームになるし、運がなかったとしか……」


 人数が均等になるまで、途中参加プレイヤーがアリサの方に参加するはずだ。オンライン対戦を始めた直後の人数差は仕方ないとも言えるが……。

 ん? フレンドオンリー?

 え。もしかして、プレイヤーのフレンドしか参加できない?

 AlisiaSantiagoは新規アカウントっぽいし、フレンドはいない。だから、アリサは永遠にひとりのままだ……。


「ん?」


 対戦相手からテキストメッセージが届いた。


「ねえ、なんて書いてあるの。さっきからメッセージが来るけど、日本語、読めない……」


 アリサの声はしょんぼりと消え入りそう。

 アリサが日本語を読めなくて良かった。

 こんなクソメッセージを見て、気分を損なう必要はない。


『Alisiaちゃん、ひとりで来てるの? ゲーム終わったら一緒に遊ぼうよ』


『性別設定女だけどホントに女? 写真送ってよ』


『もしかして今日ゲスト出演するAlisia本人? 一緒にうしピョイしよう~』


「マジかよ……」


 なんだよ、このアホみたいなメッセージは。

 ゲームで一方的な展開になるのは仕方ない。悔しくても、相手の方が上手だっただけだから諦めるしかない。

 でも、このメッセージはいたずら目的にしてもクソ過ぎるだろ。


 あー、マジで、ふざけんなよ。

 アリサは僕のゲーム友達のOgataSinだぞ。

 マイ、ベストパートナーだぞ。

 4人がかりでレイプして、さらにクソ煽りメッセージ?

 何、舐めたことしてくれんの。


「カズ?」


 僕は自分のアカウントにフレンド登録申請を送るとゴーグルを外し、立ちあがる。

 部屋の前方にいるスタッフやジェシカさんに聞こえるよう、大きな声を出す。


「ちょっと、トイレ行ってきます!」


 僕はゴーグルをアリサに返すと、自分のゴーグルが入った手提げかばんを掴み、部屋を出た。


 イベント開始までまだ時間がある。

 アリサをレイプしたやつは僕が倒す!

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