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第2話 異世界転生?

「翔琉、起きられる?」


 母さんの声が聞こえてきて、オレは目を開けた。

 体が熱い。熱でもあるのか?

 

 不意に母さんがオレの額に手を当てた。


「あぁ、辛そうね。だけど、今は少しでも食べた方がいいわ」


 そう言って母さんはお粥をスプーンですくって冷ましている。


「お兄ちゃん、大丈夫?」


 その横で、朱音が心配そうにこちらを見ていた。


 なんだか懐かしい光景だ。

 と、急にまぶたが重くなり、目の前が真っ暗になった。

 でも、意識ははっきりしている。


 少しずつ頭が回り始めて、思い出した。

 さっきのは昔風邪をひいて寝込んだ時の記憶だ。


 ということは、オレは夢を見ているのか?

 なぜ。


 そんなことを考えていたら、いつの間にかオレは目を開けていた。


 視界に入ったのは、オレンジ色の光に照らされた室内。

 目は覚めたものの、なんだか頭がクラクラする。


「あっ、兄さんっ! 気がついたのね!」


 仰向けになっているオレの眼前に、少女の顔が飛び込んで来た。

 朱音?いや、違う。


 長い金髪に緑色の眼。朱音じゃないどころか、日本人ですらない。

 と言うか、耳が尖っているから普通の人間でもなさそうなんだけど。

 まるで、アニメに出てくるエルフみたいだ。


「よかった……。本当によかったっ……!」


 目の前の金髪美少女は瞳一杯に涙を溜めて、オレの手を握りしめた。

 あまりに綺麗な少女の泣き顔に見惚れそうになる。

 だけど、今は状況を整理しないと。


 気絶する前は……、そうだ。

 確か買い出しから帰ってる途中で……。


 ゆっくり記憶を辿ってみると、不意に横断歩道での出来事が鮮明に蘇ってきた。

 どうして忘れていたんだ。

 オレは車に轢かれたはずじゃないか。


 上体を起こして、自分の身体を確かめる。

 どこにも怪我はない。

 だけど、安心するより先に強い違和感を覚えた。


 肌の色がやけに白いし、腕も足もなんだか長い気がする。

 まるでオレの身体じゃないみたいだ。


「あっ、起きて大丈夫なの? まだ休んでいた方が……」


 少女は心配そうにこちらをじっと見つめてくる。

 でも、今は彼女に構っている場合じゃない。


 オレは室内を見回す。

 木製の家具類で統一されたリビングのような部屋。

 その壁際に大きな全身鏡があるのを見つけた。


 慎重に立ち上がって、鏡に近づく。

 楕円形の姿見に映ったのは、オレの顔じゃなかった。


 オレを介抱してくれていた少女と同じ、金髪に緑眼。そして、尖った耳。

 髪は短く、辛うじて男だと分かるくらいの中性的な顔立ち。

 鏡の中にいるエルフのような少年は、驚愕の表情でこちらを見ていた。


「兄さん? そんなに驚いてどうしたの?」


 振り返ると、少女は困惑したように首を傾げている。

 なんだか眩暈がしてきた。


 オレは一体どうなってしまったんだろうか?

 頭を打ってまだ夢でも見ているとかじゃないよな。


「えっ、どこに行くの?」


 外の空気を吸いたい。

 それに、ここがどこなのかも知りたかった。

 少女の制止を振り切って、家の入口っぽい扉を押し開ける。


 途端に濃密な植物の香りが鼻をかすめた。

 辺りには木でできた建物がぽつりぽつりと建っている。

 空は開けているけど、家が点在する広場の周りには立派な木々が立ち並んでいた。

 深い森の真ん中を円形に切り取って作った集落のようだ。


 沈みかけた太陽の光が樹木の隙間から差し込み、この小さな広場を照らしている。

 見覚えがないどころか、とても日本の景色とは思えなかった。


「兄さん! さっきから変だよ? もしかしたら、頭を打ったせいなのかな……。お願いだから、今は中で休んで」


 後ろから細身の少女が縋りついて来て我に返った。

 今は分からないことが多すぎる。


 まずはこの金髪美少女から話を聞いた方が良さそうだ。

 大人しく言うことを聞いて、オレは部屋の中へと引き返す。

 やれやれ、これからどうなることやら。

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