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未知なる世界の歩き方  作者: リース
5章 和の国ヤマト編
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第96話 大和山

狐の獣人たちの案内を受け、ミサキたちはようやく樹海の出口にたどり着いた。


「……ここが、出口か」


ツバキが腕を組みながら呟く。


目の前には、険しくそびえ立つ巨大な山脈が広がっていた。


木々の鬱蒼と生い茂る樹海とは違い、目の前の風景はどこか荒々しく、岩肌がむき出しになった険しい山々が連なっている。


冷たい風が吹き抜け、先ほどまでの湿った空気とは違う乾いた感触が肌をなでた。


狐の獣人たちはミサキたちの前で足を止めると、静かに言った。


「我らが案内できるのはここまでだ」


リーナが少し寂しそうな顔をする。


「ここまで来れたのも、あなたたちのおかげです。本当にありがとうございました」


狐の獣人は小さく頷いた後、険しい表情で続けた。


「……気を付けろ、この森の外では龍が徘徊してる。見つかったらどうなるかわからんぞ?」


「……龍」


大和山に入る時にもツバキから聞かされていた事だ。


今までは龍をさける為に森の中を通っていたが、ここから先は見晴らしのいい山だ、龍から見つかる可能性も高まるだろう。


「……これは、今まで以上に険しい旅になりそうだな」


ツバキが気を引き締めるように刀の柄を握り直す。


ミサキも覚悟を決めた表情で頷いた。


「でも、ここで引き返すわけにはいかないですね」


リーナも決意を固めたように杖を握りしめる。


「そうだな……ここまで来たんだ。絶対に、桜楼石を手に入れよう」


ミサキは深く息を吸い込み、力強く言い放つ。


「気を引き締めて行こう!」


こうして、ミサキたちは新たな試練に挑むべく、龍の縄張りへと足を踏み入れるのだった。


***


目の前にはそびえ立つ大和山。


ごつごつとした岩肌、急峻な崖、そして獣たちの咆哮が山中に響き渡る。


「こんな場所、本当に登り切れるんでしょうか……?」


リーナが不安そうに呟く。


「行くしかないな……」


山道を進むミサキたちの前に、突然、虎のモンスターが飛び出してきた。


「ガウウウウッ!」


「来たぞ……!」


ミサキが剣を構えると、ツバキもすかさず身構える。


「こっちもいます!」


リーナが指をさした先には、獅子のモンスターが唸り声をあげていた。


「クソッ、モンスターの群れか!」


「片付けるしかない!」


虎が鋭い牙を剥いて飛びかかってくる。


ミサキはそれを紙一重でかわし、剣を振るって虎を切り裂く。


ツバキも素早い動きで獅子の首を狙い、刀で切り裂く。


「ホーリー・ランス!」


リーナの光の槍が、獅子のモンスターの胴体を貫いた。


しかし、まだまだ数は多い。


「これで……終わりだッ!」


ミサキの剣が最後の虎を貫くと、山道に静寂が戻った。


「ふぅ……倒したか」


息を整える三人。


すでに辺りは暗くなり始めていた。


「そろそろ野宿にしようか……」


「そうですね……」


三人は少し開けた場所を見つけると、リーナが杖を一振りし、周囲を包む結界が形成された。


「これでしばらくは安心ですね」


「助かるよ……さて、飯でも作るか」


ミサキがリュックをゴソゴソと漁りながら言うと、二人も頷いた。


「さて、今日の食材は……コイツらだな」


ミサキは倒した虎のモンスターと獅子のモンスターの肉を取り出し、手際よく肉を捌いていく。


「よし、肉は準備完了。次は味付けだな」


ミサキは荷物から酒と醤油、ハチミツを取り出す。


「それで何を作るんですか?」


「焼肉のタレだよ」


ミサキは鍋を取り出し、酒と醤油、ハチミツを適量入れる。


そして鍋を火にかけ、じっくりと煮詰める。


しばらくすると、芳ばしい香りが辺りに広がった。


「わぁ……いい匂いです!」


リーナの顔がパァッと明るくなる。


「じゃあ、焼くぞ」


ミサキは鍋に油を引き、肉を乗せた。


ジュウウウウッ……!


焚き火の上で肉が焼ける音が響き、たちまち食欲をそそる香ばしい匂いが広がる。


「うわっ、すごく美味しそうです!」


リーナが目を輝かせる。


ツバキも興味深そうに見つめる。


ミサキは焼き上がった肉をタレに絡め、まず一口食べた。


「……うん、美味い」


「本当!?私も!」


リーナが急いで肉を口に運ぶ。


「……!!すごい、こんな美味しい焼肉、初めてです!」


「タレがいい感じに馴染んでるな。うん、美味い」


ツバキも満足げに頷いた。


「これなら米も持ってくれば良かったな……」


ミサキはちょっと不満そうにするも、美味しく肉をいただいた。


焚き火の炎が静かに揺れる中、三人はしばし戦いを忘れ、至福の食事を楽しんだのだった。


***


焼肉を食べ終えたミサキたちは、手際よく片付けを済ませた。


「ふぅ……満腹だ」


ツバキが満足そうに腹をさする。


食器を片付け、簡単な寝床を作ると、三人は空を見上げた。


「……綺麗」


リーナがぽつりと呟く。


空はすっかり日が暮れ、無数の星が瞬いていた。


まるで宝石を散りばめたような、美しい夜空。


「久しぶりにこんな星空をゆっくり見るな」


ツバキが腕枕をしながら、ぼんやりと呟く。


「ああ、本当に綺麗だ……」


ミサキもそれに小さく頷く。


「ふふ……なんだか、不思議な気分です」


リーナが微笑む。


「こうやって三人でのんびりする時間も、悪くねぇな」


ツバキも目を閉じながら言った。


「さて……そろそろ寝るか」


ミサキが立ち上がり、伸びをする。


「うん、明日も大変そうですし、早めに休みましょう」


ミサキとリーナは布団に入る。


ツバキは剣を抱きながら横になった。


静かな夜。


遠くで鳴く獣の声だけが響く。


星空の下、三人は静かに目を閉じ、明日に備えて眠りについたのだった。

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