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未知なる世界の歩き方  作者: リース
5章 和の国ヤマト編
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第94話 もう1人の自分

ミサキたちは慎重に樹海の奥へと進んでいた。


先ほどの不可解な眠りに襲われた件もあり、警戒を怠ることはできない。


「……誰かいる!」


リーナが声を上げ、ミサキとツバキもすぐに身構えた。


樹木の間から、3つの人影がゆっくりと姿を現す。


ミサキは目を見開いた。


「嘘だろ……?」


そこに立っていたのは、もう一人の自分たちだった。


ミサキ、リーナ、ツバキ


すべて瓜二つの姿をした者たちが、無言のまま彼らを見つめている。


「一体どういうことだ?」


とツバキが警戒を強める。


「また夢を見ているのか……!?」


ミサキも警戒し、剣を構える。


すると、もう一人のミサキたちは突然襲いかかってきた。


ミサキはすぐに剣を抜き、向かってきたもう一人の自分の剣を受け止めた。


「くっ……!」


その剣の軌道、動きの癖、間合いの取り方……すべてがミサキ自身と寸分違わぬものだった。


そして次の瞬間、相手の剣が淡く発光し、爆発を引き起こした。


「なっ!?」


ミサキはすんでのところで飛び退いて回避する。


「エクスプロード・カリバーまで……!本当に厄介だな……!!」


疑問が浮かぶも、今は考えている暇はない。


相手は完全に自分と同じ剣技に同じ魔法剣まで使ってくる。


だが、ミサキは負ける気はなかった。


リーナはすぐに杖に魔力を込め、光弾を放つ。


しかし、相手も全く同じタイミングで光弾を撃ち返してきた。


二つの光弾がぶつかり、相殺される。


「まるで鏡合わせ……」


どんな魔法を使っても、相手は同じ魔法で迎撃してくる。


このままでは、攻撃が無意味なまま終わってしまう……


ツバキは即座に間合いを詰め、素早い斬撃を繰り出した。


だが、もう一人のツバキも全く同じ速度で対応し、刃を受け止める。


「ほぉ……」


ツバキは思わず笑みを浮かべた。


「拙者と同じ動き、同じ技、同じ剣筋……なかなか面白いじゃないか!」


まるで自分自身と戦っているような感覚。


だがツバキは、この戦いをどこか楽しんでいた。


***


しばらく6人の勝負は続いていた。


互角に見えた戦いは、少しずつ変化を見せ始めていた。


最初は完全に同じ技、同じ戦い方だったが、次第に本物のミサキたちが優勢になっていく。


「……どうやら、完璧なコピーというわけじゃないみたいだな」


ミサキが剣を振るいながら叫ぶ。


相手は確かに自分と同じ動きをするが、どこか微妙なズレがある。


「ふっ、やはり拙者と同じ速さとはいかないか!」


ツバキも口元を歪める。


リーナも気づいていた。


「技の精度……魔法の威力……全部、私たちより少しだけ劣ってる……!」


それが決定的な違いだった。


「これで決める!」


ミサキは爆炎の剣を高く振り上げ、全魔力を注ぎ込む。


剣の刃が真っ赤に燃え上がり、まるで流星のように素早く剣を振る。


もう一人のミサキがそれを見て迎え撃とうとするが


「遅い!!」


ミサキの炎の剣が偽物の剣を爆発で弾き飛ばした。


そして、そのまま偽物の胸を切り裂き、爆炎とともに焼き尽くした。


偽物は叫びもあげることなく、炎に包まれて消え去った。


リーナは光の弾丸を相手の周囲に大量に展開していた。


「ホーリー・コンセントレイト!!」


リーナが高く杖を掲げると、展開されていた弾丸が偽物に降り注ぐ。


爆発音と共に、偽物にダメージが入る。


「ホーリー・ランス!」


その隙を逃さず、リーナは光の槍を偽物相手に放つ。


光の槍に貫かれた偽物のリーナは、そのまま塵となって消えていった。


ツバキは相手と互角の速さで斬り結んでいた。


だが、次第にその速度にわずかな差が生まれ始めた。


「やはり、拙者の速さについて来れる者はいない!」


ツバキは微細な隙を見逃さなかった。


一瞬、相手の動きが遅れた。


「そこだ!!!」


ツバキは超高速で相手の背後を取ると、一閃。


刃が風を切り、偽物のツバキの胴を真っ二つに裂いた。


そのまま偽物は消滅する。


息を切らしながらも、三人は勝利を収めた。


樹海には、もう敵の姿はなかった。


「はぁ……終わった……」


ミサキが剣を下ろし、大きく息をつく。


「まさか……自分自身と戦うことになるなんて……」


とリーナ。


ツバキは肩を回しながら


「なかなか面白い相手だったが、もうやりたくはないな……」


と苦笑する。


それぞれが戦いの余韻を味わいながら、再び前へ進むのだった。

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