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未知なる世界の歩き方  作者: リース
4章 海底都市アトラント編
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第82話 海の英雄達

静かな波の音が遠くに聞こえる。


ミサキはゆっくりと目を開けた。


目に映ったのは、ふかふかの枕と天井に揺れる水の光。


「……ここは?」


「目を覚ましたんだ、よかった!」


安心したようなリーナの声が響く。


ベッドの隣にはリーナが座っていた。


「……リーナ?」


「気を失ってたんですよ。あれだけの死闘をしたんだから、当然といえば当然ですけど」


リーナが微笑む。


「……そうか」


ミサキはゆっくりと上半身を起こす。


「それで……海賊はどうした!?」


突然思い出し、身を乗り出した。


あの戦いの記憶がまだ鮮明に残っている。


キッドを倒した後、どうなったのか


「大丈夫。無事、騎士達に引き取ってもらいましたよ」


「……そうか」


ミサキは胸をなでおろした。


「お金も受け受け取りましたよ。全部合わせて20億ガル」


「おお、苦労したかいがあったな、大金持ちだ!」


そんな会話を二人でしていた。すると。


ガチャッ


「目を覚ましたようね!」


部屋の入り口で腕を組みながら、ツンとすました顔のアクアが入ってきた。


「アクア……」


「ほら、海賊を撃退した英雄をみんなが待ってるわよ!」


そう言うと、アクアは得意げに笑った。


ミサキたちはホテルを出ると、海底都市のレストランへと向かった。


レストランにはすでにたくさんの人魚たちが集まり、ミサキたちの到着を待っていた。


「おおっ、来たぞ!!」


「海賊を倒した勇者様だ!!」


「ミサキ様、リーナ様、アクア様!ありがとう!」


人魚たちの歓声が響く。


「うわぁ……これはすごい」


リーナが目を丸くする。


テーブルには美しい貝殻の皿に並べられた海の幸、サンゴの花が飾られた宴の席。


「歓迎してくれてるんだな」


「まあ、英雄様だからね」


「英雄なんて、そんな大げさな……」


「遠慮しないの!!」


アクアがグラスをミサキ達に手渡す。


「せっかくの祝宴、楽しみましょう!」


こうして宴会に参加した三人だった。


***


宴会を楽しむミサキ達三人。


おいしい食事を食べながら、人魚達にお礼を言われていた。


そんな中


「アクア……」


おずおずと、一人の人魚がアクアに話しかけた。


青い髪を持つ、可愛らしい人魚。


「マリン!」


アクアの顔がパッと明るくなった。


「大丈夫なの?外に出て」


「うん……もう大丈夫……いつまでも落ち込んでばかりじゃいられないからね……」


マリンはぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。


「今でも海賊は怖い……でも……わかったの。海賊が私達を襲ってきても……アクアが守ってくれるって……」


「!!」


「ありがとうアクア……海賊から……街を守ってくれて……」


マリンは優しそうな笑顔でお礼を言う。


「当たり前でしょっ!!!」


アクアはマリンに思い切り抱き着いた。


マリンは顔を赤くしながらも、そっとアクアの背中に手を回す。


ミサキとリーナは、その様子を微笑ましく見ていた。


「おう!アンタら!よくやったな!」


ふと、ミサキとリーナの肩が叩かれる。


後ろを見ると、1人の人魚が立っていた。


「アンタら、ウチの事が分かるか?」


「えっ……その喋り方、まさかリバイアサン!?」


まさかの事態に驚くミサキとリーナ。


「正解や!偶にこの姿に変身してここに来るんや。

龍の姿やと驚かれるし、大きすぎて店の中にも入れんからな!」


「そんなことができるんだ……!」


「と言うより、リバイアサンって、女性だったのか!?」


「ハッハッハ!よく間違えられるわ!」


リバイアサンはけらけらと笑いながら酒を飲む。


すると


「人魚王様のいらっしゃったぞ!」


突如、街のあちこちで平伏する人々。


ミサキとリーナもその方向を見ると、威厳ある長身の人魚が泳いできた。


人魚王・ポセイドン、アトラントの王が、彼女たちの前に現れたのだ。


「勇敢なる者たちよ!」


人魚王の堂々たる声が響く。


「そなたたちがこのアトラントを救ってくれたこと、王として深く感謝する!」


街の人々も一斉に歓声を上げ、拍手と歓呼の声がミサキたちを包む。


だが


「当然のことをしたまでですよ」


リーナが静かに言うと、ミサキも頷く。


「私は悪人を倒しただけです」


二人の潔い言葉に、人魚王は満足そうに笑みを浮かべる。


「うむ、まことに立派な心構えよ!そんなそなたたちに、我が王国よりささやかなお礼をさせてくれ」


そう言うと、人魚王は片手を掲げ、力強く宣言した。


「恩人たちよ!この宴を存分に楽しんでくれ!!!」


歓声と共に、アトラントの広場にはたちまち豪華な宴の準備が進められていった。


「今回は、ここに住んでくれーとは言われませんでしたね」


「流石に人間がここに住む事はできなさそうだからね」


二人はヒソヒソと、そんな話をする。


宴会は更に盛り上がる。


テーブルに並べられる海の幸、光る珊瑚で飾られた舞台では美しい人魚たちが舞い踊る。


人魚たちの歌声が夜の海に響き、ミサキとリーナはこの幻想的な宴の雰囲気に心を緩めるのだった。


***


宴会の余韻がまだ残る中、ミサキとリーナは海上に浮かぶイカダの上で次の船を待っていた。


潮風が心地よく吹き抜ける。


二人は水着と網を返却し、元の服に着替えた。


ミサキが腕を伸ばし、空を仰いだ。


「本当に色々ありましたね」


リーナが微笑みながらミサキを見た。


そこへ、海からひょっこりと顔を出したのは


「行ってしまうのね」


アクアだった。


彼女の表情はどこか寂しげだった。


「寂しくなりますね……」


リーナが優しく微笑む。


「べ、別に寂しくなんて……」


アクアはそう言いかけたが、言葉に詰まり、唇を噛んだ。


そして


「……ううん、寂しいよ」


ぽつりと、本音をこぼした。


ミサキとリーナは思わず顔を見合わせた。


「今日は素直なんだね」


ミサキがニヤリと笑う。


「う、うるさい!!」


アクアは顔を真っ赤にして、水しぶきを上げる。


「また来なきゃ承知しないんだからね!」


そう言って、ぷいっと顔を背けた。


ミサキとリーナはくすっと笑い、頷いた。


「もちろん。また来るよ」


ミサキの言葉に、アクアは小さく頷いた。


「おーい!乗るなら早くしろよー!」


沖の方から、新しい船の船長の声が響いた。


「じゃあ、行くね」


リーナが軽く手を振る。


ミサキもアクアの方を見て、にっと笑った。


「またな、アクア」


「……うん、気をつけてね!」


そう言いながらも、アクアの瞳はどこか寂しそうだった。


ミサキとリーナは船に乗り込み、再び新たな冒険へと旅立つ。


アクアは遠ざかる船を見送りながら、小さくつぶやいた。


「本当に、また来なさいよ……!」


海風が吹き抜け、波の音が優しく響く。


こうして、ミサキたちは次なる島へと向かうのだった。

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