第80話 VSエドワード3
青く深い海の中、ミサキ、リーナ、アクアは海賊エドワードと対峙していた。
紫色の毒が滲む水流の中、エドワードは不敵な笑みを浮かべている。
「……お前はここで終わりだ、エドワード!」
ミサキが剣を構え、一気に加速しながらエドワードへと迫る。
水の抵抗をものともせず、一直線に突き進む彼女の剣先が、エドワードを狙う。
「チッ、しつこい奴だ……!」
エドワードは眉をひそめると、右手を振り上げて魔力を解放した。
「ヴェノム・ウェーブ!!」
ゴゴゴゴゴ……!
海水が紫色に染まり、巨大な毒の大波がミサキを飲み込もうと押し寄せる。
水の流れが歪み、毒の濁流が渦を巻いて襲い掛かる。
「……させない!」
その時、アクアが前に出た。
「ウォーター・ウェーブ!!」
アクアの手から放たれた純粋な水流が、毒の波にぶつかる。
ドォォォン!!!
激しい衝撃が海中に響き、アクアの水流がエドワードの毒を押し戻していく。
「おっと、これは驚いたな……」
エドワードはニヤリと笑ったが、その瞬間
「そこだッ!!」
ミサキが猛然と突進し、剣を鋭く振るう。
ギィン!!
エドワードも剣を抜き、素早く受け止めた。
「まだまだ甘ぇよ!ヴェノム・スパイラル!!」
エドワードは剣を押し返しながら、魔力を込めてさらに大渦を巻き起こした。
水の流れが激しく変わり、ミサキの体が激しく揺さぶられる。
「くっ……!」
海中での渦潮は陸上の竜巻に等しい。
まともに巻き込まれれば、身動きすら取れなくなる。
しかし、エドワードの攻撃はそれだけではなかった。
「ヴェノム・スプラッシュ!!」
渦潮の中から、彼は猛毒の弾丸を放つ。
シュバババッ!!
鋭い毒の銃弾がアクアへと向かっていく。
「アクア!」
ミサキが叫んだ瞬間
「バリア!!」
リーナが素早く魔法を詠唱し、光のバリアを展開する。
バシュッ!!
猛毒の弾丸がバリアに弾かれ、周囲の水へと溶け込んでいく。
「助かった……!」
アクアが安堵する暇もなく、エドワードの作り出した毒の渦潮が周囲を飲み込もうとする。
「そんなもの……私の魔法で押し流してやるわよ!!」
アクアが両手を広げ、水流を操る。
「ウオーター・スパイラル!!!」
アクアが放った水の渦が毒の渦潮とぶつかり、拡散させていく。
毒が徐々に中和され、視界が開ける。
「もう一度行くぞ!!」
ミサキが再び剣を振り上げ、エドワードに向かって突き進んだ。
鋼の刃が水を切り裂き、今度こそエドワードへと迫る。
海の深淵で続く死闘。
ミサキの剣がエドワードの間合いに迫ったその時
「調子に乗るんじゃねぇ!!!」
エドワードが怒りを露わにし、両腕を大きく広げた。
「だったら全部飲み込んでやるよ!!」
彼の周囲の水が不気味な紫色に染まり、海全体が震える。
「ヴェノム・タイダルウェーブ!!」
バシャアアアアン!!
海底が揺れ、大海嘯のような毒の超大波がミサキたちに襲いかかる。
「ッ……!!」
ミサキはすぐさま剣を構えた。
「……ここを突破するしかない!!」
魔力を込め、剣が赤々と燃え上がる。
「エクスプロード・カリバー!!」
ミサキが剣を振るうと、炎が爆発的に広がり、毒の波を吹き飛ばす。
しかし、それでも毒の波を完全に吹き飛ばす事はできなかった。
「しまった……!!」
毒の波は、そのままミサキを飲み込んでいった。
更に、波の勢いは止まらず、リーナとアクアにも襲いかかる。
「ホーリー・シールド!!」
「ウォーター・シールド!!」
リーナとアクアがとっさに魔法の盾を展開する。
しかし
ミシミシミシ……!!
圧倒的な水圧に、バリアが悲鳴を上げる。
「っ……耐えられない……!!」
二人の顔が歪む。バリアの表面に亀裂が入り、今にも砕け散りそうだった。
その時
「待たせたな!!」
どこからか轟くような声が響き渡る。
次の瞬間、巨大な水流が周囲を包み込み、毒の波を押し返していった。
「え……?」
アクアとリーナが驚きの声を上げる。
そこに現れたのは
「……リバイアサン!!」
全身傷だらけの巨大な龍が、苦しそうに息をしながらも、全力で水流を操り、毒の津波を押し返していた。
「はぁ……はぁ……なんとか間に合ったようやな……!」
リバイアサンの力で、毒の波は完全に消滅する。
「よかった……!」
アクアとリーナが喜びの声を上げる。
しかし、リバイアサンの体はボロボロだった。
ダイダロスとの戦いの傷が深く、今にも崩れ落ちそうだ。
「大丈夫ですか!?リバイアサンさん!!」
「ああ……何とか大丈夫や……まだ戦えるで……!!」
どう見ても限界だが、なんとか空元気を見せるリバイアサン。
リーナはエドワードの方を向く。
そこには
「ミサキ!!!」
意識を失い、海中に浮かんでいるミサキが見えた。
「ハッハッハ!!!俺の毒波を食らったんだ!そいつは死んだな!」
エドワードが勝ち誇り、高笑いする。
「次は貴様らだ、ヴェノム・スプラッシュ!!!」
エドワードは今度はリーナ達に向かって毒の弾丸を放つ。
「させへんで!オーシャン・シールド!」
リバイアサンが水の障壁を出し、毒の弾丸を防ぐ。
「ミサキ!!ミサキ!!!」
ミサキの元に駆けつけるリーナ。
まだ、かすかに息はある、死んではいない。
「絶対に助けて見せる!もう、死なせたりしない!!」
リーナは全力で魔力を集中させ、魔法を使う。
「メガヒール!キュア!メガヒール!キュア!」
必死に回復魔法と解毒魔法を使うリーナ。
師匠の元で解毒魔法を叩きこんだリーナであっても、エドワードの強力な毒の解毒は困難だった。
しかし、それでも、リーナは諦めなかった。
絶対にミサキを助けて見せる……と
***
一方エドワードの方は、リバイアサンとアクアが戦っていた。
「気ぃ付けろよ!その毒!当たったらアカンで!!間違いなく即死や!!」
「わかってるわよ!」
流石の龍神リバイアサンでも、エドワードの猛毒を受けたら大ダメージを受けるのは必至だった。
ましてや毒の訓練も受けてない、普通の人魚であるアクアが受けたら、確実に即死だ。
だから、ミサキ以上に、エドワードの攻撃に慎重に対応せざるを得なかった。
「ヴェノム・スパイラル!!」
「オーシャン・スパイラル!!」
エドワードが毒の大渦を巻き起こせば、リバイアサンがその大渦を打ち消す。
「ウォーター・バレット!!」
その隙にアクアが水の弾丸でエドワードを狙う。
しかし、エドワードはその攻撃を剣で弾く。
既に満身創痍であるアクアとリバイアサンと違い、エドワードの方はまだまだ余裕がある。
猛毒の脅威も相まって、2対1にも関わらず、だんだんとアクアたちは追い詰められていく。
「どうした?もう終わりか?」
「くっ……!」
「強い……!」
「これで終幕だ、ヴェノム・ウェーブ!!!」
猛毒の波がアクアとリバイアサンを襲う。
その瞬間。
「エクスプロード・カリバー!!!」
爆発が猛毒の波を吹き飛ばした。
「まさか……!」
「心配かけたな……」
そこに現れたのは、無事回復したミサキだった。
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