第76話 VSロバーツ
嵐のように荒れ狂う海の上、ロバーツは軽やかに跳び、リーナのいる船の残骸へと飛び乗った。
「ほう、俺の相手は嬢ちゃんか」
男は鋭い目つきでリーナを見下ろし、剣を軽く回す。
その刃には微かに青白い輝きが宿っていた。
「さて、楽しませてもらおうかな?」
シャッ!
ロバーツが一瞬で距離を詰め、剣を振り抜いた。
「……!」
リーナは即座に杖を構え、それを受け止める。
――しかし、次の瞬間。
杖の表面が凍り始めた。
「っ……!?これは……氷の魔法!?」
リーナが驚愕する中、ロバーツは余裕の笑みを浮かべる。
「俺の刃はな、一度触れればすべてを凍らせる。氷結のロバーツの異名は伊達じゃねえぜ?」
リーナは急いで杖を振り払い、氷を砕く。
間髪入れずに、光の魔法を放つ!
「ホーリー・ショット!」
ピシュンッ!
黄金の閃光がロバーツへ向かって飛ぶ。
「チッ、そんなもんか?」
しかし、ロバーツは軽く身体を捻り、光弾を避ける。
「お前の光魔法なんて、当たりゃしねえよ」
そう言いながら、ロバーツは再び間合いを詰め、鋭い剣撃を繰り出す。
「……ッ!」
リーナはそれを受けてはいけないと悟る。
彼の刃を受ければ、即座に凍らされる……!
「なら……回避に専念するしかない……!」
リーナは俊敏に動き、残骸の上を跳ねるようにして攻撃をかわす。
「逃げるだけか?」
ロバーツが余裕を見せながら、執拗に攻めてくる。
リーナは咄嗟に回避に専念する。
――この剣を受けたら、終わり。
それがわかるからこそ、リーナは回避しつつ光の弾丸を次々に撃つ。
「ホーリーショット!」
「ホーリーショット!」
「ホーリーショット!」
しかし、ロバーツは冷静に光弾を避けていく。
「そんな小細工じゃ俺は止まらねぇよ!」
じりじりと詰め寄るロバーツ。
そして――
リーナは残骸の端に追い詰められた。
「終わりだ、嬢ちゃん」
ロバーツは勝ち誇ったように、渾身の一撃を振り下ろした。
――その瞬間。
「……っ!?」
ドドドッ!!
ロバーツの背中に衝撃が走った。
「な、なんだ……!?」
彼の表情が驚愕に歪む。
リーナはニヤリと笑った。
「私が撃った光弾、ただの攻撃だと思いましたか?」
実はリーナは光弾を操作し、ロバーツの背後から攻撃を当てていたのだ。
「威力は大したことないですけど……」
リーナが杖を掲げ、魔法を発動する。
「隙はできましたね!ホーリー・ランス!!」
黄金の槍がロバーツの身体に一直線に突き刺さる。
「ぐあああっ!!」
ロバーツが残骸の上を転がる。
だが――
彼はすぐに立ち上がった。
その目は怒りに燃えていた。
「嬢ちゃん……よくもやりやがったな」
「はぁ……はぁ……」
リーナは、息を整えながら冷静に次の手を考える。
「嬢ちゃん……さっきの光弾の不意打ち、もう通じねぇぞ」
ロバーツは不敵な笑みを浮かべ、自身の体を氷の鎧で包み込んでいく。
「これで光弾が当たろうが、俺には傷一つつかねぇ」
リーナの表情が険しくなる。
――攻撃が通らないなら、どうする?
「……ッ!」
その思考を見透かしたように、ロバーツは剣を振り下ろした。
「アイス・フィールド!!」
直後、イカダごと周囲の海が凍りつく。
「しまっ――!」
リーナは急いで光のバリアを展開し、凍結を防ぐ。
しかし、その隙を見逃すロバーツではなかった。
「コールド・ブレード!」
無数の氷の剣が空中に現れ、一斉にリーナへと襲い掛かる。
「くっ……!!」
リーナはバリアを強化するが、氷の剣の一撃が貫通し、肩を裂く。
「ぐっ……!」
痛みに顔を歪めるリーナ。
「くらいやがれっ!!」
すかさずロバーツの剣がリーナを襲う。
リーナはなんとか回避するが、足元は氷で滑りやすくなっている。
そのせいで動きが鈍り、回避の精度が落ちる。
ロバーツがさらに攻撃を畳みかける。
リーナも光の弾丸を放つが、ロバーツの鎧には通用しない。
次第にリーナは、足場の端まで追い込まれる。
「ははは、もう逃げ場はねぇぞ!」
そしてそのままロバーツが振った剣は、リーナの肩を切り裂いた。
「あああああああっ!!!」
激痛が走り、肩が凍り付き始める。
「これで終わりだ!」
ロバーツの勝利は確定したように思えた。
「それはどうかな?」
リーナは、冷たい笑みを浮かべる。
「なに?」
ロバーツが疑問に思った瞬間、リーナは左手でロバーツの右手を握り、右手で杖をロバーツに向けて構えた。
「これなら避けられないでしょ?」
リーナが杖に魔力を集中させると、杖が強く光り輝く。
ロバーツが後ろに引こうとするが、リーナの手がロバーツを離さない。
「は、離せ!」
ロバーツはリーナの顔を殴りつける。
しかし、それでもリーナは腕を離さず、リーナの目線はロバーツをしっかり捉えていた。
「や、止めろおおおお!!!」
「食らえ!ホーリー・ジャベリン!!」
リーナの杖から巨大な光の槍が放たれる。
その巨大な槍は、ロバーツの氷の鎧を貫通し、遠くに吹き飛ばした。
海上で繰り広げられる激闘。
リーナとロバーツ――二人とも満身創痍だった。
ロバーツの氷魔法がリーナの体温を奪い、凍てつく傷が痛みを増す。
リーナの光魔法がロバーツの身体を焼き、体力を奪っていく。
それでも、どちらも倒れない。
「しつこい嬢ちゃんだ……ここまでやるとはな」
ロバーツが苦しげに息を吐く。
だが、その目にはまだ闘志が燃えていた。
「……お互い様ですよ」
リーナも呼吸を整えながら、杖を強く握る。
そして――
「これで決めるぞ!!!」
ロバーツが叫び、氷魔法の極致を解き放つ。
「アブソリュート・ライガー!!」
彼の剣の刃から、咆哮を上げる巨大な氷の虎が噴き出て、リーナへと猛然と襲い掛かる。
「こっちも全力よ……!」
リーナも最大の魔力を込め、光の大槍を生み出す。
「グランド・クロス!!!」
光が凝縮され、激しい輝きを放つ十字の光が放たれる。
「おおおおおおおおお!!!」
「はああああああああ!!!」
氷の虎と光の十字架が空中で激突する。
轟音と閃光に衝撃波。
その場の凍った海が大きく揺れ、天まで届くような水柱が巻き上がる。
しばらくの間、二つの魔法は拮抗していた。
しかし――
ズドォォォン!!!
リーナの光の十字架が氷の虎を貫通する!
「なっ――!?」
ロバーツの顔に驚愕が浮かぶ。
「いっけええええええええ!!!」
そのまま光の十字架は止まらず、一直線にロバーツへと迫る。
「ぐあああああああああっ!!!」
光の十字架がロバーツを巻き込んだ――
彼の体が宙を舞い、勢いよく水面に叩きつけられる。
海に残った氷も音を立てて崩れ落ちた。
ロバーツは、もう立ち上がれない。
「か……勝った……」
リーナが、勝利を確信した瞬間だった。
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