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未知なる世界の歩き方  作者: リース
4章 海底都市アトラント編
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第72話 深海へ2

しばらく海底を進んでると、底が見えないぐらい大きな海底崖に辿り着いた。


「大きい崖ですね……」


「この底に、リバイアサンの海底神殿があるのよ」


「じゃあ、行くか!」


こうして三人は海底神殿を目指して海底崖に潜り始めた。


深く深く潜っていく三人。


そこまで深く潜るとなると、水圧も大変な事になってくるが、鍛えた三人には問題は無かった。


時折何度かモンスターが襲いかかるが、ミサキの剣と、リーナとアクアの魔法で難なく倒す。


しばらく泳ぎ続けると、周囲は徐々に暗くなっていく。


「うぅ……だんだん光が届かなくなってきたわね……」


アクアが不安げに呟く。


上を見上げても、もう太陽の光はほとんど届いていない。


ただ、じわじわと深海の静寂と冷たさが広がっていく。


「ここまで来ると、もう完全に深海って感じですね……」


「……でも、このままだと前が全く見えないな」


リーナは杖を前にかざし、明かりの魔法を発動する。


「ライト!」


柔らかな光が広がり、周囲の海を優しく照らす。


その瞬間


「……っ!!」


アクアが息を呑んだ。


光に照らされた海の中には、今まで見たこともない奇妙な深海魚たちが泳いでいた。


巨大な口と発光器を持つアンコウのような魚。


目の無い魚や、透明な身体をした魚。


発光する魚、触手を伸ばす深海生物たちが、静かに泳いでいた。


どれも地上の海では見られない、不気味で幻想的な生き物ばかりだった。


「……うわぁ、すごい」


リーナは興味深そうに目を輝かせる。


「これが深海魚……!」


「流石の私もこんなのは初めて見るわね……」


アクアが神妙な顔で言う。


三人は深海の景色に見惚れつつ、更に奥に潜っていく。


すると、闇の奥から、骨だけの魚の群れが飛び出してきた。


目も無いそれらは、まるで生気を求めるように三人へと襲い掛かってくる。


ミサキが前に出て、剣で骨の魚を切り裂く。


「ウォーター・ショット」


アクアが放つ水の弾丸が骨の魚を撃ち貫く。


「ホーリー・サンクチュアリ!」


リーナの魔法の光が群れを包むように広がると、骨の魚たちは塵となって海中に消えていく。


「アンデッドにはやっぱりこれが効きますね!」


三人は更に深海に潜っていく。


すると、今度は、人のような手足を持つ魚人・マーマンが岩陰から現れた。


マーマンは杖のような骨の槍を掲げると、水の矢を三人に向けて放ってきた。


「くっ!」


三人は上手く水の矢を回避すると、ミサキが剣でマーマンを切り裂く。


「ホーリー・ランス!」


「ウォーター・ランス!」


リーナの光の槍と、アクアの水の槍が、マーマンを貫いた。


「まだまだ大丈夫そうね」


モンスターを退けたミサキたちは、再び海底神殿を目指して進み始めた。


途中何度かモンスターに襲われながらも、ミサキ達はそれを追い返す。


そして、どんどんと深海に潜っていく。


「本当に深いですね……」


リーナが不安げに呟いた。


「もうすぐだと思うんだけど……」


アクアも不安げに呟いた。


光の届かない深海の世界。


リーナの魔法でかろうじて周囲を照らしているが、どこを見ても暗闇が広がり、まるで底のない奈落を漂っているような感覚に陥る。


ミサキは剣を握りしめ、警戒を強めた。


「ここまで来たら、何が出てきてもおかしくないな」


だが――その時だった。


ズゥン……!


どこからともなく、低い振動音が響いた。


「……!?」


アクアが何かに気づき、振り返った瞬間、闇の中から巨大な影が迫ってきた。


「来るぞ!」


ミサキが叫ぶと同時に、影が光に照らされ、その正体が明らかになった。


それは、長くうねる体を持つ巨大なウミヘビのようなモンスター、シーザリオン。


深海に住む恐ろしい捕食者だ。


シーザリオンが突撃してくる。


ミサキが剣を構え、シーザリオンに突撃する。


「食らえっ!!」


ミサキの一閃がシーザリオンを切り裂いた。


しかし、シーザリオンは素早く尾を振るい、反撃する。


ドンッ!!


「わっ……!」


強烈な衝撃が水を押し寄せ、ミサキの体が吹き飛ばされる。


「ミサキ!」


リーナがすぐに魔法を発動する。


「ホーリー・ランス!」


杖から放たれた光の槍がモンスターを貫き怯ませる。


その隙に、アクアが槍を構えて突進した。


「ウォーター・ピアス!」


アクアの槍が渦潮を纏うと、そのままシーザリオンに突き刺した。


シーザリオンは苦しげにのたうち回り、やがて沈黙した。


「はぁ……なんとか、撃退したわね」


アクアが息を整えながら言う。


「みんな無事?」


「ええ、大丈夫ですよ」


リーナが頷く


「……でも、まだ油断はできないな」


ミサキは剣を握りしめたまま、前を見つめていた。


***


再び進み始めたミサキたちの前に、やがて巨大な構造物が姿を現した。


「……これは」


「ついに、着いたわね……」


アクアの声には、驚きと畏怖が入り混じっていた。


そこにあったのは、まるで神々の遺跡のような壮麗な建造物。


長い年月を経てなお荘厳さを保ち、巨大な門がミサキたちを待ち受けていた。


「ここが……リバイアサンの海底神殿……!」


ミサキたちは、ゆっくりと門へと向かっていった。


「やっと着いたわね……!」


アクアが神殿の巨大な門を見上げながら呟いた。


水の流れに侵食され、部分的に崩れかけているが、それでも神殿の荘厳な雰囲気は失われていない。


柱には古い彫刻が施されており、長い時を経てもなお、その神秘的な輝きを放っていた。


「じゃあ行くか、リバイアサンに会いに」


「その前に、ちょっとここで休憩しない?」


アクアが疲れた様子で腰を下ろす。


「そうですね……ちょっと疲れましたし、少し休みましょう」


リーナは魔法で結界を張ると、壁に寄りかかり、深く息をつく。


ミサキも剣と網を横に置いて、しばしの休息を取る。


「休憩するなら、ついでにご飯にしようか」


ミサキは網からバブルサンゴを取り出す。


「今度は私にやらせてください!」


リーナが目を輝かせながらバブルサンゴを受け取ると、思い切り海水を吸い込み、バブルサンゴに水を吹きかける。


すると、サンゴから泡が膨らみ、ゆっくりゆっくり大きくなっていき、まるで水の外にいるような空間が生まれた。


「わぁ……!やっぱり凄い!」


「ああ……本当に便利だな。さて、食事の支度をするか」


ミサキは網を開き、食材を取り出してく。


「さて、今日は色々あるぞ、エビに貝にウニにイカ」


「大変でしたけど、倒したかいがありましたね」


「そうだな。さて、下ごしらえをするか」


エビの殻を丁寧に剥き、背ワタを取り除いて軽く水で洗う。


イカはワタを抜き取り、皮をむいて輪切りにしておく。


貝とウニは殻から外し、内臓を取り除く。


その手際は、もう旅慣れた料理人のようだった。


そして、材料を鉄板で焼く瞬間──ジューッ!と心地よい音と、香ばしい香りが広がった。


素材の持つ脂がじんわりと溢れ出し、エビはぷりぷりと、イカはじゅわっと弾けるように焼けていく。


「美味しそう……!」


とリーナが目を輝かせ、アクアは無意識に尻尾を揺らしていた。


最後に塩と、アトラントの特製海鮮ダレで味付けする。


「よし、完成」


「……いただきます!」


三人は、焼き立ての海の幸に手を伸ばした。


「これ……美味しいわ……!」


アクアはエビを一口食べると、目を見開いて感動の声を上げる。


焼きあがったエビは、身がピンク色で弾力があり、口に入れれば海の甘みがふわりと広がる。


「ホント……美味しいです!」


リーナもイカを噛みしめながら呟いた。


イカは噛むたびに旨味がじゅわりとあふれ、香ばしい焦げ目がアクセントになる。


「うん、やっぱり素材がいいと違うな」


ミサキもウニを口に運び、満足そうだ。


ウニは柔らかく濃厚で、旨みがギュッと引き締まっている。


そして貝は噛めば噛むほど味が口の中に広がっていく。


会話も忘れ、しばらくはただ焼きたての海の恵みを味わう時間。


どれもただ焼いただけのシンプルな調理だったが、それだけで十分すぎるほどの旨味があった。


こうして、海底の休息時間は、美味しい食事とともに過ぎていった。

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