表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未知なる世界の歩き方  作者: リース
4章 海底都市アトラント編
66/161

第66話 海底都市アトラント

アクアの案内で、ミサキとリーナは海底都市アトラントの観光を始めた。


「まずは、ここに連れて行ってあげるわ」


そう言ってアクアが案内したのは、海底水族館『アクアリウム』だった。


「海の中の水族館か……楽しみだな」


アクアリウムの入り口をくぐると、幻想的な光景が広がっていた。


「うわっ……!」


ミサキとリーナは思わず息をのんだ。


目の前に広がるのは、180度ガラス張りのトンネル型の水族館。


青く透き通ったガラスの向こうには、そのまま海が広がっている。


「ここはね、沢山の魚を始めとした海の生き物が、自由に泳いでる所を見られる水族館なのよ!」


アクアが説明すると、ミサキとリーナはますます目を輝かせた。


ガラスの向こうを見渡すと、色とりどりの魚たちが悠々と泳いでいる。


カラフルな熱帯魚の群れが舞い、優雅に泳ぐマンタがすぐ頭上を通り過ぎる。


サンゴ礁の隙間からひょっこり顔を出すウツボや、ゆったりと漂うクラゲの群れ。


どこを見ても本物の海そのものだった。


「すごい……!こんな水族館、地上じゃ絶対に見られないですね!」


「ああ、本当に綺麗だ……」


ミサキも感嘆の声を上げる。


「でしょ?ま、初めての観光なら、まずここに来るのが一番いいかなって思ったのよ」


アクアはそう言いながら、ミサキたちの驚く表情を楽しんでいるようだった。


ミサキとリーナは、アクアリウムを歩きながらいろいろなエリアを見て回った。


「近いな」


「迫力満点ですね!」


大きなサメがゆっくりと泳ぐエリアでは二人で笑い合う。


クラゲがふわふわと舞うエリアではつい見とれてしまう。


水族館を色々回っていると、水槽の中に1人の人魚が泳いできた。


「えっ、人魚……?」


リーナが目を見開く。


その人魚は三人の視線に気づいたように、水槽の中から優雅に手を振った。


そして、すっと腕を伸ばし、手をくるくると回すような動きを見せる。


すると、まるで魔法にかかったかのように、水槽の中の魚たちがいっせいに動き出した。


群れが一糸乱れぬ隊列を作り、左右に旋回し、渦を巻きながら、優雅に宙を舞うように泳ぐ。


それはまるで、水中バレエのような美しさだった。


音もない世界で、ただ優雅に舞う魚たち。


それを導くように微笑む人魚の姿。


ミサキも言葉を失ったまま、その幻想的な光景を見つめていた。


最後に人魚がくるりと回転し、手を上に掲げると、魚たちは一斉に水槽の奥へと散っていった。


水槽には再び静けさが戻る。


「……すごかったです」


リーナはそっと呟き、ミサキは頷いたまま、口元に微笑みを浮かべていた。


「でしょ?訓練を重ねた人魚は、魚と心を通わす事もできるようになるのよ!」


自慢げにアクアが胸を張った。


魔法でも、剣でもない。


ただ“海の舞”が心を震わせた一瞬――


それもまた、冒険の中に刻まれる忘れられない思い出のひとつになった。


***


アクアリウムで海の美しさを堪能したミサキとリーナ。


次にアクアが案内したのは、海底都市の中心部にある「アクア・オペラ」だった。


「ここは海底劇場よ。私たち人魚が歌って踊る舞台をやってるの」


「劇場?もしかして、あの人魚の歌が聴けるのか?」


「そうよ。ここでは人魚たちが日替わりで公演をしてるの!」


アクアは自慢げに胸を張る。


「へぇ、なんだか竜宮城みたいだな」


「幻想的な歌と踊り……とても楽しみです!」


期待に胸を膨らませながら、ミサキとリーナは劇場の中へと入っていった。


***


劇場の中はまさに別世界だった。


観客席は半円形に並び、その先には巨大な水のスクリーンが広がっている。


舞台の中央には円形の水槽があり、そこから海の光が差し込んでいた。


すると、劇場が暗くなり、神秘的な音楽が流れ始めた。


そして、透明な水槽の中から美しい人魚たちが姿を現した。


「うわぁ……!」


観客席のあちこちから感嘆の声が漏れる。


人魚たちは優雅に泳ぎながら、透き通るような歌声を響かせた。


その歌声はまるで海のささやきのように心地よく、観客全員を魅了していく。


やがて音楽が変わり、人魚たちが一斉に踊り出した。


水の中を滑るように泳ぎながら、リズムに合わせて華麗なダンスを繰り広げる。


光の演出と相まって、まるで人魚たちが星の海を舞っているかのようだった。


「魚の躍りも凄かったけど、人魚の踊りもまた凄いな……」


「まるで夢の中みたいです……」


二人は目を輝かせながら見入っている。


アクアもそんな二人の様子を見て、満足そうに微笑んでいた。


クライマックスでは人魚のコーラスが始まる。


その歌声はまるで海の精霊が囁くように、美しく、切なく、どこか懐かしい。


「この歌……なんだか心が洗われるような気がします……」


「あぁ……」


観客の誰もが静かに聴き入っていた。


そして、最後の音が響いた瞬間、劇場全体が拍手と歓声に包まれた。


「……すごかったな」


「本当に素晴らしい舞台でしたね……!」


感動に浸るミサキとリーナに、アクアはどこか誇らしげな表情を浮かべる。


「ふふっ、どう?海底都市の魅力が少しは伝わったかしら?」


「あぁ、最高だったよ、アクア」


「ありがとうございます!」


こうして、ミサキとリーナは海底都市の幻想的な劇場を満喫するのだった。


***


幻想的な劇場での余韻を残しつつ、アクアに案内されながら海底都市を巡るミサキとリーナ。


次に訪れたのは、ひときわ賑やかな場所だった。


「ここは『マーメイドダービー』。人魚たちのレース場よ!」


「レース場?」


「簡単に言えば、人魚が泳ぐ速さを競うの。誰が一番早いかを予想して、賭けるのよ!」


「ギャンブルか、それは楽しみだな」


ミサキは驚きながらも興味津々に目を輝かせた。


「まあ、人魚たちのスピードはすごいから、見てるだけでも楽しめるわよ」


ミサキとリーナは観客席に案内され、目の前には巨大なドームが広がっていた。


その中には12人の人魚レーサーが並んでいる。


「へぇ、あの人魚たちが競争するんだ」


「さぁ、賭けるなら今よ!誰が1位になるかを予想して、当たれば配当がもらえるわ!」


アクアがレース用の賭けチケットを買える所を指さす。


「ふむ……せっかくだし、やってみようか」


「私は……3番のスカーレットにしようかな?」


リーナはスピードよりも優雅な泳ぎをしている人魚を選んだ。


「私は……この6番のマックイーンにしよう」


ミサキは一番気合が入っていそうな人魚を選んだ。


「位置について――スタート!」


合図とともに、人魚たちが水の中を疾走する。


「うわっ!すごい速さ!」


「まるで流星です……!」


水の抵抗をものともせず、人魚たちはまるで水と一体化したようなスムーズな動きで進んでいく。


「がんばれマックイーン!行けーっ!」


「スカーレット!頑張ってー!」


観客席の熱気も最高潮に達する中、レースは終盤戦へ。


しかし――


「くっ……マックイーン、かなり失速してるな……!」


「スカーレットも後ろの方に……!」


最終コーナーを回り、猛スピードで駆け抜けたのは、まさかの8番の人魚。


「くっ、負けた……!」


「私も負けちゃった……」


レース終了後、払い戻し所で2人のチケットは見事に紙くずになった。


「私たち、完全に外したな……」


「でも、すごく楽しかったですね!」


ミサキとリーナは顔を見合わせて笑った。


「……まぁ、最初から当たるわけないか」


「ギャンブルなんてそんなものよ。でも、楽しめたならそれでいいじゃない」


アクアは呆れながらも、どこか楽しそうだった。


こうして、ミサキとリーナの海底レース体験は、大敗しながらも大盛り上がりで幕を閉じたのだった。

面白かった 続きが読みたい方は ブックマーク 感想 星を入れてくれると励みになります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ