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未知なる世界の歩き方  作者: リース
3章 砂漠の国エジェト編
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第57話 バジリスク

ネフェルタスの墓の奥へと進むミサキたち。


石造りの通路は広く、天井も高い。静寂の中、三人の足音だけが響いていた。


「随分と広いな……」


ミサキが呟く。


「遺跡っていうより、ほぼ迷路ですね……」


リーナが辺りを見回す。


「それにしても……ここがダンジョンになったって事は、ここの物は持ち出せないんじゃないかな……?

ダンジョンの中の物は持ち出せないって言うし……」


ジャンゴが疑問に思う。


「それは正確に言うと『ダンジョンで生まれたもの』は持ち出せないんだ。

外に出したり、ダンジョンが無力化されたら崩れてしまう。

でも『ダンジョン化とは関係なくあるもの』は持ち出せるんだ。

ダンジョンになる前からこの墓にあった財宝は、持ち出せるハズだよ」


「そうなんだ……!」


そのとき


ズシン……ズシン……


「な、なんだ!?」


ジャンゴが驚いて足を止める。


暗闇の奥から、何かが這い出してくる音が聞こえた。


そして、闇の中から姿を現したのは、巨大な蛇のような魔物、バジリスクだった。


「バ、バジリスク!?まずい!!」


ジャンゴは叫んだ。


「人を石化させる超危険なモンスターだ!みんな、目を瞑って!目を合わせると石化しちゃう!」


「なるほど、厄介だね」


リーナもすぐに目を閉じる。


ミサキも何の迷いもなく、すっと目を瞑った。


しかし。


「でも……目を瞑ったままじゃ何も見えないよ……!」


ジャンゴは焦る。目を閉じていてはバジリスクの位置すら分からない。どうすればいいのか……


「問題ないね」


ミサキが静かに言う。


「え……?」


そのまま、ミサキは一歩、また一歩と前へ進む。


次の瞬間


ザッ!!


バジリスクが大きく動いた音がした。


ズバッ!ズババッ!!


何かが切り裂かれる音が響く。


それから数秒後


「もう大丈夫だ」


ミサキの声が聞こえた。


ジャンゴは恐る恐る目を開ける。


そこには、バジリスクがズタズタに切り裂かれ、倒れてる所が見えた。


「……え?」


ジャンゴは信じられないという顔をして、ミサキを見る。


「な、なんで……目を閉じてたのに……どうやって……?」


ミサキは軽く肩をすくめて微笑んだ。


「師匠に目を使わなくても戦えるように訓練されたんだ」


「二人の師匠って一体……」


あまりにもあっさりした言葉に、ジャンゴは絶句するしかなかった。


***


「それにしても、なんでこのバジリスクは消滅しないんでしょうか?」


ダンジョンモンスターは、倒されると塵となって消滅するハズ。


実際途中で出て来たモンスターたちは、倒されると塵となって消滅していた。


「これは、ダンジョンモンスターじゃないな。外から迷い込んできたモンスターだ」


「あー……なるほど、古代の遺跡には偶にモンスターが迷い込むって、父さんが言ってた」


「じゃあ、折角だから、これを食べようか」


「ま、待って!バジリスクの肉って毒があるんだよ?食べれないよ?」


「大丈夫大丈夫、じゃあリーナ、結界よろしく」


「はい!」


驚くジャンゴを他所にリーナが杖を振り上げると、杖が光り輝いた。


すると、薄い光の膜が周囲を包み込んだ。


「凄い……聖水も無しに結界を張るなんて……」


ジャンゴがリーナの魔法に驚いてるようだった。


「じゃあ、次は……と」


リーナが落ち着いた表情で杖を構える。


「ディスインフェクション!」


杖の先から淡い光が放たれ、それがスコーピオンの肉に降り注ぐ。


すると、少し肉が輝いたような気がした。


「今、何をしたの?」


「えっと、魔法で肉の消毒をしたんです」


「消毒魔法!?すごい、そんな事ができるんだ!」


ジャンゴが驚いたように目を丸くする。


「冒険者になるなら絶対必要な魔法だからって、師匠に叩き込まれましたからね」


「さて、これで安心して食べられるな」


「じゃあ、さっそく調理しようか」


ミサキは無言で剣を抜き、手際よくバジリスクを解体していく。


「すごい手慣れてる……」


ジャンゴはますます驚いた。


「さて、今日のメニューはカツレツだ」


ミサキがそう言いながら、調理器具を取り出した。


解体したバジリスクの肉を適当な大きさに切り、筋を切った後、剣の鞘で叩く。


塩と胡椒をまんべんなく振りかけ、下味をつける。


「卵と小麦粉と水を混ぜて……よし、バッター液完成」


ミサキが手際よく作り、準備完了。


「じゃあ、肉をバッター液につけて、パン粉をまぶして……」


「凄い……ちゃんとカツレツっぽくなってきてる……!」


ジャンゴが感心する。


鍋に油を入れ、火を起こす。


適温になったところで、衣をつけた肉を投入、揚げ焼きする。


ジュワァァァ……!!


美味しそうな音と香ばしい匂いが広がる。


「いい香り!」


「うわぁ……美味しそう……」


両面がきつね色になったら、取り出して油を切る。


「完成。さて、食べようか」


「じゃあ、いただきまーす!」


三人は一口食べる。


「……!!」


「美味っ……!まるでチキンカツみたいな味だ」


「ああ、柔らかくてジューシー!」


「まさかバジリスクがこんなに美味しいなんて……!」


ジャンゴは目を丸くして驚いていた。


こうして、三人はネフェルタスの墓の中で、バジリスク・カツレツの食事を楽しんだのだった。

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