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未知なる世界の歩き方  作者: リース
3章 砂漠の国エジェト編
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第54話 ジャンゴの覚醒

「ジャンゴ……!」


ジャンゴがジンにボコボコにされてる所にミサキとリーナが駆けつける。


「ホーリー……」


リーナは心配そうにしながら、援護しようと魔法を構える。


しかし、ミサキが腕を伸ばし、それを制した。


「……ミサキ?」


「待って」


「どうして止めるんですか!?」


ミサキは真剣な表情で、ジャンゴの戦う姿を見つめていた。


「あいつは今、勇気を出して戦ってる……

もしここで私たちが横から手を出したら、せっかくの成長の機会を潰すことになる」


リーナは驚いた表情を見せる。


「でも……!あの盗賊、めちゃくちゃ強いですよ!アモンの次くらいには!」


「それでも……ギリギリまでは様子を見よう」


リーナはミサキの真剣な眼差しを見て、しぶしぶ手を下ろした。


一方、ジャンゴは再び立ち上がろうとしていた。


「ぜぇ……ぜぇ……」


膝が震え、呼吸が乱れる。


それでも、何度ボコボコにされようとも、ジャンゴは立ち上がる。


ジンは呆れたようにため息をついた。


「往生際が悪いな。じゃあ……とどめを刺してやるよ」


炎を纏った剣が振り下ろされる――


その瞬間


「ストーン・ランス!!」


突如、地面から岩の槍が飛び出し、ジンを押しのけた。


「なにっ!?」


驚くジン。


ジャンゴも目を見開く。


「父さん!?」


そこにいたのは、ジャンゴの父親だった。


「お前……俺の娘に……何をしてる……!」


「クソジジイ……ッ!!」


怒りに震えるジンは、魔法を詠唱する。


「フレイム・バースト!!」


巨大な火柱が、ジャンゴの父親を襲った。


「父さん!!」


土の魔法で防ごうとするも、炎の勢いは強く、吹き飛ばされるジャンゴの父親。


「うわあああぁぁあああっ!!」


地面に転がる父親の姿を見て――


ジャンゴの心が爆発した。


「おまえ……ッ!!」


全身の傷も、痛みも忘れるほどの怒りが込み上げる。


「父さんを……よくも……よくも……!!」


ジャンゴの周囲の地面が震え、土の魔力が渦を巻く。


「僕はもう、逃げない!!!」


その叫びと共に、ジャンゴの体を包む魔法のオーラが、かつてないほどの力を放った――


ジャンゴの体を包む魔力が爆発的に膨れ上がる。


まるで荒れ狂う大地そのもののように、足元の砂と石が浮かび上がり、周囲に土のエネルギーが渦巻いた。


「な、なんだこいつ……!」


ジンが一歩後ずさる。


遠くから見ていたミサキとリーナも目を見開いた。


「すごい魔力だ……!!」


「さっきまでボロボロだったのに……これは……?」


ジャンゴの父親も驚きを隠せない。


「ジャンゴ……お前……こんな力を……」


しかし、ジンはすぐに表情を歪ませ、悪態をつく。


「ハッ、だからどうした!」


そのまま燃え盛る剣を振り上げ、ジャンゴへと突進した。


「フレイム・スラッシュ!!」


だが――


「はあっ!」


ジャンゴは迷うことなく、両手でハンマーを振るい、炎の剣を受け止めた。


ガキィィンッ!!


衝撃が響き渡り、ジンの剣が弾き飛ばされる。


「なっ……!」


ジンが驚愕する。


さっきまでボロボロだったはずのジャンゴが、今や圧倒的な力で彼を押し返していた。


「さっきまでとは……別人みてぇじゃねぇか……!」


「ああ……僕はもう……逃げない!」


叫びながら、ジャンゴは地面にハンマーを突き立てた。


「ストーン・バレット!!」


無数の岩の弾丸が生成され、宙に浮かぶ。


ジンもすぐに反応し、


「フレイム・バレット!!」


炎の弾丸を連続で撃ち放った。


ドンッ!ドンッ!ドンッ!


炎と岩が激しくぶつかり合う――


だが、ジャンゴの岩の弾丸は炎を突き破り、そのままジンへと飛んでいった。


「ぐっ……!!」


防ぐ暇もなく、何発もの岩弾を受け、ジンは吹き飛ばされる。


だが、倒れ込んだジンは、すぐに歯を食いしばりながら立ち上がった。


「クソが……!」


ジャンゴを睨みつけながら、両手を大きく広げる。


「だったら、これならどうだ!!」


巨大な炎の塊が彼の頭上に生み出される。


まるで燃え盛る隕石のような巨大な炎弾。


「フレイム・メテオ!!」


「やばっ……!?」


遠くから見ていたリーナが息を呑む。


だが――


「こっちだって……負けねぇ!」


ジャンゴは地面にハンマーを叩きつける。


「ストーン・ウォール!!」


ゴゴゴゴ……!!


土と岩が隆起し、巨大な壁が作られる。


炎の隕石が壁に激突した。


ドゴォォォン!!


爆風が吹き荒れるが――


「なっ……!?」


煙が晴れると、そこには傷一つない土の壁が残っていた。


ジンは驚愕し、後ずさる。


「バカな……俺の魔法が……?」


その時、壁の向こうから聞こえてくる。


「……お返しだ」


ジンが顔を上げた瞬間――


「メガトン・ハンマー!!」


ジャンゴのハンマーが、土の魔力を纏いながら巨大化し、ジンの頭上に振り下ろされる。


「なにィ――」


ドゴォォォォン!!!


大地が揺れ、ジンは地面にめり込むようにして倒れ伏した。


静寂が訪れる。


遠くで見ていたミサキとリーナは、目を丸くする。


「……やった?」


リーナが小さく呟くと、


「……ああ」


ミサキは静かに頷いた。


ジャンゴは荒い息をつきながら、ハンマーを振り下ろしたまま動かない。


そして、つぶやくように言った。


「僕は……もう……二度と……逃げない」


そう言うと、ジャンゴはその場にばたりと倒れたのだった。

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