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未知なる世界の歩き方  作者: リース
3章 砂漠の国エジェト編
52/161

第52話 最悪の再開

エジェト王国の街を歩きながら、異国情緒あふれる雰囲気を楽しんでいたミサキとリーナ。


「楽しかったな、ラクダ」


「はい!とっても楽しかったです!」


そんな他愛のない会話をしながら、市場の方へ向かおうとしていたその時


ドォォォォンッ!!!


突如、遠くで大きな爆発音のような音が鳴り響いた。


「なんだ!?」


「今の……ただ事じゃないですよね!?」


二人はすぐに顔を見合わせ、音が聞こえた方向を見た。


街の一角から、うっすらと砂埃が舞い上がっている。


――何かが起こっている。


ミサキとリーナは迷うことなく、そちらへと向かおうと駆け出した。


すると、すれ違う人々の間から、慌てた声が飛び交う。


「盗賊がここで暴れてるぞ!」


「なんだって!?王国の中に盗賊が!?」


「早く逃げろ!巻き込まれるぞ!」


その言葉を聞いたミサキとリーナの足が、さらに速くなる。


「盗賊……!?まさかアモンの残党とか!?」


「とにかく行ってみましょう!」


二人は、混乱する群衆の間をすり抜けながら、事件の中心へと向かっていった。


***


時は少し巻き戻り、ミサキたちと別れた後、ジャンゴはとぼとぼと歩きながら、自宅へと向かっていた。


エジェト王国の街は活気にあふれ、夜になるとランタンが灯され、幻想的な雰囲気を醸し出す。


しかし、ジャンゴの足取りは重く、その美しい街並みがまるで別世界のように感じられた。


(僕……どうすればよかったんだろう……)


胸の奥に罪悪感が渦巻いている。


盗賊に捕まったこと。


無理やり手伝わされたこと。


そして――ミサキたちを裏切ったこと。


(僕なんか……本当にダメな奴だ……)


地下へ続く階段を降りる。


ジャンゴの自宅は地下にあった。


木製の重い扉を押し開けると、そこには小柄だが屈強な体格の男が椅子に座っていた。


「……随分と遅かったな」


「父さん……」


低く、渋い声。


ジャンゴはギクリとしながら、父の視線を避けた。


「……色々あってさ」


「……ほう?」


ジャンゴの父は腕を組み、じっとジャンゴを見つめる。


ジャンゴは何とか言葉を選びながら、口を開いた。


「盗賊に……捕まってたんだ」


「なんだと!?」


父の目が驚きに見開かれる。


「お前、大丈夫なのか!?どこか怪我は!?何かされたのか!?」


父はすぐに立ち上がり、ジャンゴの体をくまなく確認しようとする。


「や、やめてよ!もう平気だから!」


「本当だろうな……?」


父の手を振り払いながら、ジャンゴは曖昧に笑った。


「……うん。助けてくれた人がいてさ……」


「ああ、そうか……」


父は安堵のため息をつく。


しかし、ジャンゴの胸にはさらに重いものがのしかかっていた。


(言えない……本当のことなんて……)


――自分が盗賊の手伝いをしていたこと。


――ビビって逆らえなかったこと。


――ミサキたちを裏切りかけたこと。


本当は全部話して、叱られた方が楽なのかもしれない。


でも、そんな勇気はなかった。


「もう遅い、今日は寝ろ」


父の言葉に、ジャンゴはこくりと頷いた。


(……僕、どうすればよかったのかな……)


罪悪感を抱えたまま、ジャンゴは静かに自分の部屋へと向かった。


***


昨夜の旅の疲れが残るジャンゴは、自宅の小さなベッドで横になりながら、ぼんやりと天井を見つめていた。


ミサキとリーナの助けがなければ、あの盗賊との戦いでは自分は何もできなかった。


「……ちくしょう」


布団を蹴り飛ばし、乱暴に体を起こす。


罪悪感が消えない。


ミサキたちに助けられたこと、父親に心配をかけたこと——。


「僕は……何をやってるんだ?」


考えても答えは出ない。


考えること自体が嫌になったジャンゴは、家を出た。


エジェト王国の朝は活気に満ちている。


市場にはカラフルな果物や香辛料が並び、商人たちの威勢のいい声が飛び交う。


だが、そんな賑やかな光景の中でも、ジャンゴの足取りは重かった。


どうしても昨日のことが頭をよぎる。


「……」


悔しさを紛らわすように、石ころを蹴り飛ばした。


そのとき


「随分と沈んだ顔してるじゃねぇか?」


背後から聞こえた声に、ジャンゴはビクッと肩を震わせた。


ゆっくりと振り返ると、そこには黒いローブを羽織った男が立っていた。


「誰……?」


「忘れたとは言わせないぜ」


ジャンゴは警戒しながら一歩後ずさる。


ローブの男はフードを持ち上げ、ニヤリと笑った。


そこには鋭い眼光と、薄く笑みを浮かべた顔。


「お前、ジン……!?」


盗賊の頭アモンの右腕、ジン。


「よぉ、元気そうじゃねぇか」


「な、何の用……?」


「何の用って、そりゃ決まってんだろ?」


ジンは片手をポケットに突っ込み、肩をすくめた。


「俺がいない間に、うちの連中が壊滅したって話を聞いてな」


「……!」


「お前なら何か知ってんだろ?」


ジャンゴは口を開こうとしたが、何も言えなかった。


言ったらどうなる?


また盗賊に引きずり込まれる?


それとも、ここで殺される?


「何も……知らない……」


「へぇ」


ジンの目が細くなる。


「何も知らねぇって?そりゃおかしな話だな」


「……」


「お前は盗賊団にいたんだろ?それなのに、何も知らねぇってのはさすがに通じねぇよなぁ?」


ジンはゆっくりとジャンゴに歩み寄る。


「それとも……知ってるけど言いたくねぇってことか?」


ジンは肩をすくめた後、ジャンゴの肩に手を置いた。


その瞬間。


「おい、お前」


低く響く声が割って入った。


ジャンゴの父が、鋭い目つきでジンを睨んでいた。


「俺の娘に何をしてる?」


「おやおや、お父さんの登場か」


ジンは余裕の笑みを浮かべながら、ジャンゴの父を見た。


「何もしてねぇよ。ただ昔の仲間と話してるだけさ」


「嘘をつくな」


父はジャンゴに視線を向けた。


「ジャンゴ、走れ」


「え……?」


「いいから、逃げろ!!」


父の叫びに、ジャンゴは反射的に駆け出した。


「おいおい、おもしれぇことになってきたな」


ジンの笑い声が、後ろから聞こえてきた。


ジャンゴは、ただひたすらに走った。


走って逃げたのだった……

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