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未知なる世界の歩き方  作者: リース
2章 地下帝国パンデラ編
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第37話 地下帝国パンデラ3

二人が魔族の街に暮らし始めてしばらく経った。


「ふわぁぁぁ……」


リーナは大きく伸びをしながら、ベッドの上で目を覚ました。


最初は家具も魔導具もない、がらんどうの部屋だったこのワンルームも、今では生活感に満ちている。


ベッドはもちろん、魔導コンロに保温箱、洗濯機など、二人は仕事の合間を縫って少しずつ必要なものを買いそろえ、すっかりこの街での生活に馴染んでいた。


「おはよう、リーナ」


キッチンから聞こえたのは、エプロン姿のミサキの声だった。


魔導コンロの前で、彼女はカリカリに焼いたベーコンをフライパンから皿へ移していた。


「おはようございます……」


リーナは寝ぼけまなこで返事をしながら、のろのろとベッドを降りる。


暖かい空気と香ばしい朝食の匂いが、眠気を徐々に押しのけていく。


カウンターテーブルに並んで付いた二人は声を揃えて手を合わせる。


「いただきます」


焼き加減がちょうど良いベーコンが、朝の空腹に染み渡る。


リーナはトーストにジャムをのせ、ミサキはベーコンエッグをフォークで食べる。


「ごちそうさまでした」


「おそまつさま」


「さて、今日は久々の休日ですね!」


リーナが嬉しそうに腕を伸ばす。


「お金も貯まったし、せっかくだから、街を色々見て回ろうか」


「はい!」


二人は久しぶりの自由な時間を楽しむべく、魔族の街の探索へと繰り出した。


***


まず、ミサキとリーナは「ノアール・アーケード」と言うお店の前で足を止めた。


「へぇ……ゲームセンターがあるんだ」


「ゲームセンターって?」


「簡単に言うと、いろんな遊びができる場所。試しに行ってみようか」


「はい!」


ゲームセンターに入ると、カラフルなライトが点滅し、電子音が響くゲームセンター独特の雰囲気に包まれた。


壁際には対戦格闘ゲーム、音楽ゲーム、クレーンゲームなどが並び、中央には最新のアーケードマシンがズラリと揃っている。


「すごい!こんな場所があるなんて!」


「ホント凄いな……日本のゲームセンターみたいだ」


リーナは目を輝かせて駆け回り、ミサキもしみじみとゲームセンターを見て回る。


「せっかくだし、何かやってみようか。お、ガンシューティングゲームがあるな」


ミサキが指さした先には、巨大なスクリーンと銃型のコントローラーが設置された筐体があった。


ゲームタイトルは《Demon Crisis》。


「二人で協力プレイできるみたいだ。やってみるか?」


「面白そうですね!やりましょう!」


二人はコインを投入し、それぞれの銃を手に取る。


画面に映し出されたのは、荒廃した都市を舞台に襲いかかるモンスターを撃ち倒して進んでいくゲームだった。


「えいっ!」


リーナが銃のトリガーを引き、最初のモンスターを見事撃破する。


「やった!」


「次が来るよ!」


次々に画面にモンスターが登場するが、リーナは次々に打ち抜いていく。


ミサキも負けじと敵を撃ち抜いていく。


途中、モンスターに紛れて一般人が登場し始めた。


「人は撃つなよ!減点だからな!」


「はい!」


リーナは冷静にモンスターだけ狙い撃つ。


その正確さは、とても初心者とは思えなかった。


伊達に冒険者として、光の魔法で敵を撃ち抜いてはいなかった。


ゲームを続けてると、画面には巨大な魔物が登場し、激しい攻撃が始まる。


ミサキは的確に敵の攻撃を相殺し、その隙にリーナはボスの弱点を攻撃する。


最終的に二人は勝利し、派手なエフェクトと共にゲームクリアの文字が表示された。


「やったー!」


リーナが嬉しそうにガッツポーズをする。


「次はレースゲームやってみようか?」


「はい!」


二人はすぐ近くのレースゲーム《Overdrive EX》の筐体に移動した。


座席に座り、ハンドルを握ると、リアルな3D映像のコースが目の前に広がる。


「これはハンドルと、足元のアクセルとブレーキを操作して遊ぶゲームだよ」


「なるほど!よーし、負けませんよ!」


レースがスタートすると、ミサキは安定したハンドリングでスムーズにカーブを抜けていく。


一方、リーナは最初のカーブで勢いよく壁に激突。


「わわっ!?曲がれない!」


「カーブはブレーキを使わなきゃね」


リーナは何とか操作を覚えながら奮闘するが、ミサキとの差は開いていく。


「ミサキさん、速すぎます!」


「ゲームは私の趣味だからね」


最終的に、ミサキが一位でゴールし、リーナは六位でフィニッシュ。


「くぅ~、悔しい!でも楽しい!」


「それはよかった、他に何かやってみたいものはある?」


「そうですね……あ!あれが気になります!」


リーナが指さしたのは、ピンクと白で飾られた《Angel Face》と言う名の筐体。


そこには可愛らしい装飾が施されたカーテンがあり、中に入る小さなブースが存在していた。


「お、プリントシールか。懐かしいなぁ」


「ぷりんと……しーる?」


「簡単に言えば、写真を撮って、それをシールにしてくれる機械だよ」


「しゃしん……?しーる……?」


「あー……実際見た方が早いな」


二人はブースの中に入り、画面に映し出された音声指示に従ってポーズを取る。


「3、2、1、パシャ☆」


という音と共に、画面が一瞬白く光った。


次の瞬間、画面には先ほど撮影されたミサキとリーナの姿が映し出された。


「わ、私が……映ってます!これ、すごいです!」


とリーナが目を輝かせる。


「だろ?これが“写真”ってやつなんだ」


「まるで鏡みたいですけど、動かない……」


「そうそう。で、次はこのペンを使って、絵を描いていくんだ」


画面上のスタイラスペンを手に取り、リーナは二人の顔に大きなハートを描いた。


最後に印刷のボタンを押すと、機械の下部から小さな紙片が数枚、ウィーンという音と共に吐き出された。


「これがプリントシール!すごい!私たちの絵がそのまま紙になってます!」


「ああ、それは剥がして、好きなものに貼れるんだ。それがシール」


「そうなんですね!凄いなぁ……こんなものまで作れるなんて……!」


「さて、次はどのゲームで遊ぶ?」


「そうですね……!」


こうして二人は魔族のゲームセンターでの遊びを存分に楽しむのだった。


***


次に二人が訪れたのは「デーモン・シアター」と言うお店だった。


そこにはマントを翻すヒーローが描かれたポスターが張り出されていた。


「映画館か……リーナ、映画って見たことあるか?」


「ううん。そもそも映画ってなんですか?」


「簡単に言えば、大きなテレビで物語を楽しむ娯楽なんだ」


「あれですか!面白そうです!」


「ちょうどアクション映画がやってるみたいだし、観てみようか?」


「はい!」


二人はチケットを購入し、売店でポップコーンとドリンクを買って劇場内へ。


中に入ると、シートはふかふかで座り心地が良く、天井には最新の立体音響システムが備え付けられていた。


「すごいな……日本の映画館とほぼ同じだな……」


「なんだかワクワクします!」


やがて場内の照明が落ち、スクリーンが明るくなる。


映画のタイトルは 《ジャスティス・ブレイバー》。


物語は、魔族の街を舞台に、正義のヒーローが悪の組織から人々を守るというものだった。


荒廃した街に、突如として現れる悪の組織 〈ダーク・ドミニオン〉。


彼らは強力な兵器とゴーレム軍団を使い、人々を恐怖に陥れていた。


『フッ……この街は我々が支配する!』


高笑いする敵のボス。


その瞬間、ビルの屋上から一人の男が飛び降りる。


黒と金のスーツに身を包み、マントを翻したヒーロー 〈ジャスティス・ブレイバー〉 だ。


『ここから先は通さない!』


彼は超人的な力と圧倒的なスピードで敵を次々となぎ倒していく。


ド派手なアクション、スローモーションでのパンチ、爆発を背景にした決めポーズ、まさに王道のヒーロー映画。


リーナはポップコーンを食べる手も止め、スクリーンに釘付けになっていた。


ミサキも興味津々にスクリーンを見つめていた。


やがて、敵のボス〈ブラック・ファントム〉 が現れ、ヒーローとの一騎打ちが始まる。


戦闘シーンはまるで本物のようにリアルで、カメラワークもダイナミックだ。


『お前の正義など、無意味だ!』


『違う! 正義とは、誰かを守る心だ!』


二人の激しい戦いの末、ヒーローは最後の必殺技「ブレイバー・バーニング・パンチ」を叩き込み、見事に勝利する。


悪の組織は壊滅し、街には平和が戻ったのだった。


「すっごく面白かったです!!」


リーナは目を輝かせ、ミサキの腕を掴んで興奮気味に言った。


「ヒーローが敵をバシッて倒して、最後にキメ台詞を言うの、かっこよかったですね!」


「わかる。こういうアクション映画はやっぱり燃えるんだよね」


「もう一回観たいくらいですね!」


「ああ。BR化しないかな?」


「ぶるーれい?」


「いや、何でもない」


映画館を後にする二人は、すっかりヒーロー映画の魅力にハマってしまったのだった。

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あらすじから読みたいと思い、読みました! はじめまして! 設定や、世界観いいですね! 星5とブクマしておきました! 頑張ってください! 応援しています!!
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