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未知なる世界の歩き方  作者: リース
2章 地下帝国パンデラ編
33/161

第33話 海賊の襲来

エンタープライズが大海原を進む中、空は次第に黒い雲に覆われていった。


「天気、なんだか怪しくないですか?」


リーナが不安げに呟く。


「嵐が来なければいいんだけれど……」


ミサキも頷きながら、遠くの海を眺めた。


波が荒れ始め、風も強くなってきている。


そして、次の瞬間。


ドォォォン!!


甲板の向こうで大きな爆発音が響いた。


「なんだっ!?」


見れば、船の左舷にいくつもの黒い影が接近していた。


それはよく見ると、海賊旗を掲げた大きな船だった。


「海賊だ!!!」


悲鳴が上がると同時に、船に結界魔法が張られる。


ドォォォン!!ドォォォン!!


結界魔法に攻撃する海賊たち。


しばらくの間、結界魔法は海賊たちの攻撃を防いでいたが、次第に限界が来て消滅する。


その瞬間を狙い、海賊船はこの船の近くに寄せて来た。


海賊達は一斉に船内へとなだれ込んできた。


バァン!バァン!


銃声が響く。


海賊たちが威嚇射撃を放ち、乗客たちは恐怖に駆られて逃げ惑う。


「へへへ、いい獲物が揃ってやがるぜ……!」


傷だらけのバンダナを巻いた海賊の男が、乗客たちを蹴散らしながら進んでくる。


しかし、その男の前に立ちはだかったのは。


「そこまでだ、クズども!」


鎧に身を包んだ男たちだった。


それは、この船の防衛を任されていた傭兵団だった。


「この船には俺たちがついている。好きにはさせん!」


傭兵たちは剣を抜き、海賊たちへと突進する!


ガキィン!


鋼と鋼がぶつかり合い、激しい戦闘が始まった。


だが、多勢に無勢、海賊たちは徐々に傭兵たちを押し返していく。


「このままじゃ……!」


ミサキは剣を握りしめ、リーナと共に傭兵たちの戦列に加わった。


「援護する!!」


「私達も戦います!!」


「お嬢ちゃんたちが……!?背に腹は代えられん……頼む!」


傭兵団のリーダーが叫ぶと、ミサキとリーナは果敢に前線へと飛び込んでいく。


ミサキはフィジカルブーストで身体能力を強化し、一撃で海賊を吹き飛ばす。


リーナはホーリー・ショットの魔法を放ち、光の槍で敵を貫く。


「なんだこいつら……!?ただの乗客じゃねぇのか!?」


海賊たちは予想外の抵抗に驚きながらも、次々と襲いかかる。


しかし、ミサキとリーナは一歩も引かず、傭兵たちと共に戦い続けた。


ミサキの剣が唸りを上げ、次々と海賊たちを打ち倒していく。


リーナも魔法で支援しながら、傭兵たちと連携して戦いを進めていた。


海賊たちも剣や銃で反撃するが、二人には当たらない。


「このまま押し返す!」


ミサキが叫び、傭兵たちは勢いを増す。


しかし


ドンッ!


突然、重々しい足音が甲板に響いた。


「どけどけぇ!!」


鋼のブーツが床板を軋ませながら、一人の男が前に出る。


短い黒髪に分厚いコートを羽織った大柄な海賊。


手には巨大なカットラスを携えている。


「ドレーク船長!!」


生き残っていた海賊の一人が、歓喜の声を上げた。


「やれやれ……貴様ら、ずいぶんと暴れてくれたなァ」


ドレークは不敵な笑みを浮かべながら、肩を鳴らす。


「乗客のクセに、俺の部下どもをここまで追い詰めるとは……ちぃっとばかし面白れぇなぁ?」


ミサキは剣を構え、警戒しながら睨む。


「……お前がこの海賊団の頭か」


「ご明察。俺様が“雷鳴のドレーク”だ」


ドレークは刀を軽く振るい、嵐の中に火花を散らした。


「雷鳴のドレーク……!?懸賞金1億ガルの賞金首……!」


「なんだって!?」


リーナが驚きと恐怖の混じった表情をする。


「へっへっへ、よく知ってるなぁお嬢ちゃん。そうさ、俺がそのドレークさ!

死にたくなかったら大人しく金目の物をよこしな!」


大声で笑うドレーク。


ミサキ達は冷や汗をかく。


かつてミサキ達が倒した、同じく1億ガルの賞金首、闇魔導士ソロモンは、エルメスやイグニスの力を借りて、ようやく撃破したような超強敵だ。


それと大差ない相手と、今度はミサキとリーナの2人だけで戦わなければならない。


「さぁて……こっからは、お楽しみといこうか?」


ゴォッ!!


突如、ドレークの剣が激しく光り輝いた


「!?」


ミサキは即座に後退し、リーナも防御の魔法を展開する。


「雷の剣……!?」


「へっ、俺様の剣にビビッたか?お嬢ちゃんたち?」


ドレークが跳んだ。


巨大な刀がうなりを上げ、ミサキの目前へと迫る。


ガキィィン!!


全力で剣を受け止めたが、衝撃は凄まじく、ミサキの足が甲板にめり込む。


「がっ……強い……!」


さらに追撃、ドレークの剣が雷をまといながら振り下ろされる。


ドォンッ!!


爆風と共に甲板が砕け、ミサキは吹き飛ばされた。


「ミサキさん!!ホーリー……」


「おせぇよ!」


リーナが魔法でカバーしようとするが、ドレークは雷の魔法でリーナの魔法を妨害する。


「くっ……!」


ミサキは防戦一方。


リーナも援護するが、ドレークのスピードとパワーは圧倒的だった。


「お前らみてぇなガキどもが、この俺様に敵うと思うなよ!!」


海賊たちが歓声を上げる。


圧倒的な実力差に、傭兵たちも動揺していた。


「くそっ……こうなったら……」


ミサキはマジックエンチャントをかける。


ミサキの剣が炎に包まれる。


「いっけええええええっ!」


ガキイン!とぶつかり合う2本の魔法剣。


「ほぉ……?」


ドレークは興味深そうにミサキを見る。


一瞬、拮抗する二人の剣。


しかし


「無駄だっ!」


ミサキの炎の剣が弾き飛ばされる。


「なっ……!!」


ミサキのマジックエンチャントすら通じない、強敵ドレーク。


そして、その隙を狙い、ドレークはミサキの腹を蹴り飛ばす。


「ぐっ……!!」


腹を押さえ、吹き飛ばされるミサキ。


「サンダー・ボルトォ!!」


更にドレークは剣を上にあげ、雷を連続で落としてくる


ミサキはなんとか雷を避けるものの、どんどんと魔力を消耗していく。


「ホーリー・チェーン!」


リーナもなんとかミサキの援護をしようと魔法を使う。


しかし、その魔法もドレークの雷の剣にむなしく打ち消される。


苦戦するミサキたちの前で、ドレークがニヤリと笑う。


「このまま、海の藻屑になっちまえよ……!」


死闘はますます激しさを増していく。


そんな戦いの行く末を示唆するかのように、天気はどんどんと悪くなる。


ゴォォォォォォ!!


空は黒く染まり、風は怒り狂う獣のように甲板を吹き荒れる。


波は高くうねり、豪華客船エンタープライズを小さな木の葉のように揺さぶった。


「くっ……こんな時に嵐まで……!」


ミサキは剣を構えながら、ドレークの動きを警戒していた。


リーナも隣で魔法を練り、いつでも援護できるように準備している。


だが


「ははは!いいねぇ、神も俺たちを盛り上げてくれるじゃねぇか!

俺様はこんな戦場は慣れっこだ。しかしテメーらはどうかな?」


ドレークはむしろ嬉しそうに笑い、雷を纏ったカットラスを振り回す。


甲板に炎の軌跡が残り、その熱気で雨が蒸発していく。


足場と視界が悪いと言うのにも関わらず、ドレークは問題なさそうに動き回る。


しかし、ミサキ達は倒れまいと必死に食らいつく事しかできなかった。


「グアアアアアアアアッ!!!」


ドレークの雷の剣がミサキを貫く。


その高圧電流にミサキは苦しそうに痙攣する。


「このまま沈めてやるよ!!」


ドレークの剣が再びミサキを襲う。


その瞬間、猛烈な突風が吹いた。


「……っ!!」


雨と風が視界を奪い、体を押し流す。


ミサキはなんとか踏みとどまったが


「きゃっ……!!」


リーナの小さな悲鳴が響いた。


「リーナ!?」


振り向くと、リーナが足を滑らせ、体が傾いていた。


船の縁にぶつかり、そのまま宙に浮く。


ザバァァァン!!


彼女の体が、容赦なく荒れ狂う海へと落ちていった。


「リーナァ!!」


ミサキは迷うことなく、甲板の端へと駆け寄った。


暗い海の中で、リーナの白い腕が波間に消えかけている。


「くっそぉ……!!」


何も考える暇はなかった。


「待ってろ!!絶対助けてやる!!」


ミサキは自ら海へと飛び込んだ。


ザッパァァァン!!


冷たい水が全身を包み込み、一瞬息が止まる。


耳には、怒涛のような波音と、遠ざかる船の喧騒が響いていた。


――沈んでいくリーナが見えた。


必死に手を伸ばす。


リーナもまた、か細い腕を伸ばそうとしている。


(届け……!!)


ミサキは全力で水をかき分け、リーナの手を掴んだ。


だが、その瞬間、巨大な波が2人を包み込む。


ザバァァァン!!!


視界は暗くなり、上下の感覚すらなくなる。


波に飲まれた2人の行方は、誰にも分からなかった。

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