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未知なる世界の歩き方  作者: リース
2章 地下帝国パンデラ編
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第30話 豪華客船エンタープライズ

客船に乗り込んだミサキとリーナは、甲板に立ち、港が徐々に遠ざかるのを眺めていた。


「とうとう出航しましたね!」


リーナが海風に髪をなびかせながら、嬉しそうに笑う。


「ああ、さっそく船の中を探検してみようか」


ミサキが意気込むと、リーナも元気よく頷いた。


***


船内に足を踏み入れると、そこはラウンジだった。


「わぁ……すごく落ち着く場所ですね……!」


リーナが感嘆の声を漏らしながら、室内を見渡す。


ラウンジの内装は上品で、木目調の壁に暖かな照明が灯され、居心地の良い雰囲気を醸し出していた。


大きな窓からは青い海が広がり、陽光が差し込んで室内を優しく照らしている。


ソファや椅子がゆったりと並べられ、乗客たちは思い思いにくつろいでいた。


部屋の一角には本棚があり、旅行者向けのガイドブック、小説、新聞などが並べられていた。


「ミサキさん、これ見てください!」


リーナが手に取ったのは、旅行パンフレットのような本だった。


「次の行き先、エジェト王国のことが載ってますよ!」


「エジェト王国?どんな国なんだろう?」


二人は近くのソファに腰を下ろし、カタログを開いた。


エジェト王国の情報。


カタログのページには、壮大な砂漠と遺跡の絵が掲載されていた。


黄金色の砂丘がどこまでも広がり、そこに点在する古代の遺跡が異国情緒を漂わせている。


「砂漠の国なんですね……!」


リーナが目を輝かせながらページをめくる。


《エジェト王国》


エジェト王国は、広大な砂漠に囲まれた国であり、古代文明の遺跡が数多く残ることで有名。


また、エジェト王国では独自の文化が発展しており、ラクダを使った移動手段や、オアシス都市での交易などが特徴的。


伝統料理には香辛料をふんだんに使った料理が多く、特に「砂漠のスパイスカレー」は名物の一つである。


「カレー!カレーが食べれるんだ!」


「ミサキさん、カレー食べた事あるんですか?」


「ああ、私の大好物なんだ!楽しみだなぁ……」


「他には遺跡が有名なんだ……!ねえミサキさん、ラクダに乗ってみたくないですか?」


「そうだな。ちょっと楽しそうかも」


二人はワクワクしながらカタログを読み進める。


カタログを読み終えると、ミサキはふと窓の外を見た。


「こうしてると、旅してるって感じがするな……」


リーナも同じように海を眺める。


波がゆるやかに揺れ、船が静かに進んでいく。


「うん……次の目的地がどんなところか、今から楽しみですね」


「エジェト王国か……今から楽しみだな」


新たな旅への期待を胸に、二人はラウンジでしばしの休息を楽しんだ。


***


船内を歩いていると、2人は立派な装飾が施された大きな扉の前にたどり着いた。


扉の上には金色のプレートが掲げられており、そこにはこう書かれていた。


『バンケットルーム』


「バンケットルーム?」


「要するに宴会場って事。と言っても今はまだ食事の時間じゃなさそうだけど」


「へぇ……あ、あそこに案内がありますよ!」


リーナが指さした先には、バンケットルームの入り口近くに立てられた看板があった。


『蒼月の誓い』――歌姫セリア公演


「歌姫……?なんだか有名な人っぽいね」


「セリアさんは、セントルでは有名な歌手なんですよ!王族の前で歌うこともあるんですって!」


「へぇ、そんな凄い人なんだ」


リーナの目が輝くのを見て、ミサキは思わず微笑んだ。


「じゃあ、それを観ようか」


「はい!」


ミサキとリーナが扉を開けると――


ガチャリ……


目の前には素敵な空間が広がっていた。


バンケットルームは豪華なシャンデリアが輝き、奥には黒いアップライトピアノが設置され、壁には精巧な彫刻と繊細なタペストリーが飾られている。


床には赤いカーペットが敷かれ、部屋の端には使わないゲートレッグテーブルが邪魔にならないよう折りたたまれている。


いくつもの椅子が設置してあり、すでに多くの客が着席していた。


二人も席についてしばらく待つと、やがて、バンケットルームの灯りがゆっくりと落ちる。


静寂が訪れたかと思うと、一人の女性にライトが当たる。


透き通るような銀色の髪に、青いドレスを纏った女性。


「綺麗……」


リーナが思わず息を呑む。


セリアが軽く一礼すると、ピアノの音色が響き始めた。


♪──


「……!」


まるで風がそっと頬を撫でるような、優しく柔らかな旋律。


ゆったりとした音の流れに、空気が包まれていく。


セリアがそっと目を閉じ、そして――


「♪~~~」


彼女が口を開いた瞬間、劇場全体に澄み渡るような歌声が響き渡った。


♪──


それはまるで魔法だった。


柔らかく、それでいて力強い旋律。


悲しみを帯びながらも、どこか優しい響き。


「すごいな……」


ミサキは思わず息を呑んだ。


リーナは目を輝かせながら、じっと舞台を見つめている。


歌姫セリアは、その美しい歌声で人々の心をつかんで離さなかった。


「♪~~~」


ピアノの旋律に合わせて、セリアの声が重なる。


甘く切ないメロディーが、観客の胸に染み渡っていく。


言葉にはできない感情が、セリアの歌に乗せられていた。


そして――


最後の音が消えると、静寂が劇場に訪れる。


劇場内はしばしの静寂に包まれ、次の瞬間、割れんばかりの拍手が響いた。


観客たちは総立ちとなり、セリアに惜しみない喝采を送る。


「すごかったな……」


「うん……あんな歌、初めて聞きました……!」


二人は感動しながら、最後まで公演を楽しんだのだった。


***


次に入った部屋はゲームルームだった。


その中はこぢんまりした落ち着きのある雰囲気の大人の遊び場といった感じで、テーブルごとにカードゲームやボードゲームが行われていた。


壁には海をテーマにした装飾が施され、船旅ならではの優雅な空間が広がっている。


ディーラーがいるテーブルもあり、まるでカジノのような雰囲気だった。


「面白そうだな」


「せっかくですし、遊んでみましょう!」


二人はカードゲームのコーナーに向かった。


「じゃあ、私はポーカーをやってみようかな!」


リーナは楽しそうにポーカーテーブルへ。


対戦相手は観光客らしき紳士や婦人たち。


ディーラーが優雅な手つきでカードを配る。


「ふふっ、こういうのは運が大事ですよね!」


自信満々のリーナだったが……


「また負けた……」


「……えっ、また負けた!?」


「……うそでしょ!?なんでそんな強い手ばっかり来るんですか!?」


リーナは何度も勝負するものの、ことごとく負け続ける。


しかも、相手がなぜか毎回強い手を出すという奇跡のような展開に。


「もしかして、私、ポーカーの才能ない……?」


「うん……まぁ、そうかも……。イカサマしてるようにも見えないし……」


ミサキが遠慮がちに言うと、リーナはガックリとうなだれた。


一方、ミサキはブラックジャックのテーブルへ。


「じゃあ、私はブラックジャックかな」


ディーラーがカードを配り、ミサキは慎重に手を進める。


「ヒット」


「スタンド」


落ち着いた判断でカードを引いていくミサキ。


その結果……


「また勝った……」


「お嬢さん、強いね……!」


周囲のプレイヤーが感心するほど、ミサキは驚異的な勝率を誇っていた。


「なんでそんなに勝てるんですか……?」


リーナがポーカーで負けまくって戻ってくると、ミサキはチップを大量に稼いでいた。


「実はブラックジャックに勝つテクニックがあるんだよ。カウンティングって言うんだけれど……」


ミサキはそのコツをリーナに話す……。


「え、そんな事を頭の中でしてるんですか!?ミサキさん凄いですね!私じゃできる気がしないですよ……」


「ふふっ、カードゲームは私の趣味だからね」


ポーカーで大負けしたリーナと、ブラックジャックで大勝ちしたミサキ。


そのコントラストが際立つ結果になった。


「楽しかったけど、私はポーカーはもうやらない!」


リーナがふてくされながら言うと、ミサキはくすっと笑った。


「じゃあ次は一緒にできるゲームを探そうか」


「うん、お願いします……!」


二人はゲームルームを後にし、新たな楽しみを求めて歩き出した。

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