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未知なる世界の歩き方  作者: リース
1章 王都セントル編
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第24話 操られた守護龍

フルエ村からの旅を終え、ミサキたちはセントル王都へ戻ってきた。


次の目的地はネクト港。


そこで船に乗り、島の外に出るつもりだった。


ネクト港行きの馬車が出るまでセントルでのんびりしていると、ミサキは突如として異様な気配を感じとる。


「……なにか、すごい魔力を感じる」


リーナも表情を険しくする。


「確かに……これはただ事ではないですね……」


ミサキたちは急いで城壁の外を覗く。


そこには地平線の先から大量のモンスターが押し寄せてきているのが見えた。


牙をむき、爪を振るいながら、黒い影が大地を埋め尽くす。


「なんだあれは……!?モンスターが一斉にこっちに向かってる……!?」


ミサキが息を呑んだ。


それだけではなかった。


「ミサキさん!空を!空を見てください!」


慌てたようにリーナが言う。


急いで空を見ると、そこには、赤き龍――イグニスが空を飛んでいた。


だが、いつものような落ち着いた姿ではなく、どこか荒々しい。


まるで何かに操られているかのように、低空を旋回し、王都の城壁を見下ろしていた。


「イグニスさん……なんで!?」


ミサキの胸にざわついた不安が広がる。


王都の人々は悲鳴をあげ、慌てて逃げ惑う。


その時、王都の街道を通り、騎士団が姿を現した。


先頭に立つのは騎士団長。


彼は騎士たちを引き連れ、整然と隊列を組んでいた。


そして、その後ろにはエルメス。


「王都の者たちよ!我らがここに立つ限り、王都は決して落ちぬ!」


彼の力強い声が響く。


そして、ミサキたちの存在に気づくと、険しい表情を向けた。


「お前たちは危険だ!すぐに王都の奥へ避難しろ!」


「一体何が起こってるんです!?」


「わからん!だが、このまま指をくわえて見てるわけにはいかない!」


その時、一歩前に進み出た人物がいた。


それはエドガー、シルヴィン、ライラの三人だった。


「ミサキさん!リーナさん!恥を忍んでお願いします!防衛を手伝ってください!」


「お前達!?」


「ダグラス団長!この2人は私達をソロモンの魔の手から救ってくれた人達です!」


「今はとにかく戦力が必要です!彼女達の力はきっと必要になります!」


三人の言葉を受けて、ダグラス騎士団長はしばし沈黙する。


そして、鋭い眼差しでミサキを見据えた後、静かに頷いた。


「……よし、ではお前たちとエルメスにあの龍の撃退を任せる。正門の防衛は我々に任せろ」


「……わかりました!」


ミサキは力強く頷く。


空を裂く轟音が響いた。


騎士たちが城壁の外に出ると、イグニスが、大きく口を開く。


次の瞬間。


「来るぞッ!!」


騎士団長の叫びと同時に、イグニスの口から灼熱の業火が解き放たれた。


紅蓮の炎が空を埋め尽くしながら、地上へと襲い掛かる。


「くっ……!」


ミサキは直感的に回避しようとするが


「アース・ウォール!」


ドォンッ!!!


地面が揺れるほどの衝撃と共に、炎の直撃を防ぐ巨大な石壁が出現した。


「すごい……!」


ミサキは目を見開く。


石壁の向こうで、騎士団長が強大な防御魔法を展開していた。


「部下を燃やさせるわけにはいかん!!」


騎士団長が魔力を込めると、石壁はさらに分厚くなり、イグニスの炎を完全に遮断した。


だが、それほどの魔法を一瞬で発動したことに、ミサキもリーナも驚きを隠せなかった。


「こんな強力な魔法……!」


「流石セントル騎士団長……!」


しかし、問題はそこではなかった。


なぜイグニスが王都を襲うのか?


「イグニスさん……どうして……」


リーナは信じられないという表情で、空を舞う龍を見上げる。


普段は穏やかなはずのイグニスが、まるで獣のような荒々しい動きをしている。


まるで何かに……操られているかのように……


「まさか……!」


ミサキはイグニスの首元を凝視する。


そして、それを見つけた。


「リーナ、あれ!」


リーナが視線を向けると、そこには黒い金属製の首輪が、ガッチリとイグニスの首に食い込んでいた。


「奴隷の……首輪!?」


リーナの声が震える。


まさか、龍が奴隷化されているというのか?


「嘘でしょ……?龍族を奴隷化なんて、そんなことができるはずが……!」


「……だが、あれは間違いなく奴隷の首輪だ……」


エルメスも驚愕の表情を隠せない。


龍とは、神に匹敵するほどの力を持つ者たち。


それを、どうやって奴隷化などできるのか?


「龍族の奴隷化、それがとうとうできるようになったのだよ」


突如、空中に響く不気味な声。


ミサキたちが視線を向けると、そこには、イグニスの背に立つ、一人の男。


男は漆黒のローブを纏い、銀髪の長髪を持つダークエルフだった。


「……ソロモン!」


騎士団長の顔が険しく歪む。


「あいつが、あのソロモン!?」


リーナが驚愕し、ミサキも目を見開く。


ソロモン。


旅の間、散々聞かされた悪の魔導士ソロモン。


そのソロモンが、イグニスを支配している……!?


「我は研究を重ねた」


ソロモンはゆっくりと手を広げ、冷たく微笑む。


「……そしてついに、龍族ですら支配できる術を手に入れたのだ」


彼はイグニスの背中で、不敵な笑みを浮かべた。


「フッフッフ、ハーッハッハッハ!!」


不意に高笑いし始めるソロモン。


「さあ、次はセントル騎士団を使役させてもらおうか!」


「なん……だと……!?」


その言葉が意味するものは、あまりにも恐ろしかった。


「ソロモンは俺がやる!」


騎士団長が鋭く叫んだ。


その表情には揺るぎない覚悟が滲んでいる。


「その龍はお前たちに任せる!何としてでも奴を止めろ!」


「……わかりました!」


ミサキたちは、それぞれ武器と魔法の準備を整える。


その時。


ズズン……ッ!!


大地が大きく揺れた。


空を舞っていたイグニスが、轟音と共に地上へ降り立つ。


巨大な爪が地面を抉り、鋭い金色の瞳がこちらを見据えている。


「くっ……」


圧倒的な威圧感に、ミサキたちは思わず息を呑んだ。


「やっぱり……本当に戦わなきゃいけないんだ……」


リーナの声が震える。


「とにかく首輪を破壊しろ!そうすればあの龍は開放される!」


「やるしかない……!」


「今……開放してあげます!」


リーナが杖を構え、ミサキとエルメスも剣に魔力を込める。


「行くぞ!!」


ミサキの掛け声と共に、龍との戦いが始まった。

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