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未知なる世界の歩き方  作者: リース
1章 王都セントル編
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第21話 エルフの村フルエ

セントル王都を出発し、馬車で数時間。


ミサキたちはついに、エルフの村「フルエ」へと到着した。


「うわぁ……!」


馬車を降りたミサキは、目の前に広がる光景に思わず声を漏らした。


そこには、まるで山のようにそびえ立つ万年樹があった。


見上げても、そのてっぺんが霞んでしまうほどの巨大な樹。


その周囲には、同じく太い幹を持つ大木が点在し、それぞれの幹には窓や扉がつけられ、エルフたちの住居になっているようだった。


地面には木々の隙間から柔らかい陽光が差し込み、どこか幻想的な雰囲気が漂っている。


そして、村の中には長い耳を持つエルフたちがたくさん歩いていた。


彼らは皆、洗練された美しさを持ち、優雅な仕草で村のあちこちを行き交っている。


「なんだか落ち着く雰囲気だな……」


「ええ……来た事は無いけど、何故だか懐かしい気がします……」


そんな話をしながら村の中を歩く。


すると、ふと開けた場所に出た。


目の前には、自然と調和した不思議な光景が広がっていた。


「へぇ……エルフの公園か……」


丸太で作られたベンチや滑り台、枝とツタで編まれたアスレチック。


地面には柔らかな土が敷き詰められ、高い木の枝には、信じられないほど長いロープで吊るされたブランコがゆらゆらと揺れている。


そこではエルフの子供たちが、透き通るような笑顔で遊び回っていた。


「わぁ……あんなに高いブランコ、初めて見ました!」


とリーナが声をあげる。


その目は好奇心でキラキラと輝き、うきうきとブランコの方へ駆け出していった。


ミサキはその様子を、ベンチに腰を下ろして眺めていた。


柔らかな風に髪をなびかせながら、童心に返ったように無邪気にはしゃぐリーナ。


高く高く揺れるブランコに乗って、笑い声を響かせながら空に向かって舞い上がる姿は、まるで森の妖精のようだった。


やがてリーナはブランコから降りると、今度は木々をつなぐアスレチックに挑戦し始めた。


ツタのロープを握って渡り、木の間に設けられた丸太の橋をバランスよく進んでいく。


その姿を見るだけで、ミサキの心も穏やかになった。


ミサキは目を閉じて深呼吸をした。


葉の匂い、木の香り、そしてリーナやエルフの子供の笑い声……


ここは、日常の忙しさを忘れさせてくれる、静かな癒しの場所だった。


こうして二人は、エルフの森にひっそりと佇むその公園で、ゆったりとした時間を過ごすのだった。


***


「ハラ減って来たな……」


「そうですね……」


ミサキとリーナはふと空腹を感じて食事を取ることにした。


目に留まったのは、村の中央にある木造の食堂。


扉を開けると、木の香りが鼻をくすぐった。


店内は木の温もりに溢れていた。


壁は滑らかに磨かれた木目が美しく、天井にはツタが絡みついたシャンデリア風の魔法灯が吊るされている。


テーブルや椅子もすべて木製で、エルフの細やかな技術によって彫刻が施されていた。


店内にはすでに数人のエルフたちが座っており、ゆったりと食事を楽しんでいる。


どこか落ち着いた雰囲気が漂い、王都の賑やかな食堂とはまた違う、静かな癒しの空間だった。


ミサキたちは窓際の席に腰掛けた。


窓の外には万年樹の枝葉が広がっており、木漏れ日が優しく差し込んでいた。


「これは……すごく落ち着くな」


「うん……空気も綺麗で、なんだか眠くなっちゃいそうです……」


そんな話をしていると、エルフの店員が静かに歩み寄ってきた。


彼女は長い金色の髪を持つエルフの女性で、清潔な白いエプロンをつけている。


すらりとした立ち姿と、優雅な微笑みがとても印象的だった。


「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」


「えっと……おすすめは?」


「おすすめは、フルエ村特製アップルパイです。

フルエ村で採れた新鮮なりんごをパイ生地で包んで焼き上げていますよ」


「美味しそう……!」


「じゃあ、それを二つお願いします」


「かしこまりました」


店員は優雅に一礼し、厨房へと向かっていった。


しばらくすると、香ばしい香りとともに、焼きたてのアップルパイが運ばれてきた。


「お待たせいたしました。特製アップルパイです」


ミサキの目の前に置かれたのは、サクサクの黄金色のパイだった。


表面には美しい焼き色が付き、ほんのりとしたバターの香りが食欲をそそる。


「美味しそう……!」


そして、サクッとパイにフォークを入れると、中からトロリとしたリンゴの果肉が溢れ出す。


香ばしいバターとシナモンの香りが鼻をくすぐり、ミサキはさっそく一口食べてみる。


「サクサクのパイと、濃厚なりんごが凄く合うな……!」


「本当……すごく優しい味で美味しいです!」


リーナも目を細めながら、ゆっくりと味わっていた。


リンゴの甘酸っぱさとパイの塩気が絶妙に合わさり、口の中でじんわりと広がる。


エルフの作るスイーツがこれほど繊細で美味しいとは思っていなかった。


ミサキとリーナはゆっくりと食事を楽しみ、お腹を満たした。


食事を終えたミサキとリーナは、満足げな表情で食堂を後にした。


「いやぁ、美味かった」


「うん、本当に美味しかったですね!」


「さて、次は万年樹だな」


ミサキはワクワクした様子でリーナに微笑んだ。


「うん、行ってみましょう!」


二人はエルフの村の中心にそびえ立つ万年樹へと足を運んだ。


***


万年樹――その名に相応しい、圧倒的な存在感だった。


近づけば近づくほど、その規模の大きさを実感する。


「……でかいな」


「うん……これは想像以上ですね……!」


ミサキは万年樹を見上げながら、その圧倒的な存在感に言葉を失った。


幹はまるで山のように巨大で、普通の木々とは比べものにならないほど太い。


表面には無数の古い傷や苔が付着しており、長い年月を生き抜いてきたことを物語っていた。


そして、万年樹の根元にはなんと


「あれは……龍!?」


まるで山のような体躯、鋼のような赤い鱗、鋭利な爪、長く力強い尾、そして滝のような白ひげ。


龍はただ寝ているだけなのに、圧倒的な存在感を放っていた。


「龍……!まさかこんな所で見れるなんて!」


「ええ……でも、どうしてこんな所で寝てるんでしょうか……?」


すると、近くの茂みから一人のエルフの青年が現れた。


「龍を見るのは初めてかい?」


「は……はい!」


「その龍は守護龍様。このフルエを何百年も見守ってくれている、神様のような存在さ」


「何百年もか……凄いな……」


ミサキは感心したように龍を見つめた。


「龍族はおよそ1000年と、エルフ族の倍は生きますからね……」


「でもな……少し前から守護龍様は眠り続けていて、全然目を覚まさないんだ」


エルフの村人が心配そうに言った。


「病気ですか……?」


「ああ……恐らく」


「回復魔法では治せないのか?」


ミサキが尋ねると、エルフはわずかに顔を曇らせた。


「何度も試したよ。でも……効かなくてね、どうやら普通の病とは違うらしい」


「……治す方法は無いんですか?」


リーナが前のめりに聞く。


「万年樹のどこかに実る”金の実”を食べさせれば回復するかもしれないそうだが……」


青年は肩をすくめて笑う。


「けれど……見ての通りだ。

万年樹は天まで届くような高さ、その上モンスターまで居るから、誰も登ることができないんだ。

何度か挑んだ者もいたが、全員脱落したよ」


その言葉に、ミサキとリーナは顔を見合わせた。


「……私たちが行きます」


「え?」


「ちょうど私たち、万年樹に用があるんです。その実も手に入れてきますよ」


「お、おい、本気か?危険なんだぞ?あの万年樹に登るなんて、普通じゃ……」


ミサキはにっこりと笑い、剣の柄に手をかける。


「大丈夫です。私たち、冒険者ですから」


リーナも静かに微笑んでうなずいた。


「龍を助けられるなら、やってみたいです!」


エルフの青年は目を丸くしていたが、次第にその顔がほころぶ。


「……そうか、どうやら君達に任せるしかなさそうだ。とにかく気を付けてくれ」


「わかりました」


こうして、ミサキとリーナの万年樹登頂の冒険が始まった。

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