魔女の森へ
約束の土曜日正午、街の外れに集まった子どもたちは準備を整え、ついに魔女の森へと足を踏み入れます。
そこには、高さ10メートルを優に超え、大人3人がかりでも抱えきれないほどの太い幹を持つ巨大な古木が、まるで門のように立ちはだかっていました。
幹は歪み、まるで人が苦悶の表情を浮かべているかのようにねじれています。その表面には無数の傷跡やコブが浮かび、不気味な存在感を放っていました。根元には動物の骨が散らばり、子どもたちは思わず息を呑みます。
近づくだけで、森は異様な雰囲気を漂わせていました。ついさっきまでの勇気はどこへやら——子どもたちは急に怖気づいてしまいます。
ドルジはアルバートの背中にしがみつき、震える手でクマのぬいぐるみをぎゅっと握りしめました。ヨハンは額に汗を浮かべ、落ち着かない様子で周囲を見回しています。
「本当に……大丈夫だろうか?」
勇敢なアルバートでさえ、足が地面に縫い付けられたように動けなくなりました。それほどまでに、この森は恐ろしいのです。
「こ、怖くなんかないぞ……! 僕たちで、必ず魔女の花を持ち帰るんだ!」
アルバートは震える声で自らを奮い立たせました。