盲目の少女、アンナ
街の中心には、陽光を浴びた白壁と赤い屋根の病院が、まるで絵本の一頁のように静かに佇んでいます。
院内では、窓からの光が白壁に反射し、柔らかな輝きが静謐な空間を満たしています。待合室では、看護師が患者を励まし、医師たちは慈愛に満ちた眼差しで迎えます。そこには、温もりが満ちていました。
その病院の一室に、アンナという名の少女が入院していました。アンナは生まれながらに目が見えません。
誰もが憧れる美しい街に暮らしていても、アンナはその世界を見ることができません。それでも、彼女は鳥の歌、風の囁き、人々の声、廊下に響く足音、薬の香り、シーツの柔らかな感触など、五感を研ぎ澄ませて世界を感じ取っていました。
それら一つ一つが、彼女の世界を形作っていたのです。
ある日、アルバートという少年が病院を訪れます。彼は勇敢で正義感が強く、何よりも純粋な心を持つ、太陽のような少年でした。
母に付き添われて待合室にいたアルバートは、ふと病院内を散策し、偶然アンナの病室の前を通りかかります。
白いワンピースをまとい静かに佇むアンナ。その姿を見た瞬間、アルバートの心は強く引き寄せられました。
「天使がいる!」
透き通るような白い肌、儚げな表情に胸が高鳴り、思わず息を呑みます。
アンナは気配を感じ、不安げに声を上げました。
「だれかいるの?」
「う…うん。」
アルバートは照れくさそうに答えました。
こうして二人は言葉を交わし、少しずつ心を通わせていきます。それ以来、アルバートは毎日のように病院に訪れ、学校での出来事を語るようになりました。
友人たちと笑い合った日々、週末の湖での冒険。彼の語る話は鮮やかで、まるで一幅の絵画のようにアンナの心を彩ります。そして、アンナも次第にアルバートに心を開いていったのです。
そんなある日のこと――。