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80話『猶予』1


 

 銀色の眼。

 グーファルトの視界に、青い空が広がっている。

 側には、自身の服を掴み縮こまる少年が一人。

 すぐ近くにはカトリーナの姿がある。


 ここは何処だ?何が起きた?一瞬理解が追い付かず。

しかし先ほどの屋敷で、急に足元が消失した感覚が残っているため、頭はすぐに理解した。


 ここは空の上。

 それも数千メートル上空。

酸素の薄さと、凍えてしまいそうな寒さが物語る。



「くそ――!化け物が!」


 第一声はこれだった。しかし、そんな事を考えている暇はない。

 服にしがみ付くフォックスを小脇に抱え、グーファルトは当たりを見渡す。

 気が付けば、隣にいたカトリーナの姿がない。


 視線を下に向けると、あの桃色の影が揺れているのがわかる。

 グーファルトと同じように、両脇に自身が連れてきた『協力者』を抱え。

 自らの意思で、一直線に落下していく。

どうやらグーファルトよりも先に、今の状況を飲み込み行動に移したらしい。

あれなら手を貸さなくても良い。銀色の眼は彼女からそれた。


 グーファルトから3メートルほど離れた場所で、黒い影が揺れた。

 次に視界に入れたのは『六の王』――。その二組。

 しかしこちらもすぐに、問題ないと判断する。

 セバスチャンといったか?両腕に、主であるドトール、そしてエリザベートを抱き。

 長い黒い髪を靡かせながら、垂直に落下していっている。

 ちらりと見えた、その琥珀色の目は何処までも冷静だ。


「きゃは、あははははは!」


 次に笑い声が聞こえ、視線を正面上へと飛ばす。

 声の主はレベッカ――。彼女も穴に落とされたのだと、ここで気が付く。

 数メートルほど上空にいた、レベッカが急降下したのは次の事。

グーファルトの目の前を通り過ぎ、数メートルほど下にいた、『四の王』『五の王』のもとに向かっているようだ。

騒ぎまくっていた二人を確保したのを確認。アレであれば、彼らも問題ない。

2人が引き連れていた、6人の『協力者』の方は知らないが。


 『協力者』の影響もあるが、さすがこの馬鹿げた『ゲーム』に参加した面々。

 こんな状況でも、冷静に物事を判断できる者が多い。

なに、訓練を組んでいるものであれば、この高さなんて物ともしない。


 ――ただ、一人を除いては。

 

「うああああああああああ!!」


 右下5メートル程。情けない叫びが上がっていた。

『協力者』など引き連れず、たった一人でこの『ゲーム』に挑んだ馬鹿が一人。

 『三の王』である、リーバンという男だ。


 正直放っておこうかとも思えた。

 他の『10の王』と比べれば、ひどくつまらない人物であるのは分かっていたから。

 しかし――。側の小さな手が、何かを言いたげに指をさす。

 赤い瞳がまっすぐにこちらを必死に見つめていた。


「ちっ……。いいか、貸しだぞ」


グーファルトは、舌打ちとともに大きくため息をついて。体制を変える。

彼の、細身ながらも筋肉で引き締まった身体が、リーバンめがけて落ちていく。

 完全に気を失ってしまったリーバンの首根っこを掴み、自身の脇に抱えた。



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