夏の延長線上
部活の練習は終わっていた。
いつもより少しだけ長く残っている。
グラウンドには夕焼けが広がり、オレンジ色の光が僕たちの影を長く伸ばしていた。空は茜色に染まり、まだ蝉の鳴き声が遠くから聞こえてくる。風は少し涼しくなり、夏の終わりを感じさせた。
「今日もお疲れ様」
彼女の声が背後から聞こえた。
振り返ると、彼女が笑顔で立っている。僕と同じサッカー部のマネージャーだ。
笑顔は、夕焼けの光に照らされて一層輝いて見える。
「明日の試合、頑張ってね」
彼女は僕に近づき、タオルで汗を拭いてくれようとした。
心臓がドキッと高鳴る。
彼女の手が僕の顔に触れると思うと、妙に胸の奥が熱くなる。
「ありがとう」
僕は悟られぬよう、彼女の手からタオルを取る。
少し強引だったかもしれない。
「どういたしまして」
それでも彼女は微笑んで、優しい目を向けている。
夕焼けの中。
僕たちはしばらくの間、無言で立ち尽くしていた。風が吹き抜ける音だけが、静かなグラウンドに響く。
僕は心の中で、次に彼女に掛ける言葉を整理していた。