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ネリネの霊的現象
その花を萎れるまで握っていた。気がつけば部屋は花瓶の残骸と萎れた花、濁った水が散らかっていた。いつの間にと思うと同時になぜ花を取ったのかと考えた。あとから分かったことではあるがネリネの花言葉というのは「また会う日を楽しみに」という意味だった。正直貰い物の花の花言葉など気にしたこともなかった。だが、今日のわたしは何かが変だ。夏でもないのにセミの声が聞こえたり枕を涙で濡らしたり、花を握ったり。まるで自分の体ではないような気までしていた。少し自分に恐怖を覚えた。ふと我に返り冷静になる。それと同時に体が少し楽になり涙も止まった。わたしはこの体験に少し心当たりがあった。霊的現象のひとつとして「魂が肉体に入り込む」というものがあるのだがこれが一番納得できる理由だった。少なくとも当時の変な体験をした直後には脳は働かない。わたしにはこの答えを納得させるので精一杯だった。
その時なぜか眼の前が真っ暗になる。どうやらわたしは気絶したらしい。目が覚めるとそこに広がっていたのは現代とは思えない自然の多いどこかの町だった。