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悪役令嬢と結婚したい第一王子が神子補正を阻止するためにサングラスを装着しました

作者: 桃井 律


 思えば、俺が俺としての自我を取り戻したのは、母親の産道を通った時だっだと思う。


 突然むぎゅっと息が詰まり、身体中が締め付けられる。まるで水の中で全身を圧縮されているような感覚。そんな中、なんとか踠き、踠き続けた。


 (後少し……!)


 本能的にそう感じた。ぐっと身体に力を入れると、突如息苦しさから解放される。


「おぎゃーっ!」


 かと思いきや、自分の口からとんでもない声が出た。


「おめでとうございます、王妃様」

「元気な男の子ですわ」


 おうひ?おうひってなんこと。


 浅い呼吸を繰り返し、俺はやっとの思いで息を整える。抱き上げられた身体に、柔らかい布が巻かれた。周りを確認しようと目を開けると、俺を抱いているらしいお姉さんが黄色い声を上げる。


 え、今度はなに。


 俺が驚き僅かに引くと、お姉さんの隣にいたお婆さんが「これ!」と嗜めた。


「王妃様の前ではたしたない!」

「も、申し訳ございません、王子が可愛らしくて……」

「ふふ、良いのですよ」


 首を竦めるお姉さんを優しい声が慰める。


 お婆さんがやれやれと嘆息し、お姉さんの腕から俺を受け取った。


「さあ、貴方のお母様ですよ」


 そして、百合の香りに抱かれた。

 目の前にはたわわな胸。透明な肌。視線を上げると、豊かなプラチナブロンドの髪がふわりと揺れる。


「こんにちは、坊や。私の可愛い子。やっと会えたわね」


 まるで花のように可愛らしいその人は、俺を見つめて微笑んだ。目が離せなかった。


 (『私の可愛い子』、って。え、もしかしなくても俺の母ちゃん……?)


 いやいやいや、まさかまさかまさか。


 俺の母ちゃんは、こんな西洋風の綺麗なお嬢さんじゃない。どこにでもいる普通のおばちゃんだ。


 強いて言うなら、スーパーのチラシを見比べて「ここが十円安いわね」と言っては、自転車漕いで家計を守る勇者的な。もっとこう、覇気のあるおばちゃんだった。


 父ちゃんが結婚した当時の姿は知らないが、少なくとも目の前のこの人のように百合の花のエフェクト背負っているような可憐さは持ち合わせていないと断言できる。


 俺が戸惑い反応に困ってあぶあぶ言っていると、突如。


「王様ッ!」

「王様、お待ちくださーーー」

「リリィ!!」


 野太い声がいくつもの声を掻き消し、ここら一帯を震わせた。部屋の扉を開け放したのは、強面の巨大な男。真っ赤なマントを翻し、ベッドに座る母ちゃん(?)に大股で駆け寄ってくる。


「まあ、王様」


 王様?!


 母ちゃんが驚いたように目を丸くした。俺も一緒に丸くする。


 思えば、この人王妃様って呼ばれていた。


 (ということは、もしかしなくても俺が王様と王妃様の息子にーーー)


 ぎゅむっ。


「リリィ、大丈夫か!無事か!身体は?!」

「ええ、王様。皆が助けてくれました。大丈夫ですよ。ご覧の通りです」

「子は?!」

「私と共に貴方の腕の中におりますわ」

「ん?」


 ん?じゃねーよこのクソ親父……ッ!


 俺はきゅっと下唇に力を入れて身を捩る。


 (いいか。生まれたての赤ちゃんってのはな、体温調節とか免疫面とかで未熟なの。新生児室でケアされるようなデリケートボディなんだよ。テメェみたいな筋肉ムキムキの身体で押し潰していいもんじゃないの。ついでに母ちゃんも離してあげてくんない?俺の奥さんじゃないけど、俺の母ちゃんだから。出産直後に無理させてどうするんだよ……!)


 言いたいことも言えず、抵抗できない身体で最大限の抵抗を見せると、どういうわけか親父は目を輝かせて言った。


「おお!抵抗しようと身を捩っているぞ!リリィ、この子は将来大物になるに違いない!」

「ええ、そうですね。とりあえず離れてくださいな、アルフレド」

「おお、すまない!」


 言いながらも、キラキラした笑顔で俺を見つめる。全く悪びれた様子ねーな、この親父。


 俺がふんと鼻で息を抜くと、母ちゃんは眉を下げて苦笑する。そして宥めるように俺の腕を軽く撫でながら、おもむろに王様を仰いだ。


「ところで」

「ああ、決まったぞ」


 なにが。


 俺がキョトンとして親父を見上げると、彼は左手を腰に当て、右腕を広げなからマントまで靡かせて俺を指し高らかに宣言した。


「お前はジェイクだ。ジェイク・フレン・リリック!フレア王国の第一王子である!」


 ……なンだって?


 こうして俺は、よりにもよってお(つむ)の弱い第一王子として生を受けたのだった。




 ジェイク・フレン・リリック。


 それは三ヶ月前に妹から押し付けられた乙女ゲームに登場する男の名だった。


 某ファンタジーの世界に、神子である女性プレイヤーが降臨。顔も性格もいい男たちに愛される逆ハー展開が約束されたお話。


 だがしかし妹よ。


「これ面白いから」


 そんな理由で、齢二十歳過ぎた異性の兄弟に勧めるものではないと思う。


 俺は受け取るだけ受け取って放置した。ぶっちゃけ興味がなかった。

 その日も、すっかり日課となったRPGゲームのギルメンで仲良く討伐に出ていたが。


「で、どうだった?」


 顔を合わせるなり、妹は執拗に感想を求めて来た。


「ルークかっこいいよね」

「リーンも捨てがたいし」

「でもやっぱりジェイクかなー」

「お兄ちゃんはどう思う?」

「え、まだやってないの」

「いつやるの」

「ねー、ねー、ねー、ねー」

「ーーーだァア!もう!やればいいんだろやればッ!」


 プレイした。この際だから、全員攻略してやった。結果、ジェイクに対して抱いた感想は一つ。


「なんだ、この王子残念すぎる……」


 だった。


 そりゃもう神子を溺愛する。これでもかってくらいにもて囃す。神子のことが好き好き大好き過ぎて、あろうことか圧倒的美人な許嫁を、婚約発表日に来賓の前で振るという暴挙をやってのけた。


「アホか」


 理性的に考えてもみろ。


 出逢って一週間の神子と、将来の王妃となるため日々努力し、寄り添ってくれた幼馴染であり最早家族のような美人な許嫁と普通はどちらを選ぶ。明らかに後者だろう。


 可愛いから結婚したい?馬鹿なのか。


 しかも美人を振った理由が「神子を苛めた上に可愛げないから」だと?普通に可愛いわ。


 それに彼女は苛めたんじゃなくて正論言ってただけだろ。それを悪女呼ばわりし、血も涙もなく振るのか。有り得ない。それに俺は可愛い系より綺麗系が好みだし。


 神子は神子で「立派な王妃になれるよう頑張るねっ!」って。なにこの子、マジで言ってんの。今から?今から頑張る気?やる気は買うが、王子が王様になるまでに時間ないんだわ。間に合わないだろう、どう考えても。


「ちょっと待って。ホントに意味が分からない……なんなんだ、このゲーム……神子のせいで散々じゃねーか。もうサングラスでもしておけよ王子たち……」

「お兄ちゃんも王子になってみたら分かるよ」


 ワケ知り顔で腕を組み、うんうんと頷く妹。


 前略・そんな君へ。

 王子になったお兄ちゃんは今でも分かりません。


 なぜなら。


「初めまして、ジェイク様。ルーナ・セルヴィンと申します」


 現代で悪役令嬢と蔑まれたご令嬢は、子供の頃からこんなにも美しく愛らしいからです。




 小首を傾げるだけでふわりと揺れるブロンズの髪。睫毛ぱっちりのブルーアイ。

 凛とした佇まい。やや緊張気味に肩に力が入っているのも、初々しくて愛らしい。


「ジェイク様」


 おまけに声まで可愛いときた。


 齢僅か五つ。断じて俺は幼女趣味ではない。しかし、生まれ変わる前にも後にも、こんな美人に会ったことはないと断言できる。


「すいませんごめんなさいありがとうございます」

「はい……?」


 とりあえず拝んでおいた。


 大事なことなので二度言っておく。

 俺は断じて幼女趣味ではない。


 だが可愛いものは仕方がない。惚れたって仕方ない。だって可愛いものは可愛いから。


「よろしくな、ルーナ」

「!はいっ」


 あー、笑顔可愛い最高。将来絶対この子と結婚してやる。


 ただその一心で頑張った。


 興味のない座学も。

 好きじゃない剣術も。

 前世の俺が見たら100%ドン引くであろうレベルで頑張った。


 (間違っても弟ルークにルーナを取られてたまるかよ……!)


 俺が不出来で第一王子の座から降りることになれば、その座は第二王子であるルークに継がれることになる。つまり、王妃候補であるルーナも弟と結婚することになるということだ。


「悔しければお前が優秀になれ」


 あのクソ親父であれば俺の気持ちなど関係ない。国の安定のために俺を下ろし、平然とルークを据えるだろう。そんなことがあってたまるものか。


「失礼致します」

「どうぞー」


 過去の収支報告書をひっくり返して調べ物をしていると、ルーナが籠を持った侍女を一人引き連れ執務室にやってきた。


 幼さが薄れ、美人の片鱗を見せる彼女。

 互いに十五を越え、あと二年後。学校を卒業すると同時に結婚する約束になっている。


 俺は目頭を揉み、椅子の背凭れに沈んだ。


「王子、少しお休みになった方がよろしいのでは」

「大丈夫だよ。あと五年分読んだら終わるから」

「それは大丈夫とは言いませんわ」


 ルーナは呆れたように肩を竦めた。侍女から籠を受け取り、部屋の外で待っているようにと言い付ける。


 部屋の扉が閉まったのを確認してから、彼女は俺のデスクに近づき、籠の上にかけてあったナフキンを捲って中からお皿を取り出して音を立てずに置いた。


「どうぞ」

「!これは」

「以前、王子が美味しいと褒めてくださったものです」


 ルーナ手作りのクッキーだった。

 

「食べてもいいか」

「ええ、もちろん」


 お言葉に甘えて一つ摘む。


「うんまぁー……」


 サクッとした小気味いい音。ほろりと崩れる甘み。バニラエッセンスの香りが口一杯に広がる。


 生きてて良かったと溢すと、ルーナは「大袈裟ですわ」と片頬に手を当てながらも口元に笑みを浮かべて言った。


「王妃様が心配しておられましたよ。最近は食事の席にもなかなか出て来られないと」

「あー……、ちょっと立て込んでてな」

「存じております。けれど、王子の御身も大切になさいませ」

「ーーージェイク」

「はい?」

「ジェイクって、昔みたいに呼んでくれないか。二人きりなんだから」


 俺が上目遣いに強請ると、ルーナは目を見開き白い頬をほんのり色付けた。それから籠を両手で持ち直し、恥じらうように視線をわずかに落としては唇をきゅっと結ぶ。


「ジェ、ジェイク様……」


 はい、可愛い。満点。最高。ありがとう世界。


「あと三徹いけるわ」

「私の話聞いていましたか」


 とにかく休んでくださいませ、と釘を刺された。ほっぺ膨らませているルーナも可愛い。そんな許嫁直々に言われたら聞かないわけにはいかないよな。


 国政の勉強の傍ら、俺がしていることがもう一つある。それは。


「王子、こちらが歴代の神子に関する資料です」

「ご苦労」


 神子補正への対策である。


 今のところ、人生がゲームの原作通り進んでいる。近いうちに、神子が降臨してきてもおかしくない。


 (登場人物が揃いも揃って惚れるってのは問題だろうよ)


 今までは上手くいっている。しかし、人間万が一がある。逃れられない力が作用してしまえば、俺の意志など関係ない。


 そこで歴代の神子について調べてみたが。


「ねーじゃん」


 何もない。

 誰も彼も普通に国を守り、繁栄させるような力しか持っていない。自分の周りの男を侍らせていたような記述も一切なかった。


 しかし、億に一があるかもしれない。


「要するに、神子を直接見なければいいんだよな」


 糸目になるというのも手か。


 そう思いつき、試しに目を瞑って生活してみようと思ったが。


「ーーーいってェ!」

「王子!?」

「何をしていらっしゃるんです、ジェイク兄様」

「ゆ、床の、大理石の、も、よう、数えて、た……ッ!」

「左様ですか……」


 ドアに右足の小指を打ち付けてしまった。あまりの痛さに蹲り悶絶していると、たまたま通りかかったルークにドン引きされ、ものの三秒で断念。


 他に手はないかと考えを巡らせていると。


『もうサングラスでもしておけよ王子たち……』


 ふと、前世の自分の言葉が頭を過ぎった。


 そうだ。

 特殊な目のキャラは決まってサングラスを着用している。邪○や、六○だってそうだ。アレの逆バージョンをやればいい。


 向こうが装着しないのであれば、俺が装着すればいいんだ。流石前世の俺、冴え渡ってる!


 そうと決まれば話は早い。


「今すぐ眼鏡屋さんを呼んでくれ」

「!王子、もしや視力が」

「バリバリ2.0だから」


 サングラスを作ってもらった。


 レンズは丸型。色は黒。フレームはシャープなヤツ。


「これで完璧だ」


 いつでも来い神子!と構えていると。


「初めまして、神子ですぅ」


 本当に来た。

 ゲームで見た通りのビジュアル。そして。


「ジェイク兄様」

「なんだ、ルーク」

「神子様、可愛いらしい方ですね」


 クソ真面目な弟が見事に補正かかってしまった。まるで花のようだ、とか呟いているコイツどうしてくれよう。


 俺は試しにサングラスを外そうと右テンプルに手をかけて。


「ーーーッ!?」


 すぐさまかけ直した。


 (ヤベェ、危なかった……!)


 お頭弱いとか言って悪かった、ジェイク。俺、神子補正ナメてたわ。


 (抗えない……!)


 まるで頭から魂でも引っこ抜かれそうな感覚。そうしてスカスカになった頭で、神子のことしか考えられなくなるのではないか。そんな一抹の不安が胸を過る。


 (コイツ、ヤバいな)


 俺が人知れず息を呑むと、神子は何を思ったか。人目を憚らず俺の側にやってきたかと思いきや、こちらの腕にするりと自分の細い腕を絡ませて言った。


「ジェイク様、お城の中を案内して頂けませんかぁ」


 ご遠慮願いたい。

 まずその甘ったるい声やめろ。それから手。今すぐ離せ。俺の腕はルーナのためにあるんだ、お前のためじゃない。


 ルークも睨むのやめてくれ。俺がルーナ一筋だってのはお前もご存じのところだろう。頼む、親父。この神子止めてくれ……!


「そうだな!ジェイク。お前は神子様と歳も近いし、案内してやるといい」


 止めろって言ってんだよ、このクソ親父……ッ!


 豪快に笑う親父の隣で母ちゃんが心配そうにこちらを見ている。良かった、母ちゃんがまともで良かった……!ルーナへのフォローを頼むよ、切に……ッ!


 俺は心の中で泣きながら謁見の間を後にする。従者たちが着いてこようとしたが。


「ジェイク様と二人きりがいいのでぇ」


 とかわけ分からん事言って神子が人払いしてしまった。最悪だ。俺が王になったら即刻この国の法律改正してやる。神子の言うことを尊重という名目の元、何でもかんでも聞いてんじゃねーよ……!


 神子は誰もいなくなったのを見て、満足そうに頷いた。


「ふふ、これで邪魔者はいなくなったわ。ね、ジェイク様」


 こちらを見上げる笑顔に、ゾッと背筋に悪寒が走る。


「そ、うですね、神子様」

「やだぁ、なんで脅えてるんですかジェイク様」

「失礼。神子様と並んで歩くなど恐れ多くーーー」

「んなわけがねェだろーがァァアアアー!!」

「ぶふぉオ?!」


 笑顔で対応したはずなのに、突然殴り飛ばされ誰もいない廊下に転がされる。


「は……、え……?」


 訳が分からないまま頬を押さえ、床に這った状態で神子を見上げると、今までの笑顔は何処へやら。彼女は左手を腰に当て、右手の甲で髪を靡かせながら口を尖らせて言った。


「もう最ッ悪!折角神子に転生したから、最推しルート攻略しようと思ってたのに!中身がお兄ちゃんなんて信じらんない!」


 『お兄ちゃん』。

 『転生』。

 『最推しルート』。

 『攻略』。


 まさか。


「お、お前……、俺の、妹……」

「今の私は神子ですぅ」

「嘘つけ!」


 言ってたろ!今、ばっちり言ってたろ!俺のこと『お兄ちゃん』とか言ってたろ!


「つーかなんで俺って分かったんだよ」

「王子にサングラスさせようなんて発想、お兄ちゃんくらいしかしないでしょ」


 そう言えば、俺。サングラスのこと、コイツの前で言ってたんだっけ……。


 もはや立ち上がる気力も湧いて来ない。

 床に肘をつき項垂れていると、不意に靴の爪先でクイっと顎を持ち上げられた。


「てなわけで、いーい?私、これからルークを落としにいくから」

「は?」

「第一王子がダメなら第二王子を落として結婚して、悠々自適な生活を送りたいって思うのは当たり前でしょ」

「え」

「だから邪魔しないでね、『ジェイク様』」


 こちらを見下ろし笑みを深くする元妹、現・神子様。


 ひらりと手を振り去ろうとする彼女の脚に、俺は思わず飛び付いた。


「ちょっ、何よ!?」

「嫌だ!それだけは絶対に嫌だッ!」

「はぁ?!」

「義理とはいえ、今世までお前と兄妹になるのは御免被る!!」

「どういう意味よ、それぇ!?」

「「王子、神子様、いかがなさいました!?」」

「「いや、なんでもない(いいえ、なんでもありません)」」


 騒ぎを聞き駆け付けた衛兵たちを前に、俺たちは即座に持ち直す。悲しいかな。これがかつての兄妹の血。息がピッタリだった。


「神子様、お疲れではございませんか」

「全然元気ですぅ」

「では下の階もご案内致します」

「はい。お願いしますっ」

「お前たちは持ち場に戻ってくれ」

「「わ、分かりました」」


 衛兵たちに背を向け、近くの階段を降りる。周りに気配がないのを確認し、俺は神子に耳打ちした。


「じゃあこうしよう。先にルークを攻略した方が、各々欲しいものを手に入れる」


 俺が勝てば、いつ俺の黒歴史を暴露されるかも知れない恐怖から解放された元妹が近くにいない生活を。

 神子が勝てば、本人が望むイケメンとの悠々自適なラブラブ生活を。


「仮にお前が負けたとしても、将来金に困らない嫁ぎ先紹介してやる」

「乗った」

「どちらが勝っても恨みっこなしだぞ」

「分かってるわよ」


 かくして。

 第一王子(俺)対神子(元妹)。ルーク攻略戦の火蓋が切って落とされた。

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