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アナザーサイド3 不器用な男②

 「俺は今日、大翔との約束を破って女子と遊ぼうとした」


 「知ってるよそんなの」私が応えると「だよな」なんてつぶやきながら、どこか遠いところを見る。


 「私が訊きたいのは、その後の話だよ。なんで今日、光介がひとりでいたのかっていうこと」


 「そりゃ、な」光介は濁すように口をつぐむ。


 「遠慮せずに言ってよ。笑わないし、素直に受け止めるよ。友達でしょ」


 「友達、ね」そう言うと光介はようやくふっと自然体な笑顔を作った。


 「あの女子たちは、俺が振り払った」


 「振り払った……。もしかして合わなかったの?」


 「ああ。合わなかった。というか、俺の思い描いてた遊びとは違ったんだよ。あいつら、何がなんでもすすきののホテルに行きたがるしな。俺からしても、そいつ等なんて別に大した関わり合いも無かったしさ。いきなり身体を求められてもキモいだろ。高校生の背伸びにしか見えんし」


 「と言いつつ、光介は今日、その女たちについて行ったんだよね」


 「確かにそうだな。ただ、単純に女子と遊んで自分の気持ちを満たそうとしたのは間違いないかもな。大翔とはいつでも遊べるし、まあ後回しでいいやと思ったのも事実」


 「だからといって、ドタキャンでチケット代返金できませんはダサくないか?」素直に受け止めると言いつつ、思わず言ってしまう。


 「それはマジで言うとおりだわ」だけど光介はバツが悪そうに呟いただけだった。


 「ただ、そのおかげで咲香たち、ダブルデート出来たのも事実なんだけどね」


 「だ、ダブルデートか……」光介はあからさまにショックを受けたような顔をする。


 「そういえば、光介って中村さん好きだったんだっけ……」


 すると光介は横にフイと視線を反らした。


 「咲香の次くらいかな」


 素直に素性を吐く光介に少し同情しつつ、言葉を続ける。


 「しかし以外だよね。ホント」


 すると光介は私を向くなり軽く溜息をつく。


 「薫風だって人のこと言えんだろ。まさか高崎が好きだなんて思わないわ」


 「なにさ。駄目なの?」


 「別に高崎好きでも良いけどさ……。って良くねえだろ。咲香と付き合ったんだろ。あいつ」


 「そうなんだよなあ。辛いね、光介」


 「もうどうしようもねえだろ……」


 光介はそう言うと、淡々と歩を進める。


 「ねえ光介」


 「なんだ?」


 「今日さ、私は村川に会ったんだよね」


 「村川に?」光介は驚いた顔をする。


 「急に連絡があってさ。大通駅に来いって言われてさ。行ったの」


 「で、どうなったんだ」


 「付き合えって言われた」私がそう言うと、光介は俯いた。


 「で、どう答えたんだ。うんと頷いたのか?」


 私は首を横に振る。


 「断った。タイプじゃないって、素直にそう言った。そしたらさ。ジュースを私に向かってぶちまけてきてさ。ワンピースがびしょびしょになった」


 「は?」光介はそう言うと私を向く。


 「それで明日学校で楽しみにしてるって言われた」私はさっきの出来事を思い出して少し手を震わす。


 「お前。なんでそんなことがあったのに普通なフリしてんだよ」光介は本気で怒っているようだ。道路の端っこで、立ち止まって私にそう言う。


 「怖いけどさ。なんとかするしか無いじゃん」私が強がって言うと、光介は首を捻った。


 「なんとかって、どうすんだよ。不登校にでもなるのか」


 「いいや。でも殺されやしないよ」


 「殺されてたまるかよ。……というかそんな逆恨みでそんなクソみたいなセリフよく吐いたな。あいつ」


 「じゃあ逆に聞くけど、どうすれば良いのさ」


 「それは……」光介はグッと口を噛み締めた。それから光介は何かを閃いたように頷いた。


 「今日は夜まで俺と居ないか?」突然、光介が意味深な発言をする。


 「急になんだ!ワンナイト越そうとでも言うの?」


 「違う違う。作戦会議をしよう。大翔を呼んで」


 「……どの口で大翔を呼ぶのさ」


 「その通りなんだけどさ……。多分、あいつは頭を下げれば乗ってくれる。良いやつだからな」


 「発想がまた……」私は苦笑しながらも、その案に掛けてみることにした。


 「取り敢えず。一回怖いとかそういう思いをチャラにして欲しい。楽しめるときに楽しんでおかないとな」


 「ありがとう」私は頷く。光介はするとラインで大翔に連絡を取る。すると、すぐにラインで返答が返ってきたようだ。


 「8時以降なら良いって。それまでは中村さんとゆっくりしたいって」


 「……泣きそうな顔で言うな」私は軽く光介の頭をはたく。


 「まあ、それまでちょっとブラブラと遊ぼうぜ」


 「そうだね」すると光介はゆっくりと歩き出した。私はその歩調に合わせて歩く。一体どこに行くつもりなんだろう。そんな気持ちを膨らませながら、私達は秋口の札幌の街を歩いていく。

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