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 アケコンを駅構内のコインロッカーに入れてから、僕らは近くのファミレスに入った。そこでは案の定、2×2のテーブル席に案内された。女子組が窓側のロングシートに座ったので、僕と及川が手前の椅子に座った。僕の向かいは咲香だ。


 「中村さん。そういえばさ、昨日ね、私リュウくんの家いったんだー」席に着くなり咲香はいきなりブッコミ発言をした。


 「へえ。もう君たち行くとこまでいってんだね」


 「残念だが、行くとこまでは行ってない」僕はすかさず否定する。


 「あ、そうなの」なんだかつまらそうな顔をする。


 「まあまあ。それでね、リュウくんの家に行ったらビックリすることが起きたんだよねえ。なんと、そこにクリアランドの藤廣さんがきたんだよだよ!」


 「なんで!?」中村さんは驚く。


 「……誰だそれ。ビールの広告大使かなんかか?」及川が不思議そうに訊ねる。


 「失せろよ。クリアア◯ヒじゃないから」中村さんがバサッという。


 「知るか!!」


 「で、なんで藤廣さんが高崎くんの家に来たの?」


 「そ、それがねえ」咲香は昨日の出来事を順番に言った。


 「そ、そんなことあるの?兄弟で……」中村さんは若干引き気味に言う。


 「うん、全然知らなかった」僕は素直に白状する。


 「勿体無いなあ……」中村さんは唖然という感じで呟いた。


 「ホントに勿体ないよねえ」咲香も頷く。そして、ニッコリ笑顔で話を続ける。


 「と、まあそんな感じで、昨日は何も無かったけど、驚きがあったんだよね。……んで、だよ」


 「んで、ってなんだよ」及川が不思議そうに訊ねる。


 「いや。決まってるじゃん。そちらのカップルはどうなんだって」


 「「付き合ってない」」息ぴったりに二人は言う。


 「そーなんだ。じゃあ別に一緒に遊んだりもしてないんだ」


 「いや。第一まだ中村のじいさんの家で和葉に遭遇してから3日しか経ってないんだぞ……」及川が呆れたように言う。


 「確かに。それにしては距離感がすごい近いよね」咲香が納得したように言う。


 「あんたが言うな」中村さんは最もなことを言う。自分で言うのもなんだけれども、僕たちに至っては、カップルになるスピードがハンパ無かったもんな……。


 ♢♢♢


 ファミレスを出ると、僕らは厚別競技場へ向かうことにした。日曜日で、『聖地』厚別での久々の試合、しかも川崎戦ということでかなりの観客が、地下鉄の出口から出てきた。僕と及川は勿論コンサドーレのユニフォームを身にまとっているが、全員が全員着ているわけでもない。だから咲香や中村さんが浮くということもない。


 「というか、なんで厚別が聖地って言われてるの?」咲香が僕を見ながら訊ねてくる。


 「まだ札幌ドームが無かった頃は、厚別をメインでやってたんだよ。その中で、JFLに所属していた1996年から1997年の2年間、厚別では無敗を積み重ねていたんだよ。俗に言う厚別不敗神話」


 「な、なんかスポーツだとは思えないような神々しい話だね……」


 「そして、コンササポが今日、厚別で川崎と対戦するのに異常なほど熱を帯びてる理由は、川崎がライバルであるからだ」


 「川崎が?」


 僕は頷く。


 「川崎はJFL在籍中に厚別で当たったことがある。その試合は後半43分までコンサドーレは1-3で負けていた。しかし後半アディショナルタイムまでに3-3の同点まで持っていった。そして延長戦で、もう一点を追加してコンサドーレは4-3で奇跡の逆転勝利を納めたんだ。しかし最近、川崎はJ1でも強豪といわれるチームになった。2019年のルヴァンカップの決勝では、延長戦でも、勝負が決まらずPK戦の末、コンサドーレは負けてしまった」


 「だよね。川崎強いっていうのは聞いたことあるもん」


 「しかし!!」僕は思わず熱を込めて大声を出してしまう。


 「ビビった!!」咲香挟んで横にいた中村さんが驚く。


 「ご、ごめん。……それでも2022年。川崎とコンサドーレはまた、厚別の地で闘うことになった。この試合でも札幌は後半82分までに2-3で負けていた。しかし、そこでコンサドーレは諦めなかった。同点に追いついたのはつかの間、アディショナルタイムにコンサドーレは逆転のゴールを揺らした。結果的にコンサドーレはJFLの時代と同じく4-3で川崎に勝ったんだ」僕は手をグッと握りしめる。あの時を思い返しただけで胸が熱くなる。だから僕はスポーツが好きなんだろう。


 すると咲香はふと及川の方を見る。


 「ねえ大翔。なんだかさ。やっぱりリュウくんって普通に男の子だと思わない?」


 なんだよその質問は!僕は思わず突っ込みたくなったが、及川は何故か深く納得したように頷いた。


 「きっと、その高崎の兄貴が心配するほど、お前は虚無では無いと思う。その熱い思い、忘れるなよ」


 「ええ……。どういうこと?」


 すると及川は僕の肩にぐわっと腕を回してきた。うん。やっぱりこういうところは、若干リア充っぽいよな、なんて生意気なことを思った。

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