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翌日9時半に東札幌駅で待ち合わせをして新さっぽろ駅行の電車に乗った。大谷地駅には10分程で着いた。
「大谷地駅はあんまり来ないなあ。取り敢えず、そのツ◯モだかが入ってる建物に向かおうよ。どっち?」
「こっちだよ。駅直結だからな」そう言うと僕は咲香を誘導する。その建物にはスーパーが併設されているので、入口の前には主婦っぽい人や、ツ◯モに行くであろう人たちが行き合っていた。その入口の隅に中村さんと及川がいた。
「あ、大翔に中村さん。お揃いで」咲香が言う。
「お揃いでって、普通に別々に来たけど」中村さんは不服そうに言う。それに及川が頷く。
「そりゃあ、俺は北広島市民だからな。一緒に来るのは無理だろ、大体」
「及川ってキタヒロ住んでんのか」
すると及川は頷く。
北広島市は、札幌の隣町。札幌のほぼ東端、新札幌から更に東側に行った所にある。いわゆる札幌のベットタウン的な立ち位置であるが、プロ野球チームの北海道日本ハムファイターズの本拠地『エスコンフィールド北海道』があったり、三井アウトレットパークなどがあり、もはやどっちがベットタウンだよ、みたいな感じになりつつあったりする。要するに、札幌の西側に住む中村さんとは真逆のような場所に住んでいる。普通に大谷地駅現地集合が現実的なのは間違いない。
「というか、なんで俺は和葉と一緒に来る前提なんだ……。お前らとは違うんだぞ」
そう言うと中村さんはウンウンと頷く。息が合ってるのがなんとも言えん。
「そーなの!?でもだって、ダブルデートだって……」
「何が咲香にダブルデートを惹かせてるのかは知らないが、しつこいなあ……」僕が言うと咲香は首を振る。
「単純な話だよ!冷静に考えてみてよ。例えば、今日大翔が気を利かして私を誘ってくれたのは良いとして中村さんがいなかったらどうなると思う?大翔は誘っときながら疎外感ヤバイよね。そこで登場したヒロイン、中村さん。素晴らしいと思わない?」
「はいはいロマンチックロマンチック」中村さんはつまらなそうに呟く。
「なになに、中村ちゃんも嬉しいんじゃない?」
「ねえ、高崎くん。やっぱりコイツ、うっさい人間だよね」
「うっさい人間……」咲香は顔を落とす。
「仲良くしてくれよ……」僕は言った。恐らく、咲香はウェーイとは言わないが、好きな相手には男女関係なくとことんデレるタイプなんだろうな。そんでもって、中村さんは恐らくツンデレだ。文句言いながらもこころなしか楽しそうな顔をしている。
及川が、一度わざとらしく咳払いをする。
「取り敢えず、ツ◯モいこうや。もう10時だ」
♢♢♢
「げえ。こんなにするとは思わなかった」中村さんは展示されているアケコンの値段をみて呟いた。
「いやいや。こんなもんだぞ。もっと安いのは、そりゃあネットで探せばあるだろうけど、ヤワだったり、操作性がクソすぎたりするし」及川が言う。
「ふうん」中村さんは展示されているアケコンのレバーを手でガチャガチャする。
「確かに、高いからかなんか頑丈そう。家庭用だって言うから、もっとポッキリと折れてしまうようなやつかと思ってた」
「雑誌の付録じゃないんだぞ……。まあ、おすすめは今、和葉が触ってたやつだな」
「へえ。これね。有線なんだ」
「まあな。アケコンなんて欲するやつは基本ガチ勢だからな。無線よりも有線の方が遅延なくて良いだろ。和葉がイヤホンで有線にこだわるように、ゲーマーもコントローラーを有線無線で結構使い分けるもんなんだよ」
「へえ、納得」和葉は素直に頷く。
「どうする、これにするか?」
「うーん。でもやっぱり、ちょっと高いからなあ……」
「まあ、半分は俺が払うから、そこは加味していいぞ」
「え、いや。それは悪いし……」
すると及川は手を横に振る。
「いやいや、全然。俺はショーテン・ナカムラにお世話になりきっているからな。半分とは言わずにだすぞ。俺はバイトしてるからな」
「……ホントにこの男は」中村さんは呆れたように呟いた。
「え、なんで俺呆れられてんの?」及川は戸惑ったような顔をする。しかし、中村さんはフッと目を瞑ると、前髪を手で弄りながら、少し恥ずかしそうに「ありがとう」と言った。
「お、おう……」及川は中村さんと同じように恥ずかしそうな面持ちで突っ立っている。
そんななか、咲香は静かに呟く。
「なんだか初々しいなあ」
「確かに、僕と咲香に初々しさはなかったもんね」
「アハハ、そうかも」そう言って笑う。だが、気のせいだろうか?ここ最近、僕らは一周回って初々しい感じになってきている気もする。
「ってことで、ちょっとアケコン買ってくるわ。待っててくれ」及川はそう言うと中村さんと仲良くレジへ向かった。ホントにはたから見るとカップルだな。
そんなことを思って咲香とぼーっと突っ立っていると、後ろから声がした。
「よう、リュウ」
その声に僕は振り向く。
「豪樹と、須藤?」そこには知り合いが二人いた。
「どういう組み合わせなんだ!?」
「どうもこうも、ここ最近、昼休みにコンピュータールームで一緒に遊んでいる友達っていうのが周一のことだぞ」
「そうなの?」全く知らなかった。
「じゃあまさかコンピュータールームのキーボード破壊した1年生って……」
「そうだ。周一のことだ」そう言うと豪樹はニヤニヤと笑う。それから須藤は悔しそうに口を開く。
「でもキーボード破壊したのは、わりかし高崎先輩のせいッスからね」
「どうしてだよ!」
流石に理不尽すぎる。
「まあ。半分は冗談ですよ。それで、高崎先輩には言ってなかったっすけど、ゴウキチ先輩とはゲームフレンドなんですよ」
「ゴウキチって……、ゲーマーネームね」
「そうです」
「しかしまあ、どういう組み合わせだっていうのはこっちのセリフだぞ。中村さんと及川って、全く縁がないと思ってたが……。まさか一昨日同じタイミングで早退したのって……」
豪樹が言いかけるのを、僕は人差し指を立てて制止した。
「……わかったよ」そう言うと豪樹は笑った。




