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 「まさかリュウくんのお兄さんが藤廣さんだったなんてなあ。世間は狭いなあ」


 夕方、咲香は東札幌駅に一緒に向かっている途中、そう言う。


 「兄貴がバンドマンだとはな……。兄のこと、下手したら咲香よりもしらないなんて……」僕は少し自己嫌悪に陥る。


 「まあまあ。これから知っていけばいいと思うよ。そんな気を落とすなよお」そう言うと咲香は僕の背中をバンと叩いた。


 「まあ、そうかな」僕は呟く。


 「そうだよ。それに、別にリュウくんは全く人付き合いがないって訳でもないでしょ。堺くんがいるし、明日は大翔と中村さんと遊ぶし。だから、うん。逆に兄と親のことはしっかりと知っといたほうが良いと思うけれども……」


 「やっぱりそうだよね……」遠回しに怒られてるな、これ。


 ♢♢♢


 咲香を東札幌駅に送って家に帰ると、母親と親父が帰ってきていた。


 「親父、珍しいな」僕が言うと、親父は兄を指差す。


 「だって今日はこいつが帰ってくるらしいって、母さんから招集があったからな」


 「お父さん、こいつと言わないでください」母が怒る。


 「そうか……」僕が呟くと、親父はなぜだかニヤニヤと笑みを浮かべながら僕を見てくる。


 「という隆一はなんだ。今日はカノジョを家へ連れ込んでたというじゃないか」


 「あ、兄貴バラしたな!!」


 すると兄は笑う。


 「いいじゃないか。別に学生がカノジョを家に連れ込むなんて青春の一大イベントのひとつなんだからさあ。因みに俺はしたこと無いけど」


 「そうだぞ、隆一。皆が皆体験できるイベントでは無いんだ。胸をはれ、胸を。ただ、しっかりとコンドームはせえよ」親父がおちょくってくる。


 「そもそもヤってないって!!ああうるさいなもう!!」


 母はなんだかめんどくさそうな仕草をする。


 父は一転真面目な顔をする。


 「いや、ただホントに嬉しいぞ。このままだと隆一はずっと童貞のままだと思ってたからな」


 「いや、まだ童貞だけど……」


 「あー、言い方ミスったわ。そうじゃなくて、こうやってちゃんと人付き合いをしてくれて良かったって。なんでも、そのカノジョさんが、藤廣のファンだっていうじゃないか。巡り巡って兄のライブにも行ってくれるって言うし。親としてはホントに嬉しいぞ」


 「そうか」僕は呟く。


 「まああれだな、お前が楽しめているならなんでも良いんだ。俺等や藤廣と違ってまだまだ人生悩むことができる年齢だからな。基本俺はノータッチだが、なんというか、思ったより楽しそうにやってそうだから安心だよ」


 親父はそう言うと照れたように頭を掻いた。全く、いつも非干渉を貫いている割に、やっぱり子供のことが気になるんだな、とやけに僕は嬉しくなった。


 そんななか、藤廣が口を開いた。


 「ただ親父…。童貞とかそういうことをあんまりしゃしゃるんじゃない。あのさ、母さんそういう話苦手だって知ってるだろう?」


 「なんだ、藤廣。童貞って言葉に引っかかりがあるようだな?まさか25のお前、童貞ってわけではないだろうし、別にそんな歪まなくたっていいじゃないか」


 「……童貞だよ」


 「「え」」親父と僕の声がハモる。


 「だからこそ、俺はずっと曲を作り続けてるんだよ。誰でもいいから俺の気持ちが伝わる人いねえかなあって。それで、彼女をまず作る。それが、今の俺の夢!!」そう言うと兄はグッと手を握りしめた。


 「だそうだ、隆一。自信を持て。お前は男としては藤廣の先をゆくようだ。良かったな」


 「あ、おう……」僕は返答に困りタジタジする。兄貴、頑張れよ……。


 ♢♢♢


 夕食を食べて部屋に戻ると、明日サッカーを観に行くメンツで作ったライングループにメッセージが載っていた。及川からだった。


 『明日は大谷地駅で集合しよう。試合開始は13時だけど、昼ご飯食べたりツ◯モ寄ったりしたいから10時集合で。あと、間違えても厚別競技場だからってJR乗って厚別駅で降りないように。2キロくらい離れてるからな』


 それに中村さんが返事を送っている。


 『えー。私JR八軒駅が最寄りなんだけども。地下鉄で大谷地駅に行くって何回乗り換えしなきゃいけないんですかね。めんどくさ』


 『いや、そういう問題じゃないだろ。というか和葉にはこの前大谷地だって言ったはずだけども……』


 僕は思わず吹き出しそうになる。もうこれ付き合ってるだろ。思わずそう打ち込みたくなるが、なんとかグッと堪える。


 というか中村さんは八軒住んでいるんだな。八軒はうちの高校、即ち中村商店と同じく西区の地区だ。JR札沼線(さっしょうせん)の八軒駅がある。札幌駅から西に2駅と札幌駅に行くには良いが、大谷地に行くとなると札幌駅で地下鉄に乗り換えて大通駅まで行き、そこから東西線にまた乗り換えないと行けないからまあまあ面倒くさい。


 すると、ラインが通知を知らせた。個人宛のメッセージが、咲香から来ていた。


 『あした、東札幌駅で待ち合わせて一緒に大谷地いこー』


 うん。大体予想はついていた。なんだか、徐々に咲香の行動が読めるようになってきたぞ!?

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