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3

 月曜日、僕は教室に入るなり自分の席に座った。それから前の席に座っている男の背中に向かって「おはよう」言う。クラスで一番仲の良い堺豪樹さかい ごうきが振り返った。


 「おう、いい朝を迎えられたかい。リュウくん」


 「何だそりゃ」


 「昨日見たアニメのラストシーンだよ。メンヘラのヒロインが主人公を束縛した挙げ句、睡眠薬を飲ませるんだ。そして翌日、主人公はヒロインの家の地下室にある断頭台に寝かせられていて、そしてこういうんだ。『やあ、いい朝を迎えられたかい』って」


 「何だそれ!怖すぎるだろ!」


 「えー。そそらないか?」


 「唆って溜まるか!」豪樹は少し過激で特殊な性癖を持っている。だが、実際にはというと、別に悪いやつでは無い。


 そんなことを言いあっているいると、「おっはよー」と教室に大きな声が響く。音坂咲香の登場だ。


 おはよーと数人の女子たちが挨拶をし返す。それから、音坂さんは僕の方を見ると、シュッシュッと素早く手を振る。なんか無視したらめんど臭そうなので、取り敢えず片手を挙げて返す。


 「え、なんか音坂さんとあったのか?」豪樹は驚いたように訊ねる。


 「ん、別になんも無いけど」


 「何もなかったようには見えんが」豪樹はなにか探るように訊いてくる。面倒くさ!


 「昨日、リュウくんと一緒に遊んだんだよ」突然横から音坂さんの声がした。豪樹と僕くらいにしか聞こえるくらいのボリュームであった。振り向くとすぐ隣の席に音坂さんが腰を降ろしていた。


 「ヒイ」僕は変な声を出す。


 「なにその悲鳴」そう言いながら音坂さんは楽しそうに笑う。


 すると豪樹は目を細めて不服そうに「バリバリなんかあるじゃんか」と言う。


 「まあ、確かに遊んだ。ってあれ遊んだっていうのかな?」僕が音坂さんに言うと、音坂さんも不服そうに目を細める。


 「君は一緒に買い物をして食事をしたことを遊んだとは言わないの?」


 「まあ、言うか……」僕が言うと音坂さんは笑った。


 「まあ、そうだよね、うんうん」音坂さんは勝手に納得すると自分の席へ向かっていった。やっぱりどこでも騒がしいな、アイツ。


 「ふむふむ」音坂さんがいなくなるなり、豪樹はなんか真顔で僕を見つめる。


 「なんだよ」


 「音坂さんと休みに遊ぶとはね。遂にリュウも青春謳歌勢になったか」


 「いや、ただ偶然街なかであったから、ついでにってメシ食ったりしただけだよ」


 「そうかいそうかい」豪樹は何故か笑いながら言う。


 「なんで笑うんだ」


 「いやいや、だって偶然街なかであったからっていっても、異性同士で『それじゃ一緒に飯にしようか』って、それかなり仲良しだと思うぞ。いや、俺もパリピの思考回路とか全然知らんけど」


 「まー、僕も知らんけど」そう言うと僕も笑った。


 「けどさ。なんで音坂さん、ナチュラルに龍一のことを『リュウくん』て呼んでんだ?そうやって呼んでるの、俺とかあと陸部りくぶのメンツくらいだろ。クラスメイトなんて大概『高崎くん』か『龍一くん』って呼んでるだろ」


 「ん、確かに。昨日出くわした時点でナチュラルにそう言ってたな」


 「ホー、それはそれは」豪樹はなんか興奮したように言う。


 そう言えばそうだ。昨日はエロい雑誌を音坂さんに拾われるというえげつないイベントから始まってしまったせいで、はじめから音坂さんが『リュウくん』呼びだったのをあまり意識していなかった。うむ、これは逆に意識すると確かに不可解だな。これはどう受け取ればいいんだべ。


 「ま、まあ豪樹。あんまりこれ以上音坂さん絡みのことを話さんでおいてくれ。日曜に二人で食事行ったなんて、クラスのリア充にでも伝わったら殺されかねない」


 「まあ、わかったけど、それは恐らく音坂さんにも伝えたほうがいいぞ。今はまだ音坂グループのメンツが学校に来てなかったから別に注目も浴びなかったが、さっきはおもくそあっちから絡んできよったぜ。音坂グループのいる状況で仮に絡まれたら……」


 「た、確かに」早いうちに言わないといけないな。どっかのタイミングで音坂さんと喋れれば良いけども……。

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