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 土曜の昼間ということもあって、新さっぽろ駅行の電車内は混んでいた。ただ、大通駅でガッツリと人が降りていった。なので、もうあと3駅で東札幌駅であるが、僕らは席に座った。


 「やっぱり地下鉄通学も疲れるねえ」咲香はため息混じりに呟いた。


 「それはしょうがない。だって僕らが高校にチャリで行くのはキツイだろ。いや、距離的には大したことないかもしれないけどどう足掻いても札幌の都心部を通らないといけない。とてもじゃないが時間がかかり過ぎる」


 「だよねー」


 そう。咲香にしろ僕にしろ、札幌都心部から見ると東側の人間なのである。高校がある西区に行くには、中央区を通らないといけない。自転車通学するには、ちょっと人が多すぎて難易度が高い。最短距離で行くなら大通近辺を通らなければいけないし、中央区に入ってから大通手前で北上して一旦北区を通って行くという手もあるが、北区方面には札幌駅がそびえている。人通りという点では、下手すれば大通よりも多い。それより外を回るとなるとあまりにも遠回りすぎる。じゃあ南下して大回りすればいいじゃん、と感じるかもしれないが、南は行けども行けども住宅街が広がり、とても混雑している。地下鉄南北線と路面電車が並走しているレベルだし。


 まあ、そういうわけで、地下鉄通学をしているのである。第一、冬は自転車乗れないわけだしね……。


 「でも、そう考えるとやっぱり私達って札幌南高校とか、東高校とかに入ったほうが良かったよねえ」


 「そんな頭脳があったのか?」


 「無いからわざわざ東の人間が西に来ているんじゃないですか?」


 「その通りです。はい」僕はコクリと頷いた。


 ただ、僕は西側の高校に来てわかったことがある。東の人間は札幌の西側を全く知らないのだ。札幌駅の西側には、競馬場と中央卸売市場があって、それより先には小樽まで街がない……。少なくとも僕はそう思っていた。だから、西区の琴似という地域も、名前は知っているがそんな栄えていると思っていなかった。だが実際は札幌の中ではすすきのに次ぐレベルの大きな歓楽街が形成されていて、僕は勝手に『負けた』と思ったりしていた。僕住んでいる白石区では敵わない、と。


 それに……。


 「でも、西区の高校に行って良かったって思うこともあるよ。ほら、だから咲香に会えたじゃん」


 僕がそう言うと咲香はカッと赤面をして手元にあった僕の手を握りしめると小さな声で呟く。


 「ホント、リュウくんはそういうことを恥ずかしげもなくスルスルと言えるよね。やっぱりズルい」


 「あのさ。その点に関してはドッコイじゃないかなあ……」アンタの言葉で、僕は赤面したり蒼白になったりを繰り返しているんだからな……。


 ♢♢♢


 東札幌駅で降りると、僕らは改札を抜けて地上へ上がった。


 「東札幌は私、結構来るんだよねえ」咲香はうれしそうに言う。


 「え、そうなの?」


 そう言うと咲香は頷く。


 「だって地味に何でもあるからね。イオンもある、ラソラ(旧イーアス札幌。イーアスつくばとほぼ同時期にオープンした)もあるし。ちょっと歩けばツタヤもあるし」


 「まあ、住むのにはなんにも不便ないな。強いて言うなら、さかいコーヒーやコメダコーヒーがあるのにスタバが無いこととかかなあ」東札幌はおろか、白石区には21万人も住んでいるのにスターバックスがわずか1店舗しか無い。


 「あー。確かにこの辺全然スタバ無いよねえ。ツタヤで買った本とかCDの開封式は大概スタバでやるんだけど、東札幌に来た時はラソラでやってるもん」


 「ま、マジか」僕は咲香の発言に驚いた。


 「え、何?買ったものの開封式の習慣が無い人間なの?」


 「違う。真逆だよ。その店の回り方、僕も良くやってるんだよ」


 「え、そーなの!でも一回も会わなかったね」


 「いや。会ってたかも知れないけれど、気が付いてないだけじゃないかな?咲香って、まあ僕と同じだから、店でコーヒーとか飲んでなんかやってるときって、熱中しすぎて店にいることを忘れちゃうタイプだと思うんだけど」


 「そうだね。うん。知らぬ間にすれ違ってる可能性あるねこれ」咲香はなんだか残念そうに言う。


 「まあ、それはもうどうしようも無いけれども……。取り敢えず、今のことを考えよう。なんかお昼でも買って行こうか?」


 すると咲香はコクリと頷いた。


 「そうだね。なんかサクッと食べれるのが良いなあ。あー、ハンバーガーとか」


 「ハンバーガーね。了解」そう言うと僕らはすぐ近くのイオンに駆け込んで、ハンバーガーを買った。咲香、ハンバーガー好きだな……。


 因みに東札幌にはマクドナルドも無い。あるのはモスとロッテリア。なんでその2つがあってマクドナルドが無いのかは謎。ホントにこの街はなんだかひねくれてる感じがする。


 ♢♢♢


 東札幌の商業区域から少し外れると、閑静な住宅街が現れる。戸建てや小さなアパートが小さな道路を挟んで所狭しと並んでいて、道幅の広い場所の多い札幌にしてはかなり建物の密度が高い。


 その中に紛れ込んだ、15階建てのマンションが僕の住んでいる場所だ。僕たちはそのマンションを見上げる。


 「結構いい場所にあるね。地下鉄も近いし」


 「中央区で大通徒歩圏内の人には敵わないから」


 「いやー。別に都会だからいいって訳でもないよ。ここはホラ、なんというか下町感があってさ、気分が落ち着くんだよね」


 咲香は言う。確かに、東札幌は大きな商業施設が2つあるが、その周りには個人の商店や、喫茶店などが集まっている。そんなゆるりとした風情は、ずっとここに住んでいる自分でもかなり気に入ってるところだ。


 「落ち着く、か」僕は呟いた。


 うん。全く落ち着かねえぞ……。

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