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 「それで、厚別にいく理由が、サッカー以外にもあってね」


 中村さんはもう一度話を仕切り直す。咲香が及川の話をした時のあの顔……。もうしっかりとこの子は意識しまっているようだ。それじゃあもう殆どダブルデートって言っても過言では無いのでは……。


 「って高崎、聞いてんのか」唐突に中村さんが僕の頭をチョップしてきた。


 「痛い!」僕がそう言うと中村さんはニッコリと笑ってきた。体罰教師かな?


 「そ、れ、で。厚別に行く理由ってサッカー以外じゃなくてね。厚別競技場の最寄り駅が地下鉄の大谷地駅なんだけども、その大谷地駅直結の商業施設になんか結構ゲーミング機材が売ってる店があるんだって。なんて言ったっけ……、つ、も……?」


 「あー、ツ◯モか!」ツ◯モといえば日本の所謂5大都市にそれぞれ1、2店舗ずつあるパソコンショップだ。福岡なら天神、大阪なら日本橋、名古屋なら久屋大通近辺、東京ならそれこそ秋葉原と、日本でも名の知れた街中にあるイメージがある。しかし札幌のツ◯モだけは中心部から数キロも離れた大谷地にある。PCオタクはわざわざ札幌駅近辺のヨ◯バシやビ◯クカメラ、ド◯パラなどを探索したあと、なにか足りなければ地下鉄を乗り継いで、僕の最寄り駅、東札幌駅近辺のローカルパソコンショップD○OMか、大谷地までいかないといけない。因みに大谷地とは咲香と遭遇した新さっぽろ駅から東西線に乗って西に2駅。大通駅からだと東に8駅のところにある。


 「でも、なんでツ◯モに?」僕が訊ねると、中村さんはえーとね、と言って喋り始める。


 「さっき話した通り、うちのじいちゃんと及川くんって、仲いいんだよ」


 「うん。正直意味がわからないけど、わかったよ」


 「それでさ、今度じいちゃんが誕生日なんだけど、じいちゃんってゲーム好きだよ。だからアケコン?ってやつをプレゼントしたいなあって及川くんに相談したんだよ。それなら大谷地に行こうって話になったの。どうせならサッカーの試合も観ないかって誘ってくれてさ。ん、まあ、及川くんなら良いかなって思ったわけで……」すると中村さんは少し横に視点をずらしながら言う。


 「それで、ダブルデートっていう……」咲香は我慢ならなかった様子で呟くと、中村さんはギロリと咲香を睨んだ。


 「うるさい!!」


 もう、彼女には反論の言葉が出てこないようだった。


 「やっぱり中村さん、私に当たり強すぎる!!」咲香は今まで見たことがないような小さな姿になって僕にくっついてきた。女子同士の力関係って良くわからないな。



 「で、なんで大翔は休んだの?仮病のはずがホントに熱が出ちゃったとか?」話の流れの中で、咲香は訊ねた。すると中村さんは少し気まずそうに呟く。


 「うん。今朝、登校してきた位の時間にラインで連絡が来てて、及川くん自身はそんなことを言っていた」


 でも、と小さく言う。


 「恐らくそれは嘘だと思うんだよね」


 「嘘?」僕が訊くと中村さんは頷いた。


 「私さ、昨日結果的に及川くんと一緒の時間帯に下校しちゃったわけじゃん。ていうことは、物凄く私って今、不審な状態なんだよ。下手したら及川くんに片想いしてる馬鹿な女とかがさ、もしかしたら私と及川くんが仲いいんだなって怪しまれるかもしれない。そうなると、恐らく私がヤな目に合うと思ったから、熱が出たって嘘をついたんだと思う。そうすれば、及川くんは熱を出して休んだけど、私はいつもみたいに気まぐれで下校しちゃったんだなって、そう思わすことができるから……。だからきっと及川くんは今日学校を休んだ」


 「うーん。どーかなあ」咲香は首を捻る。


 「単純に今日は休みたかっただけじゃないかなあ?」


 「いや。あのお節介な男のことだから、きっとそう思って行動したに違いないと思う」中村さんは少し暗い顔をしながら言う。


 「だとして、だよ。そんなのは大翔が勝手にやったことじゃん。そんな暗い顔しちゃ駄目だよ。だって大翔がそれを望んだんだから。だとしたら、もうありがとーって受け入れるしか無いでしょ?」そう言うと咲香は、笑った。


 「音坂さん」そう言うと中村さんはフッと笑った。


 「ありがと。そう捉えておくよ」


 「そうだよ。もし、大翔と私の感性が似てるって言うなら、そういうのを気にされたほうが滅入るよ。うん」そう言うと何故か咲香は、中村さんの頭をぽんぽんと撫でた。中村さんは驚いた顔をしながら咲香の顔を見る。


 「な、なんのマネ?」


 「いや、うん。正直さあ、中村さんって物凄く素直で可愛いなあって」


 「げえー。言ってることババアかよ」そう言うと中村さんはしかめっ面をする。


 「ば、ババア……」そう言うと咲香はがっくりと頭を落とした。このくだり、これからずっと見ないといけないのだろうか?

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