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22

 「どうしたの」僕が訊ねると、中村さんは淡々と喋り始めた。


 「日曜日、厚別行くんでしょ?」


 「あ、うん。及川と一緒にだけども」何故か咲香と喋るときより緊張しながら言う。横から怪訝そうな顔で覗いてくるカノジョがいる。やめてくれ。


 「音坂も来ればいいって言ってたよ」


 「え?」


 「それは……」それはどういうことだろうか?及川が咲香にやっぱり好意を持っていて、その鬱憤を晴らすためなのだろうか?慎重に解答を選ぶ。


 というより……。


 「と言うか、なんで中村さんが及川の伝言を受け取っているの?」


 そう言うと中村さんはしかめっ面をする。それから小さく参ったな、と呟くと小声で喋り始めた。


 「あのさ、高崎くんも音坂もこの話、内緒にしてほしいんだけど、良いかな?」


 「わかった」僕は頷いた。


 「わかった。けどなんで私だけ呼び捨てなんだろう……」捨て猫のような顔をしながら言う。


 「いや、実は私、結構及川くんと気が合ってさ、厚別に一緒に行かないかって誘われたんだよ」


 「え、そうなの?意外だなあ」音坂さんが言う。だが、僕にはそこまで意外性を感じなかった。


 「うん。取ってた2席の両横にそれぞれ空席があったからって。それで、それなら音坂もくればいいじゃんって話になったんだけども。ほら、高崎くん達、付き合ったばかりでしょ?だから、まあ初の休日を及川くんと私で奪うのは心苦しいって」


 「そ、それは即ちダブルデートってやつ!?」音坂さんが少しウキウキした感じで言う。


 「キショ」すると中村さんは突然暴言を吐いた。


 「「キショ!?」」思わず僕らは訊き返す。


 「あ、いや。私こういうキャラだから、なんというか気にしないで」中村さんは少々申し訳無さそうに言う。


 「それはなんというか、ロック系と言うか……」僕が呟くと、中村さんは少し考えるような顔をして、また口を開いた。


 「まあ……。確かにライブハウスはよく行くけれども……。ほら、いっつも席でイヤホン付けてるのって、大概インディーバンドの音源なんだ。ランダムで流してるとたまーにピンと来るのがあって『コイツ良いじゃん!』てそんなことを思いながら、楽しんでんだ。それで良いなって思ったバンドが札幌でライブやるってなったら、できる限り行ってる」


 「ゴリゴリにロック系だ……」僕はそう言いながら考える。確かにはたから見たら、中村さんは寡黙だし、一人ぼっちなような気がする。けれど実際は違って、その時間というのは中村さんにとっては楽しみのひとつなんだ。


 「それは、物凄くいい趣味だと思う」そう呟いたのは咲香だった。


 「え……?」中村さんは突然の咲香の肯定に首を捻る。


 「だってそれは、なんていうんだろう。人に縛られてないっていうか。そう!人に合わせないで、自分の好きだけを追いかけられるっていうか……。私もたまに一人でライブ観に行くからさ。わかるんだよ……。私、こう見えても一人でいるのが好きだからさ」そう言うと微笑んだ。すると中村さんは一瞬驚いた顔をしたが、いくぶんかして、微笑み返した。


 「やっぱり、音坂さんってウェーイ系って訳では無かったんだね」


 「第一ウェーイって言ったことなんて無いけどね?!」咲香はオーバーなリアクションをして言った。


 「まあ、それはどーでもいいや」突然中村さんはツンとした態度をとる。


 「リュウくん、この子難敵すぎる!」小さな声で言ってくる。


 「ハハハ。でも音坂にさん付けで話し始めたよ。ちょっとは心を開いてくれたんじゃない?」そう言うと、中村さんはニヤリと笑った。


 「さんのある無しの基準は、私に害があるかないかって話だよ」


 「私って害だったんだ!」がくんと項垂れる咲香、面白そうにする中村さん。もうこれ仲良くなってないか……?


 「……というよりも、音坂さんに害が無いってのは昨日から気がついていたんだよ」


 「昨日から?」


 すると中村さんは頷いた。そして、昨日及川と何があったかをざっくりと説明してくれたのだった。


 「そんな話の中で、及川くんは音坂さんを自分と同じで、高校デビューをしてしまったせいで、今のメンバーから抜け出せなくなってしまった人間なんだろうってことを話してたんだけど」


 「大翔がそんなことを言ってたの?」


 すると中村さんは頷いた。


 「だからこそ、及川くんは思ってると思うんだよね。『音坂さんが高崎からと付き合って良かった』って』」


 すると咲香は少し体を固まらせる。それから、ゆっくりと笑うと、自虐的に呟いた。


 「私って、大翔のこと全然知らなかったのかも」


 「うん。だから及川くんは音坂さんに片想いされていると思われてるのはめんどくせえって言ってたよ」


 「す、素直だね……」音坂さんは少しピリピリ震えてる手を引っ込めて小さく息をついた。それから、少し嬉しそうに喋った。


 「でも、良かったなあ。大翔って私と同じタイプだったんだ。ずっと孤独の戦いだと思ってたから嬉しいなあ。……ってなんで!?なんでリュウくんと中村さん怒ってるの?!」


 怒ってるつもりなんて微塵もないのだが、なんかこう、感情が顔に出てしまったらしい。反省反省。

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