表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/38

19

 「す、須藤くん!?」須藤はゼーゼー言いながら桜木さんの前に来た。


 「な、何で姫華、そんな寂しそうな顔してるんだよ。工藤先輩みたいに言葉のナイフで刺せよ。先輩を。その権利が姫華にはある」


 「え……」桜木さんは明らかに戸惑ったような顔をする。


 「好きだったんだろ?高崎先輩の事が」


 「え、知ってたの!?」桜木さんは……、いや、僕も驚いて目を見開く。


 「知ってるさ。知らんのはこの鈍感な先輩ぐらいだよ」


 「そ、そうなんだ」桜木さんは戸惑いながらも応える。「でも、なんでそんなに須藤くん、必死なの?」


 須藤はそう訊き返され、「参ったな」と呟く。しかしやがて意を喫したような顔をして、口を開いた。


 「……高崎先輩は間違いなく鈍感だけど、姫華も同じくらい鈍感だと思う」


 「……どういうこと?」


 「俺は単純に、姫華に幸せになって貰いたいと思っていた。だから、姫華が高崎先輩のことを好きだっていうのに気がついてから、それならこの恋が実ればいいなあって、そう思ってた」


 「どうして……、どうして須藤くんはそんなことを思っていたの?」意図が全くわからない様子で、桜木さんは立ち上がるなり須藤に迫る。


 「俺だって良くわからないんだよ」須藤はそう言うと、顔を上げて、桜木さんの顔を見据えた。


 「俺さ、姫華が高崎先輩のことを好きだって気がつく前から、そして気がついた後もずっと」そう言うと須藤は言葉を切らす。それからすうっと息を吸うと、はっきりと言い切った。


 「君のことが好きだ」


 須藤は言い切ると近くの草むらに腰をおろした。


 「す、好きだって……。須藤くんが、私を?」全く状況を飲み込めずにいる桜木さんは目を泳がし続ける。


 「姫華は君しかいないだろ。ま、いわゆる片思いって奴だよ」


 「片思い……」桜木さんは首を捻る。まあ、戸惑うのはしょうがない。須藤と桜木さんは全然違うタイプだからな。須藤が所謂陽キャ、と区別するまではいかなくても、桜木さんと比べたらかなり陽側であるのは確かなのだ。なんせ事実上、桜木さんは僕と陰キャ同盟を結んでいたようなものだからな……。


 桜木さんは、困った顔をしたまま口を開いた。


 「ごめん。そんな気持ちに私、全然気がついていなかった。でも、いま好きですって言われても、まだ私良くわからない」


 「いいよ。別にそれは。俺が好きだって言うのは忘れてもらって構わないから」


 須藤がそう言うと、桜木さんは「それは出来ない!」と彼女にしてはかなり力強い言葉で反応した。


 「人から好きですって言われるのさ、初めてだから……。それをハイと忘れることなんて出来ないよ。それに、片思いが苦しいって言うのは、私も痛いほどわかるから。だから。あのさ。ちょっと……。須藤くんはしばらく私を見守ってくれると助かるな……」


 すると須藤は驚いたような顔をすると、勢い良く立ち上がり喜々としたように応える。


 「それは、勿論喜んで引き受けるよ」そう言うと須藤はニコリと笑った。しかし、すぐにその笑顔を歪めた


 「……やば」須藤はそう言うと、また草むらに座り込んだ。


 「め、目眩が……」


 僕は軽く突っ込む。


 「そりゃ、走り終わって飲み物もまともに飲まず、立ったり座ったりしてたらそうなるよ」


 「そりゃ、そうか……」


 「いいよ、それじゃ僕のスポドリ、飲みかけだけどあげるよ」


 「すみません。あざます」そう言うと、須藤は僕のスポドリのペットボトルのキャップを開けると、グビグビと飲み始めた。そこで僕はハッと思い出した。


 「あ」僕は桜木さんを見る。「忘れてた」


 すると桜木さんは少し微笑むと首を横に振った。


 「良いですよ」そう言うとなんだか楽しそうに須藤を見ながら言った。


 「須藤くん。それ、私が口を付けたやつだった!」


 そう言うと須藤はペットボトルに口をつけながら、みるみる顔を赤くしていく。


 ホントに、桜木さんの事が好きなんだな。……僕が言えることじゃないけど、頑張れよ。須藤。


 ♢♢♢


 陸上部は、結局河川敷で解散となった(荷物は持ってきていた)。そのため流石に今日は音坂さんとは一緒に帰れないと思っていたが、練習が終わった時に、河川敷の上を走る橋の上から「リュウくーん!!」という声がした。橋の方を見なくてもわかる。その声の主は音坂さ……、咲香だった。


 「なんでいるのー!!」僕は大声で返答する。


 「すぐそこー、バスセンター!!」


 音坂さんがそう言う。そうだった。ここは音坂さんの家の近所だった。僕はみんなに挨拶をしてから、自分のリュックを背負って、橋の上までかけていった。


 「お疲れ」咲香はそう言うと飲みかけのスポドリを僕に渡そうとしてくる。


 「お疲れ……。ってもうスポドリはいいよ……」僕は全く事情を知らない咲香の手を押し返した。


 「予想してた反応と違う!!」咲香はややショックを受けたように声をあげた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ