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 向かい合わせの4人掛けのテーブル席に僕らは向かい合って座る。間もなく店員が来ると僕らはウインナーコーヒーとパスタをそれぞれ頼み、それが届くなりいただきますと言った。


 「それじゃ、音坂さん。申し訳ないけどさっきの話、もう一回整理してほしい」


 「うん。分かった」そう言うと音坂さんは軽く息を飲んだ。


 「リュウくんってさ。正直自分は他人からそんな好かれるタイプだと思ってないよね」話を整理してほしいといったはずだが、音坂さんはいきなり僕への質問から始めた。


 「ん、まあそうだけど」素直に応えると音坂さんは苦笑いする。


 「それ、大間違いだから。おそらく、女子からの好意的な意味でいうと、村川とかよりもリュウくんの方が全然人気ある」


 「村川より……。流石に冗談だろ」村川はスクールカースト、って言うのは駄目なんだな。まあそれに準ずる者のトップである。音坂さんから言わせると思っちゃってる(・・・・・・・)人物、というべきなのだろうか。だがしかし、村川の周りにはいつもコバンザメのように女子が群がっているから、決してモテてないはずは無い。


 「冗談じゃないよ。村川と良くつるんでる女子、あの福田っているでしょ?遠くから見てたら福田って村川のことが好きそうじゃない?でもこの前、教室で女子だけで喋ってる時に、その福田が『村川と付き合う?無い無い。このクラスで付き合いたなあ、ってのいないよ。え?強いて言えばって?うーん。強いて言えば高崎。案外悪くはない』的なことを言ってたからね」


 「嘘だろ……」福田って言っちゃ悪いけど苦手なタイプだぞ。実際僕のどこがいいっていうんだよ。


 「いや。ホントだよ。だから私もうかうかしてられないなあなんて思ったりしてたしね」


 「その言い草だと、結構前から音坂さんは僕を狙ってたような感じだけど」思わず指摘すると、音坂さんは下を向く。


 「うん、まあ。まずはしっかりリュウくんと喋ってから、と思っていたのは確かだよ。でもやっぱり。私はそもそもリュウくんが好きだった。陸上部、ひたむきに頑張ってる姿とか、優しいところとか。既にそういうのでやられてたよ」


 「うん、そうなんだ。ありがとう」やはり僕は、陰キャ、スクールカースト下部だと自負してきただけあって、人から好かれているということに全く実感が湧かない。告白されて、それに良いよと応えた事実さえも、未だになんだか上の空なのだ。


 「それで、うちのクラスにはリュウくんが好きな人がいるって言ったけどさ。誰だかわかる?」


 「正直全く分からないけど」そう言うと、まあそうだよね、と呟いた。


 「隙華」


 「え?」隙華といえば、豪樹が片思い(いや、蹴って貰いたい?)しているという青野さんのことだ。いつも長い髪を靡かせ、もうプロのモデルですと言ったら誰も疑わないようなスタイルを持ちながら、口数が少なくミステリアスな雰囲気を醸し出す人だ。


 「今日ね、物理の授業のとき、隣の席なんだけど、小声で喋られたんだよ。『音坂さん、あのさ、もしかしてだけど高崎くんと付き合ってるの?』って。今朝私がリュウくんに手を振ったり、この前リュウくんの机の前に行って話しかけたりするの、見てたみたいでさ。それで私は『別に付き合ってないよ。話はするけど』て応えたんだ」


 「うん」


 すると音坂さんはただでさえ下を向いていた頭を、また更に落とす。


 「そしたらさ『そうなんだ。私さ、高崎くんのこと、好きなんだけど。』って。私、青ざめてしまって」


 「うん」僕は相槌を打つことに専念する。


 「だから私さ。もうなんとしてでもリュウくんと付き合いたいってなって。今日ね、あんな形だけど好きって言った」


 「うん」


 「私って、ズルいよね。これじゃ」自戒するかのような、呆れた顔で音坂さんは言う。


 「いや。それは違うよ。だって間違いなく、僕はこの数日で音坂さんを知って、好きになったんだから。それに」


 「それに?」


 僕は何を言おうか悩む。だが今、音坂さんは素直に色々と曝け出してくれたのだ。自分は酷い奴だと、きっと意味のわからない罪悪感を抱いている。なら、僕も素直に言うしか無い。


 下ネタ好きの音坂さんへ。


 「僕も昔から、君を見ていた。君の素脚でしごかれたいとか、ムッツリな妄想をしながら」


 「ふ」すると音坂さんさんはフフフ、と笑い始めた。


 「あーあ、リュウくんぶちまけちゃったねえ。その発言、チャラには出来ないよ」そう言うと音坂さんは手を伸ばして僕の頬を突いてくる。


 「ちょっと力強い。というかここモロ公共の場だらね」そう言いつつ、僕は触られるがままになる。そう、音坂さんはそうでなくては。僕も音坂さんのように笑みを浮かべた。


 そんなときだった。僕らが座る4人掛けのテーブルの前で、誰かがピタリと立ち止まったのだ。僕は店員かな、なんて思いながら、その人物を見上げる。その人物を見て、僕は「あ」と声を出した。音坂さんに至っては、なにも反応できず、その場で固まってしまった。


 そこに立っていたのは、青野隙華だった。

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