38冊目
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人が不自然に吹っ飛ぶのを初めて見た。
「ハルちゃん、大丈夫か?」
「ハルちゃん!」
心配して駆けつけてくれたロンドとロゼッタに、怪我がないようで、ハルはホッとした。
「何ともなく大丈夫です」
「‥‥‥‥‥‥うん、そのようね」
ロンドが意識のない男を、手持ちの物で拘束した。あの布や紐はどこに用意していたのだろうか。男は目隠しをされ、口と足、後ろ手に縛られている。指先までしっかりとだ。
怪我人なのに大丈夫だろうか。やり過ぎではないだろうか? そう思ったハルの顔を見て、ロンドが苦笑した。
「ハルちゃんが心配することじゃないよ。魔法を使われたら危険だし、自死されても困る。大きな音だったから、見回りの夜警隊が来るはずだが、このまま引き渡してもいいものかな」
「やっぱりちょっと音が大き過ぎるわよね。ユーゴが勝手に実験した時に考えるべきだったわ。こっちの心臓にも悪いわよ」
「音の調節は難しいんだが‥‥‥」
やはり、この窓もこの夫婦が‥‥‥。あの日、父が窓を割ったのは実験だったのだと知った。
近隣の人は夜警隊が来るまで様子を見ているのか、出て来ることはなかった。危ないので、その方がこちらとしても助かる。
ジュード・グレンならば、この後、どうするだろう。
そう思った時に、匂いがした。近くにいると思った。
ハルは階段後ろの物置からバケツを持って来て、窓テーブルに置いた。
「風でガラス片を集めて、この中に入れてもらえますか?」
「「‥‥‥?」」
ハルが呟くように誰に言ったのか、ロンドとロゼッタは戸惑ったが、すぐに通りに散ったガラスが集まって、窓からバケツに流れるように入った。ハルは「ありがとうございます」と微笑んだ。
二人はこの風魔法で、ジュードが近くに居るのだと気がついた。隠れて出てこないのには理由があるのだと思い、何も言わずに見守った。
「修理魔法が使えるのは、本だけではないんですよ」
ロンドが窓枠を取り外しにかかると、ロゼッタは熱に強い敷物と接着液を取りに自宅へ戻った。ハルは、手元灯をあるだけ集めて明るくすると、やがてロゼッタが戻ってきて、店内の床に敷物を広げ、ロンドが厚手のグローブをして窓枠を置くと、大きなガラス片から並べていった。細かいガラスは流し込むようにした。隙間をロゼッタが接着液を流し込み、ロンドが熱魔法で平らにした。夫婦が下がるとハルが「ありがとうございます」と、前に出る。
外が騒がしくなった、見回りの夜警隊が来たようだ。ロンドが対応するために外に出た。手には小さな紙があったが、すぐにポケットに入れていた。
ロゼッタが閉められた扉の内側に立って見守る中で、ハルは魔法に集中することにした。
「修理魔法」
ルークから借りたバングルがあるので魔力量の心配もなく、猫の書の修理を続けていたことによる経験値で、難なく窓ガラスが修理されていった。ロゼッタに褒められて、ハルは嬉しそうに笑った。
「『爆音』は後で抑える事を考えるとして、元の通りに『破壊返し』をするわ。まあ、これだけの騒ぎになるとわかっただろうから、もう窓を割るなんて考えないでしょうけど」
「そ、そうですよね」
あれは『破壊返し』だった。壊す勢いによって自分に跳ね返るのだ。
「あれ?父は怪我してなかったですよね?」
「あら、小さかったのに覚えていたの?ユーゴはしっかり防塵防風効果のある布を被っていたのよ。ひっくり返ったけど」
「そうでしたか‥‥‥」
困った人だが、やってみたくなる気持ちもわかる。まあ、今回のことで、ハルにはそんな気持ちはもうなくなった。
「失礼」
「お怪我はありませんか?」
窓から声をかけられた。落ち着いた雰囲気の夜警隊の男性と女性の声だ。
「あ、はい!ありません。いつも街の見回りをしてくださって、ありがとうございます」
「いえ、そんな‥‥‥」
「‥‥‥これが、我々の仕事ですから」
男性は俯き、女性は戸惑った様子でハルを見た。
「あの‥‥‥窓は?」
「修理も終わりましたし、後は嵌め込めばいいだけですから、問題ありません。被害は窓だけでしたから」
「え?あの音で、窓だけ‥‥‥?」
驚愕で目を大きく見開いていた。
「はい、窓だけです」
「‥‥‥そ、そうですか。‥‥‥では、被害届は?」
「それは‥‥‥どちらかといえば」
被害者はあちらでは?と思ったハルに、ロンドが「あー」と言った。
「近隣の皆さんの心配もあるだろうから、窃盗未遂の不審者として扱ってほしい」
「見回りの強化をお願いするわ」
ロンドとロゼッタが間に入った。夜警隊の二人は「では、そのようにします」と、倒れた男を男性が担いで引き上げて行った。
ハルは、夜警が来ても古書店の中から出なかった。今夜は誰が来ても出ないと、ジュードとの約束だったからだ。
ふと、温かく包まれたと感じたが、温もりはすぐになくなった。
ロンドが窓を嵌め込んでくれた。ロゼッタが外から魔法をかけているのを、ハルは、古書店の中から見ていた。
ハルの手には、いつの間にかメモ用紙があった。
今夜は帰れないかもしれない。
すまない。
先に寝て休んでいてほしい。
光の粒はロス夫妻と楽しんでくれると嬉しい。
果実酒は、また明日に。
「はい、そうします」
少し残念だが、助けに来てくれた親代わりの二人と、楽しもうと思った。ロンドが持っていた紙も、ジュードが渡したのかもしれない。夜警隊への対応を伝えたのだろう。
あの温もりはジュードだ。出て行く時にハルを包んでくれたものだった。
窓を完璧に戻した二人が、扉から古書店に戻ったのでお礼を言った。
「ロンドさん、ロゼッタさん、本当にありがとうございました。ホットココアを入れますから、飲みながら一緒に光の粒を見てくれませんか?」
ジュードは今夜戻らないのだろう。二人は頷いて、久々に娘同様のハルと並んで丸椅子に座り、光の粒を見た。
ハルが、トラ様が棚の上で勇者のポーズをした時の話をしたら、二人は腹を抱えて笑った。
* * * * * * * * * * *
「情けない、ただの古書店の女と油断したか?」
「‥‥‥」
拘束された男を担いで走る夜警隊の男からは、怒りがみえた。担がれた男は目を覚ましていた。目隠しをされ、口も塞がれていた。手足も自由に動かない。
「お前もだ」
同じ隊服の女が、緋色の瞳を伏せた。もうずっと走りっぱなしで体力の限界だったが、隣の男に付いて走る。
女は先程、古書店のハル・ベネットと話して、違和感を覚えていた。商人とその従者から聞いていた人物とは、随分と印象が違っていた。
「お前の考えていることは、大体わかる」
「‥‥‥っ」
女は、背の高い隣の銀髪の男を仰ぎ見た。担がれている男と同じ灰青の瞳は、最近もっと冷たい色になったように思う。
「我らに入ってくる情報が、全てが正しいとは限らない。だが、あの方に起こっていることは事実で、『本』は絶対に手に入れなくてはならない」
「‥‥‥はい」
あの方を助けるためであり、あの方を愛するこの男を助けるためだ。
ジュードが気配を消して夜警隊の後を追って消えた所で、立ち止まった。ここから先は入ることは出来ない。
あの商人とは、別として考えたほうが良さそうだ。
夜警隊の男女二人と古書店の襲撃者が消えたのは、間違いなくここだ。待っていても、今夜はもう出てこないかもしれない。それよりも頼るべき所がいくつかありそうだ。
ルークに報告したばかりだが、再びギルドに行かなければならないな。
「‥‥‥」
知った気配がしたので、少し離れた街灯のない場所へ移動した。閉店後の店と店の間の小路だ。人通りはない。
「ちょうど良いところへ来たな、バート」
「ほんっと、気付かれちゃうんだから、やだなぁ」
「騒ぎを知ってついて来たのか?」
今日はレジナルドと古書店に来たばかりだというのに。
「トラ様見ちゃってから、かわいい猫ちゃんが恋しくなってさ。仕事終わりに植物公園で、夜のお散歩中の猫ちゃんがいないか、探してたわけだ」
「‥‥‥」
「そしたら凄い音が聞こえてさ。やっと見つけた白黒猫ちゃんは逃げちゃうし、何だよもう!って。でも何となく方向的に気になったから、古書店に向かった」
「そうか」
バートは、途中で見回りの夜警を見かけた。どこで爆発音がしたのか、探しているようだった。
古書店に行ってみたら、別の夜警隊が既に来ていて、変だなと思っていたら人を担いで走って行き、ジュードがそれを追って行くのを見た。
爆発は?と思ったが、古書店の窓ガラスがなくなっていて、ハルは無事で雑貨店の夫婦と一緒だったので、一先ずジュードを追った。
「あの二人は、夜警の成り済まし?」
「そうとも言えない。見回り中の夜警ではないだろうがな」
バートは先程のジュードの言葉を思い出した。
『ちょうど良いところへ来たな、バート』
「まさか、これからレジナルド様の所に行くつもりだった?」
「そうだ。だが、彼は明日仕事だろう。もう寝てしまったとしたら無理かと考えていたところだった」
「寝てるよ。俺の仕事が終わって自由にしていたら、そういうことなの。あの人は、早寝早起きの健全な生活してるから。まあ、今日は嬉しかったのか、少し酒を飲んでたけど」
それならば、やはりバートに接触できて良かった。
「俺がギルドに報告に行く時に、ハルを頼めないか?来てもらっている間に行けたらと思うんだが」
「それならいいよ。俺かカルロスのどちらかがレジナルド様の側にいれば大丈夫だと思う。この話は持ち帰るから、返事は明日でも?」
「問題ない。木の曜日だけでもとても助かる。ありがとう。よろしく頼む」
ジュードはバートに感謝した。バートは少し照れるように頬を人差し指で掻き「じゃあ戻るよ」と言って、帰って行った。
さて、今からギルドに戻ったらルークは代表室にいるかどうか。あの仕事量を考えれば、気分転換に飲みに出てるか‥‥‥。
「新商品のアイスクリーム、いかがですかー?」
「‥‥‥ひ」
冷たい物に顔を挟まれたジュードは、思わず悲鳴をあげそうになった。全くの気配もなく近付かれた。敵だったら殺されていたと、複雑な気持ちで後ろを睨む。
「ヴァージル‥‥‥」
「こっちがブルーベリーチーズケーキ、こっちがハート型ホワイトチョコチップ入りダークチョコレートですよー。今ならそれぞれ、八個入りのボックスがお得でーす」
どうやら、その二つのボックスに顔を挟まれたらしい。
「‥‥‥‥‥‥では、それを頂こうか」
「ありがとうございまーす!おやおや?ここで『ヴァージルくんの気まぐれ割引』発動!んー?大当たりー!はい、無料でーす」
「俺は運がいいな」
暗がりで、ジュードはアイスクリームのボックス二つを受け取った。
いや、違う。そうじゃない。
「何故だ」
「んー、兄からお手紙ですよー」
【月長石】の代表ルーク・ブレイクと同じ月白の髪色に、瞳は青色、少女のような顔立ちの背の低いマッシュルームカットの青年。
ルークの弟でアイスクリーム屋の店主、ヴァージル・ブレイクだ。
ヴァージルから手紙を受け取ると、ローブの中で隠して開く。ルークからの手紙は発光する紙で出来ていて、暗くても読める。
「‥‥‥」
「問題なければ返事はいらないそうでーす」
「ああ、問題ない」
まさか、弟を手紙の遣いにするとは思わなかった。今日はどうも、周りからいろいろと助けらる日のようだ。ギルドにも行かずに済んだ。
「そうそう。今度の陽の曜日から、僕のアイスクリーム屋さんは、ギルド前の広場に移りまーす」
「‥‥‥そうか」
ルーク、随分と心配してくれているんだな。
ギルト前の広場もより賑わうし、何よりヴァージルがいるだけで安全になる。
「次は、『ハルちゃん』連れて来てくださいねー」
ジュードが手紙を魔法鞄に入れていたら、声と同時にヴァージルが消えていた。
「ああ、そうする」
奥の暗闇に向かって、ジュードは返事をした。
* * * * * * * * * * *
「どこに行っていた?」
バルコニーから自室に入ろうとしたバートに、カルロスが声をかけた。バルコニーは長く続いていて、レジナルドの部屋を挟み、カルロスの部屋まで続いていた。バートが戻って来ないので待っていたようだ。
「夜のお散歩と、猫ちゃん探しと、爆発音と、天銀の虎」
「‥‥‥不穏な言葉が混ざっているな。それから何故ジュードに?」
とにかく来いと言われて、「冷えたから温かいお茶入れてくれる?」と、バートはカルロスの部屋に入った。
「北門の警備塔に?」
「そこで消えたよ。彼らは夜警の成り済ましかとジュード・グレンに聞いたら、『そうとも言えない』って。俺が追い越した夜警たちが、今夜の見回りをしてる本物なんだと思うけど」
カルロスが入れたハーブをブレンドしたオリジナルティーを、フーフーとしながらバートが言った。残念ながら茶菓子はない。
「なるほど、夜警隊か。昼の警備隊よりも人数が多いそうだ」
「へぇ」
警備隊・夜警隊がどれくらいいるのかなど、考えたことがなかった。
ブレンドティーを飲むと、体が温まった。ジュードを追ってたら、随分と遠くまで走ってしまったので、これでも急いで帰ってきたのだ。
「明日の朝食で、レジナルド様に報告してくれ」
「わかった」
「バート、いい判断だったな」
「‥‥‥どうも」
カルロスに褒められて、バートは少しにやけてしまった。
一先ず解散となり、バートはまたバルコニーから自室に戻る。通りかかるレジナルドの部屋は暗いままだ。一度眠ってしまうと多少の物音や話し声くらいでは起きない。レジナルドの危機感のなさには、最初は驚きと同時に呆れたものだ。
だからこそ、カルロスも自分も、この人から離れられない。
少し部屋で菓子を食べて空腹を満たしてから、シャワーを浴びに行って、歯を磨いて、また自室に戻ってベッドに寝転んだ。
「あー、疲れた」
傭兵だった頃に病んでいたらしい精神は、教育係だったカルロスによってギリギリ保たれて、やがて連れて行かれた先は、微温湯の中だった。
殺さなければ殺される、勝って生き残れば金が貰える。そんな世界から、フカフカのベッドで寝て起きて、温かい食事をして、出されるお茶と菓子を食べながら話をして、仕事は『主を守ること』に変わった。
顔には出ないが、最初は戸惑ったのだ。何をしたらいいのか、指示を待つだけの人間だった。
『バート』
主に名を呼ばれる度に、クビかな?と思った。
でも違った。
『バート』
また失敗したかな?カルロスにも話し方を注意されたし。
でも怒られなかった。怒らない人だった。
『バート』
心地良い、主が仕事をしている後ろ姿と、本の頁を捲る音。
ソファーでウトウトしてたの、バレたかな?
『バート、風邪をひくから、これを』
主が、膝掛けを貸してくれた。
『‥‥‥ありがとう、レジナルド様』
『もうすぐ終わるから、もう少し待っておくれ。帰りにバートが好きなチョコレートを買おうか』
『やった!』
俺たちの主は、護衛で従者と呼ばれるような存在を、まるで自分の子供のように思っているようだ。カルロスは三十代で俺は二十代なのだが、主がそうしたいのならば、それでいい。
主の行動は、失った娘への愛情の向ける先を探しているように見えたからだ。
主が毎週のように、孫の『ハルちゃん』の様子を見に古書店に通って、一年。
やっと互いに向き合って話をして、娘そっくりな孫とランチを一緒に出来るようになって、とても嬉しそうだった。息子の役目は、いよいよ終わりだろうか?
『バート、今日は一緒に行ってくれてありがとう』
自宅に戻ってから部屋に呼ばれて、主に礼を言われた。
『どういたしまして』
『少し酒に付き合ってくれないか?カルロスが美味いのを買ってきてくれるそうだ』
『えー、明日も朝から仕事なのに、大丈夫?』
『うう‥‥‥。だが、お前たちがいるから大丈夫だろう?頼むから明日もちゃんと起こしてくれ』
どうでしょうね?と意地悪に返すと、主は困った顔で笑った。
気分良く酔った主は、すぐにでもソファーで寝てしまいそうだった。
主が水を飲みたいと言った。いつもは水ではなくお茶を飲むので、水差しの用意がなかった。通いの家政婦はもう帰ってしまったし、カルロスが持ってくると言って部屋を出た。だが、主は、それを待っていたかのようだった。
『バート』
『何です?オシッコ?』
『いや違う‥‥‥カルロスのことだが』
主は、本当はカルロスと娘のシャーロットが結婚するのだろうと思っていたと話した。
俺から見ても、カルロスはそのシャーロットが好きだったのだろうと思う。バートが知っているカルロスの傭兵時代。俺の教育をしながらも、何かを忘れたいような、そんな思いを抱えて戦場にいる気がしていた。
傭兵をやめてここへ来たのは、彼女への気持ちも死も乗り越えて、レジナルドの支えになる覚悟を決めたからなのだろう。
『ハルちゃんには、ジュードくんがいるから大丈夫だ。今は大変だろうが、二人には幸せになってほしい』
この先も生きている限りは見守るつもりだと、主は言った。引き継ぎを終えて王立図書館の管理室長を退職したら、慣れない時間を持て余すから、生きがいは必要だろう。
『カルロスを養子にしたいと思う』
目を丸くした俺とは反対に、再びやってきた睡魔に抗うような仕草を始めた主は、ウトウトしながらも話を続けた。
カルロスの両親には実はもう前からその話をしていて、知らないのは本人と孫のハルだけだそうだ。近く、ちゃんと話すと言った。
レジナルドは一代限りの士爵なので、家と財産は残るが、カルロスの代には平民に戻る。
『バートは、これからも私とカルロスの側にいてくれる?』
つまり、いつかカルロスが俺の『主』になるということだ。口煩い男だが、別に嫌ではない。
『うん、いいですよ』
『‥‥‥ああ、嬉し‥‥‥い』
幸せそうに眠ってしまった主は、この日、俺に生涯の居場所を与えてくれた。
「はーい、レジナルド様、朝ですよー」
「‥‥‥‥‥‥おはよう、バート」
「早く支度してくださいね。朝食は大好物のふわふわオムレツだって」
「ああ、それは、急がなければ」
起き上がって眼鏡をかけ、姿見鏡の前でボサボサの髪を整えるレジナルドを、後ろから微笑ましく見ていた。
「バート‥‥‥昨日のことは夢ではない?」
鏡の中のレジナルドが、確かめるようにバートを見た。
「‥‥‥それは、これからもハルちゃんと昼食が出来ること? 俺がずっとレジナルド様とカルロスの側にいること?」
山吹色の瞳が大きく見開かれ、それから緩んだ顔で笑った。
「良かった、夢じゃない」
読んでいただきありがとうございます。




