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一話

初めての投稿なので文章が拙かったりするかもしれませんが暖かい目で完結まで見守ってくれれば幸いです。

 俺、猿取 燈は自分が平凡であるという自覚がある。しかし、俺は生まれてこの方、平凡であることを恥じたりしたことは一度もない。もう少し容姿に恵まれていればとか、もう少し運動神経が良ければとか思ったことはあるが、平凡であることを恥た覚えはない。


 そこそこの進学校に通い、ちょうど中間くらいの成績をキープし、広く浅いの交友関係を築く。遊びには行かないが、学校には人並みながら友人もいる。学校がダルいと毎日のように言いながらも、皆勤賞を狙うくらいには学校生活に馴染む平凡な高校生なのだ。


 学校行事にもそれなりに参加し、先生からの信頼もそれなりにある。変に目立つ訳では無いが、それなりに顔の広い特筆すべきことの無い生徒。


 因みに体育祭では騎馬戦の馬役をやり、文化祭のお化け屋敷ではぬりかべ役をやった。どちらも絶妙に目立たない役である。楽しかったけど。


 家族構成も平凡で、寡黙ながらも一家をしっかり養ってくれる父に、天然だが優しい母、最近反抗期なのか俺の事を無視する妹と暮らしてきた。


 趣味はゲーム。色んなゲームに手を出しているため、別に特定のゲームが上手いわけでもなく、下手な訳でもない。全ゲームの合計プレイ時間だけは普通じゃないのかもしれない。……別に誇る事でもなんでもないのだが。


 とてもじゃないが、物語の主人公としては役不足もいいところ。主人公の友人モブや近所のおばちゃんにすら遠く及ばず、ラブコメ漫画なら顔すら描かれない……それが俺のはずだ。


「________ありえねぇ……」


 改めて現状を確認すると、口からそんな言葉が漏れた。言葉が出ない、とはこういう事を言うのだろうと、一人納得する。人間、自分では到底理解出来ない現象が起きてしまった場合、頭が真っ白になる。


 しかし、ここで勘違いして欲しくないのは、頭が真っ白になったからと言ってパニックを起こしている訳では無いということ。理解が追い付かないが為なのか、芯の方は嫌になるほど冷静だった。


 ただ、本当に……言葉が出ない。何も言えない、思考することすら無駄に感じる。何をしていいのか、分からない。無駄に時間を浪費することしか出来ない。行動をプログラミングされなかったロボットのように、ただ何も出来ず佇む。


「こういうのって普通は神様の導きとかがあるんじゃねーの?……なぁ、本当は俺の事を誰か見てたりするんだろ?」


 ありえないと分かっていつつ、一縷も無い望みにかけ、周りに聞こえるような声を出す。返事は無く、ザァザァと風に揺らされる木々の葉の音だけが俺の耳に届く。まるで、一人でみっともなく現実逃避をする俺を嘲笑ってるかのようだ。


 ……察しの良い皆さんはもう分かっていると思うが、俺は現在森にいる。見たことも無い、行ったこともない、よく分からない森にいる。なぜだか知らないが、目が覚めたらここに居たのだ。……。………ふざけんなよ!


 取り敢えずイライラを解消すべく、身近にある木を蹴った。……ビクともしなかった。指先からじわじわと痛みが広がる。虚しさからなのか、痛みからなのかは分からないが、涙が出てきた。周りに人が居なくて良かったと、目が覚めてから初めて思った。


「______はぁ、みっともねぇ……。何時までも現実から目を逸らしてんじゃねぇよ。……今目の前にあることこそが現実だ、しっかりしろ俺!」


 両頬を叩いて気合いを入れ直す。ヒリヒリとする頬の痛みが否応にもこれが現実であると知らせてくる。……そう俺がどれだけ無様に喚こうが、これは現実なのだ。呆ける暇などない。


「よし、気合い入った!どうにかして________」


『ペロペロ〜』


「_________へ?」


 街を探そう!と言葉を続けようとすると、デカイ鳥が空を飛んでいた、聞いたこともないような声で。……デカイ鳥、空を飛んでた、ペペロペロ。


「______は、ははっ……。はぁ……。_______一句読んでる場合じゃねぇよ俺!てか、折角出したやる気をいきなり削ぐんじゃねぇよ!焼き鳥にするぞ!」


 今までの状況ですら理解不能だったのに、更に理解出来ない現実を突き付けられ、絞り出した気力がガリガリと削られる。


 乾いた笑いと行き場のない怒りが溢れ、絶望へと俺を叩き落とした鳥に向かって力の限り吠える。鳥は何処かに飛んで行った為、何も無い空に向かって叫んでいるだけだが。


「ふざけんなー!家に返せー!せめて、チート能力を寄越せー!ハードモードのRPGですら、初期装備は配布されてんだぞー!」


 みっともなく、見てられないかもしれないが、そうでもしなければ正気を保って居られない。その後も空に向かって苛立ちが収まるまで吠え続ける。


「はぁっ、はぁっ________はぁ………虚しい」


 息が切れるまで叫び続けていると、自らの行動の無意味さに虚しさを覚えた。先程自らが足蹴にした大樹に体を預け、空を見る。腹立たしいほど青々としている。もし自分の手に爆弾でもあれば、空に向かってぶん投げて中指を立ててやりたいくらいだ。青空め、早くくたばってしまえ。


「転移だか召喚だか知らないけど、もう少しマトモな場所が良かったなぁ………。ホント、どうしたらいいんだ……?」


 先程よりも幾分か落ち着いた声音で縋り付くように問い掛ける。けれど、やっぱり俺の問いに答えてくれる人は居なかった。

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[良い点] 設定 [気になる点] いくら混乱していたとはいえ、動物を引き寄せるかもしれないのに、叫ぶのだろうか
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