2話 親友のウォークラット
アメイジング・ファット・ショーマン。
主人公「スモールラット」が所属しているこの団体は、世界のトップ5には入るであろう巨大サーカス団だ。マーポン男爵の厳しい指導に耐えて、舞台に立つ役者達の演技はどれも一級品!
特に空中曲芸には力を入れており、空中で芸をさせれば右に出るものはいない。と言われるほどだった。
しかし…
舞台に出演し、パフォーマンスが出来るのは、ほんのひと握りの者たちだ。
「スモールラット」は舞台に出るなんてもってのほか、舞台から一番遠いと言われる練習生の最底辺。
通称「ネズミ溜まり」にいた。
「ネズミ溜まり」の役目は主に雑用。
芸を磨く時間は、自主練習がほとんど。
時々芸を教えてくれる団員もいるのだが、そのほとんどが、八つ当たりをする事が目的だった。
「スモールラット」達は理不尽に耐えながら、いつか…栄光の舞台に立つ事を夢に見て今日も練習をこなしていく。その練習とは…
走る事!
「ネズミ溜まり」に入った時点で、誰にも期待されていない。つまり芸を練習する道具すら支給されない。
今「スモールラット」に出来ることは走る事だけだったのだ。
しかし「スモールラット」は一人では無かった。
「ウォークラット」ネズミ溜まりで出来た親友だ。
2人はずっと側にいて、いつもひたすらに走っていた。立ち止まっている獣車、草原を駆け回る2人を見て1人の男が鼻を鳴らした。
「つまんねぇんだよ、餓鬼ども」
「ビッグラット」
このネズミ溜まりを仕切る薄汚い大男だ。
「スモールラット」「ウォークラット」そして
「ビッグラット」の3人によって、
アメイジング・ファット・ショーマンを揺るがす大事件が起ころうとは、まだ誰も気付いていなかった。