1話 囚われのスモールラット
雨が降っている。
体に降り注ぐ水滴の弾丸は、次第に激しさを増していった。
少年なのか、少女なのかも分からない程に小さな子ども、その小さな体から少しずつ力が抜け始めた。
子どもは弾丸に成す術もなく、地面に叩きつけられる。
彼の意識が完全に閉じる前に見た光景は、小太りの男がこちらに近づいてくる姿だった。
1話 囚われのスモールラット
9:00
がらがらと揺れる獣車に起こされて、彼はいつもの様に目を覚ます。
「ふぁ〜、もう朝か」
藁のベッドから飛び降りて、獣車に取り付けられた木製の窓を開けた。
窓から見える外の景色はとてつもなく綺麗だった。
真っ青に満たされた雲一つない青空に、緑いっぱいの山々。草原にはさまざまな生き物達が、気持ち良さそうに生活していた。
ピィィィィ!
突如、ホイッスルの甲高い音が辺りに響き渡った。
辺りにいた生き物達も驚いた様子で逃げ出していった。
「キツい練習の始まりだぜ、おら行くぞ」
同じ獣車で眠っていた人が起きてきたようだ。停まっている獣車を降りていく。降りていく人に続いて獣車を降りる彼。
彼が今いる場所。
いや、所属する団体は「アメイジング・ファット・ショーマン」
…世界のトップサーカス団だ。