初日
「死にたい……」
「いいよ」
「え!?」
「辛かっただろう?苦しかっただろう?もう無理をしなくてもいい、楽になりなよ」
「いや、いろいろと困らない?」
「……んー、まあ、僕がなんとかするよ。だから安心して。心おきなく、どうか安らかに」
「えぇ……」
「あ、ちょっと待って」
「お、やっぱりひきとめて……」
「どうせならヒロイックで悲劇的で、感動的で刺激的な最期がいいね」
「は?」
「人々の同情をひいて、お金を……。おっと。なんでもないよ。これはビジネスチャンスだ!なーんて思っていないから安心してくれ。少しだけ待ってくれないか。その間にボクがシナリオを練るよ。かけがえのない命、たった一度きりの人生。ただ死ぬなんてもったいない!君に最高の最期を用意するよ」
「いや、俺が死んだところで別に……」
「そこは僕の腕の見せ所だ。映画化されちゃうぐらいの感動的な死を迎えるにはどうすればいいか…とりあえず100日ほど猶予をくれないか。いろいろ準備があるから今すぐというわけにはいかない。今日から100日後、最高の舞台を整えるよ」
「やっぱり死ぬのやめます……」
「えぇ!?どうして!?」
「仮に最高のシナリオが用意できたとして」
「ほう」
「映画化されて、お金をがっぽり稼げたとして」
「ふむふむ」
「俺は死んでるわけだよな」
「そうだね」
「それじゃいくら金があっても意味ないだろ!」
「僕がお金持ちになれるから意味あるよ」
「俺は!?」
「大丈夫大丈夫。死んだって、頭の上に光るわっかがついて、天使の白い翼が生えて、第二の人生がはじまるだけさ」
「そんなわけないだろ……」
「どうして言い切れるんだい?君は死んだことがあるのかな?」
「いや、ないけど……」
「じゃあ、どうなるかわからないじゃないか。死後の世界、そこに賭けてみるのもいいんじゃないかな。人生はギャンブル……という訳で、いっぺん死んでみよう」
「いやだ!」
「えー、どうして?」