第4整 観察眼
雄たけびをあげながら苦しむベアータイトを一発で射抜いた騎士
月明かりに照らされるその鎧はまるで炎のように赤く輝いていた
いや実際には炎を全身から魔力として放出してベアータイトに槍を撃ったのかもしれない
まだこの世界に来て数時間そこらだが、ゲームとかアニメを見たりやったりしていたから予測でしかないが鎧をまとう騎士を見てなんとなくそう思った。
じ~っと赤い騎士を観察していると騎士が警戒しながら近づいてきた
「おい!大丈夫か??怪我はないか??ってまぁ見た感じ服はボロボロだが怪我はないか・・というかなぜこんな時間に森にいるんだ?」
騎士は訝しそうにしながら質問をしてきた
いきなりの質問にえっととなっていると急にドンっという音と共に後ろで聞こえていたはずのベアータイトの苦しむような雄たけびが無くなったのがわかった
振り返ってみるとベアータイトの姿が消えている
騎士の攻撃を受けて逃げたのか?と辺りを見回していると
「あぶない!!!」
という声と共に騎士がぶつかってきた
とっさの事にびっくりしたが騎士がどうしてそのような行動をとったのかすぐにわかった
ズシャという鈍い音と共に騎士の鎧がベアータイトの爪により砕かれたのだ
ぐはっという声をあげながら騎士は地面に叩きつけられた
そうベアータイトは逃げたのではなく、空に飛びあがりそして俺たちに頭上から攻撃してきたのだ
最初に聞こえたドンッという音はベアータイトが飛び上がった音だったのだ
ベアータイトは叩きつけた騎士を睨みつけてもう一度爪を立て攻撃する
ズシャっという音を立てて騎士が飛ばされ地面に叩きつけられゴロゴロ転がり数メートル先で止まる
騎士はピクリとも動かない
ベアータイトはチラッとこちらを確認しビクッとなったがもう興味が無くなったのかそれとも後でもやれるという事なのか騎士の方へ歩き始める
その先にいる騎士を見ると今だに動く気配がない
このままでは俺らも騎士もどちらもやばい、だがどうすればと思っていると
「何やってるんですか!?観察眼を使ってください!」と声がして振り返ってみると先ほど一緒に突き飛ばされたお陰で正気に戻ったシャウネがいた
観察眼??こんな時になんの役に立つんだ?と眉を顰める
だが今はやれることがないのでシャウネに言われた通り腕輪からウインドウ画面を開きスキル欄にある観察眼を押す
すると目の前に映るベアータイトと騎士の情報が視覚に入ってきた
ベアータイトレベル45 HP200/700 出血あり
ライト・ユースタス 職業騎士 レベル89 HP1500/3000 敵の会心の一撃により失神
これが観察眼の力かと見ているとシャウネが言う
「情報は見れた??じゃあ今視覚に情報以外に赤くなってる点と青くなってる点はあるかしら?」
と言われベアータイトと騎士を見るとベアータイトは右足と心臓と左手に赤い点が見える、騎士の方には心臓の方に点滅してる赤い点が見え頭には黄色、そして背中辺りに青い点が見えた
「あぁ見えるぞベアータイトってやつには赤い点しか見えないけど、騎士の方は心臓に点滅した赤いのがあって頭は黄色、背中は青い点が見える」と答える
するとシャウネがまじかと声を出す
そしてこちらをキリッと見て喋り始めた
「よく聞きなさい!その点は赤はここに攻撃したら破壊できるまたは倒せるっていう印、黄色はその場所に異常があるという印、青はまだしばらくは大丈夫という印なのよ!今あの騎士は頭が黄色の点があるって事は失神または混乱してる状態、そして点滅してる赤い場所は危険を知らせてるの!もしあと一撃でも攻撃されたら・・」
「攻撃されたら?」息をのんで聞いてみるとシャウネはゆっくり答えた
「死ぬわ」
死ぬ?レベル差がこんなにあるのに?と目に映った情報をもう一度確かめる、その目にはレベル差がはっきりと映し出されていた
こんなにも差があるのに一撃くらっただけで死ぬ?そんなのバランスがおかしいじゃないかと頭が混乱している
だが、情報をみているとベアータイトが騎士に与えた攻撃を考えるとあり得ない話ではない
この観察眼はもしかしたらあり得るかもしれない情報も映し出しているのかもしれない
そう思いながら見ているとシャウネが言う
「私が騎士に回復魔法をかけに行くからあなたはベアータイトをお願い」
「お願いって!!あんな奴をどうやって!」
「なんでもいい少しだけ注意を惹きつけるだけでいいわ、そしたら回復したあの転がっている騎士様に何とかしてもらうから!いい?」
そう言ってシャウネは走り出した
ああ!!OKもしてないのに勝手に決めやがってと思ったがこのまま何もしなかったら三人ともやられる
ならば少しでもやれることをやるしかないとシャウネに続いて走り出した
するとベアータイトもそれに気づきこちらを見た
ギリギリでシャウネはすぐに草むらに隠れ気づかれなかったようだ
やばいと思いながらもベアータイトの正面に立つ
ベアータイトはグルグルとうなりをあげながら睨んでくる
その目を見て若干逃げ腰になりながらも対峙する
ドスンドスンと足音を立てながらベアータイトはゆっくりとこちらに歩を進めてくる
それと一緒にこちらも一歩ずつ後ろに後ずさりをする
するとベアータイトの後ろでシャウネが騎士の所に到着したのが確認できた
よし!と心の中でガッツポーズをする
これで後はシャウネが騎士を回復させて騎士がこいつを倒してくれれば終わりだと思っているとベアータイトの後ろでシャウネが頭を抱えてるのが見えた
何事かとベアータイトに警戒しながらもシャウネと騎士を見る
騎士のステータスに変化が見られた
先ほど騎士はHPが1500と表示されていたが3000になっていた
おっ成功してる・・なのになんで頭を抱えてるんだ?と思っているとその答えが映し出されていた
なんと失神の表示が消えていないのだ
シャウネは回復はすることはできたのだが、なんと失神は回復させることが出来なかったのだ
シャウネは騎士の身体を揺さぶりながら何度も頬を叩いているがダメージが1ずつ与えられ微妙に減っているだけである
てかあれだけでも減るんだと思っているとベアータイトが痺れを切らして立ち上がりグオオオオオと声をあげて襲いかかってきた
ひいっとなりながらもなんとか避ける
ベアータイト攻撃は空を切った
だがその攻撃でベアータイトの腕から凄い風圧があがる
それにより軽く吹き飛ばされながらもなんとか立ち上がる
もしくらったら確実に死ぬと冷汗が流れる
さてどうしたもんかと思っていると
「逃げて~~~」とシャウネが大きな声を出して言っている
するとベアータイトがその声に反応して反転しシャウネと騎士の方に走り始めた
「まずい!!」
急いで後を追い掛けるだがベアータイトの方が4足歩行で走り始めたのでどうしても早い
シャウネはひいい!!!と叫び声をあげて「起きて!!!起きて!!!」と騎士を揺さぶっているが一向に目覚める気配がない
気絶しているときに本当は動かしてはいけないんだがなと心で思いながら走り続ける
だが追いつくことが出来ない
くそっと歯を食いしばりながらもっと早く走れたらと思いながら走ってるとハッと気づき腕輪からスキルウインドウを出す
そこには加速というスキルがあった
よしっとガッツポーズを軽くしながらスキル加速を押す
すると、身体が急に軽くなり一瞬で足に力が入った
これなら!!!と一気に踏み込むとみるみるベアータイトに追いついてくる
あと少し・・あと少し
しかしベアータイトの方が先に2人の方に到着し腕を振り上げる
「きゃああああああ!!!」とシャウネが顔を伏せる
スキルボタンをもう一つ横目で押し
「とどけえええええええええ!!!!八卦発動!!!!」
と地面を思いっきり蹴り右手を前に突き出してベアータイトの背中目掛けて八卦攻撃を加える
ズドンという音と共にベアータイトが吹き飛ぶ
シャウネと騎士に攻撃するギリギリで八卦が間に合い
背中越しに発動した八卦は見事に赤い点があった心臓に届いた
間に合ったと安心しているとベアータイトは心臓を射抜かれたはずだがすぐに立ち上がる
「くっやっぱダメか!?」
と身構えて顔を伏せようとしたが様子がおかしい
よく見るとベアータイトは立ち上がりながら絶命していた
観察眼で見てHPが全損しているのに気付き安心して地面に倒れる
「ふ~~危なかった~~~」
と空を見上げる空には綺麗な星が輝き満月が3人を照らしていたのだった