第3整 騎士
「ん~~いい日差し良く寝たなぁ」
ベットから起き上がり伸びをする
南大陸の首都サウスコウゲンの中心街一角に位置する騎士団宿舎の一室でで目を覚ます青年、窓を開けて空を見渡すと雲一つない晴天
青年は空を見てそして窓の外の街を見下ろす、そこからは街全体が見渡せるという絶景が広がっている
人々が元気な声で商売したり、子どもたちが楽しそうにはしゃいでいる姿も見えるこの部屋は夜になると満天の星空も見れる騎士団の部屋でもっとも良い部屋なのだ
この部屋は年に二回行われる騎士団内武術決戦で一位を勝ち取った者が住める部屋で、青年は今のところ五年連続無敗という記録を打ち立てこの部屋を陣取っている。
騎士団内ではもうあいつには勝てないや、あいつは武術の鬼だなどさまざまに言われている
この武術決戦で序列なども決めており彼は序列1位というわけだ
騎士団は少数精鋭で組まれており、1位~10位までがクラウンクラス、11位~20位までがナイトクラス、21位~30位までがビショップクラスと別れており30位以下はポーンクラスである
ポーンクラスは、ほとんどがまだ入隊したばかりの者や技が洗練されていないものだ
青年も最初はポーンクラスではあったのだが、先輩から教わった技術などをすさまじい速度で覚え習得していき入隊してわずか一年で序列1位なったのだ
青年は洗面所にいき顔を洗うと鏡に向かって「今日も元気だ」と自分に気合を入れる
そして部屋に置いてある赤い鎧に着替えようとすると部屋をコンコンとノックする音が聞こえた
「もう来たのか・・どうぞ開いてるよ」と言うとドアをゆっくりと開け部屋に入ってきた
すると入ってきた主は青年を見るやいきなりため息をついた
「まだ準備できていなかったの?序列1位の赤い雷光騎士様」
皮肉たっぷりに言ってきた
赤い雷光とは自分が技を放つと赤い雷みたいに見えるという事でついた通り名だ
もっといい名前は無かったのかと思ってしまうが、今では町に住んでる人たちまで会うたびにその名前で呼ぶ人も少なくない
「だからその名前で呼ぶなっての、俺にはライト・ユースタスって名前があるんだから、幼馴染ならちゃんと名前で呼んでくれよハルカ」
ライトが目の前にいるハルカと呼んだ女性騎士に反論する
彼女の名前はハルカ・ストレイ騎士団の序列2位で幼馴染の女の子だ
髪は明るい茶色でポニーテール、服装は胸にプレートアーマーをつけ肩が見える白い長袖、そして動きやすいからと赤いスカートをつけている
毎回思うのだが確かに戦闘で動きにくい格好をするよりはいいかもしれないが、練習稽古や武術決戦でその恰好をすると戦いにくいのだがと思考を巡らす
するとまたため息をつく
「あんたが遅いから嫌味の一つでも言って急がせようとしてるに手を止めてんじゃないわよ、まったくなんでこんな奴がずっと序列1位なのよ!!!この部屋絶対手に入れたいのに!!!」
頬をリスみたいに膨らませて怒るハルカ
「えっと・・・じゃあ今度の武術決戦ワザと負けてあげようか??」
そういうとハルカは鬼に様な形相でこちらを睨んできた
「ワザと負けよとしたらただじゃおかないわよ!!あんたは私が実力で負かしてそしてこの部屋を私の物にするんだから!そうじゃないと意味がない!」
そう言い放ち人差し指でこちらに指を差す
ハイハイと流しつつ赤い鎧を着替え終わる
それを見てハルカは部屋の入口に向かい始める
忘れ物なんかないかをチェックして戸締りをしてライトも部屋を後にした
部屋から出て目の前の階段を下りると下では広場で、セイセイセイと竹刀を振るポーンクラスの人達が朝の練習をしていた
すると一番戦闘で指示していた教官がこちらに気づき「気を付け!!!序列1位様と2位様に挨拶!!!」と大きな声で言うと皆一斉に竹刀を振るのをやめ「おはようございます!」と規則正しく挨拶をしてきた
2人は「おはようございます」と頭を下げるとそれを見てポーンクラスの人達はまた竹刀を振り始めた
この光景は自分が入隊した時から一緒でクラウンクラスが現れるたびにこのような挨拶がされているのだ
2人が宿舎のエントランスに向かうとそこに飾られている掲示板に今日のそれぞれの日程と書かれたものが置かれていた
これはポーンクラス以外の者たちは毎日一つ仕事を与えられるもので、中には魔獣退治や木の伐採、調理の手伝いなどある。
ライトとハルカは掲示板を凝視して見るとライトの所には「周辺の巡回」と書かれハルカは「ポーンクラスの鍛錬」と書かれていた
ライトはそれを見てあっとなる、ポーンの訓練とは竹刀での実践的な戦い方を指導するものでライトの指導はそこまで厳しくはなく大丈夫なのだが、ハルカの場合は違う
それを知っているのか、もしくは経験したことがある者なのか周りのクラウンクラスや他のクラスは掲示板を見て、あちゃ~という反応をしている人が多数である
ちらっと横を見ると目をキラキラさせているハルカが居た
こうなるともうダメなのはわかっている
この顔をしているときは、鬼のようなしごきをする予兆である
本人はとても楽しんでいるのだがポーンクラスの者はたまったもんじゃない
噂によると、ハルカが鍛錬担当になった時はポーンクラスと教官が三日三晩動けなくなったという話もあるのでポーンクラスの人達はその日がこないことを願ってるらしいが、今日がその日らしい
ご愁傷様ですと言わんばかりに周りの人達も何故か手を合わせていた
「じゃあ!ライト!!私ポーン鍛錬行ってくるわね!いや~今日は何しようかな~」
先ほどまで不機嫌だったのが嘘だったようにスキップして訓練室に向かっていく
「あまりやりすぎるなよぉ・・・」と小さな声で言っておく
多分無駄だとはおもっている
ハルカを見送りさてとエントランスを出て外に足を踏み出す
日差しが気持ちよく風も優しく吹いている
今日はとてもいい気候らしいと息を思いっきり吸って街に歩き出す
宿舎から坂を下りて市街地に出るとまだ朝早いというのにとてもにぎわっていた
露店からは、焼き鳥やマンゴーの氷結パイ、マンゴーオレンジなどいろいろ売られている
ライトはいつもなら宿舎の朝食を食べるのだが、巡回の時は露店でよく食べるのだ
どれにしようかな~と歩きながら品定めをしていると
「おっ赤い雷光様じゃねぇかおはようございます」「あっ雷光様おはよう!」「この前はドラゴン退治ありがとう」などと街を行き交う人々から声がかかる
騎士団は街を守るために戦ったりすることがあるので、街の人たちは覚えてくれる
この間も街に飛来したドラゴンをクラウンクラスで排除したが、赤い雷光と言われるだけあってものの数分で10体倒すという光景を見せたので余計その呼び名が定着してしまったのだ
ドラゴン達め・・と何故か逆恨みをしつつ露店で買ったマンゴーの氷結パイとトマトスパイクという飲み物を食べながら巡回して平和な日常を感じながら街の噴水広場にあるベンチに座りながら空を見上げる
すると夜でもないのに空にキラキラ光る物が見える
不思議そうにライトがそれを見ていると、そのキラキラ輝くものはどんどん首都から離れた北の森目掛けて降下していってるではないか
そのキラキラ光る物が何かはわからないが、最近モンスター達が活発になってきていることと関係しているのだろうかとふと思ってしまう。
ふむと考えてベンチから立ち上がり指をパチンと鳴らす
すると目の前にウィドウ画面が現れた
「どうしましたかライト様?」と中から女性の声が聞こえた
「北の森に何やら空から落ちていくのを確認、もしかしたら最近活発になり始めたモンスター達に関係あるかもしれないと思い今から調査に入るので騎士長に報告頼む」と画面に向かって話しかける
「了解しました。報告いたしときますくれぐれもお気をつけてください」
という声と共に画面が閉じた
さてとと準備体操と言わんばかりに身体をストレッチし北の森を目指す、街から北の門を抜けて一本道をずっと進んだ先に北の森と呼んでいる「トレザスの森」がある
距離はそこまでないので走っていく事にする
光るキラキラを見失わないよう時々空を見上げながら走っていると光るそれはトレザスの森の中心に落ちた
すると同時にズドンと言う音と共に大気が揺れたのを感じた
街からは離れているので多分誰も気づいてないと思うが、あれは何かが落ちただけでできる大気の揺らぎではないと感じた
急いでスピードを上げる、もしモンスターの類の仕業だと危ないと判断したからだ
トレザスの森に着いた時にはもうすっかり夜になっていた
時間の事を気にしていなかったので走ってきたがやはり馬でこればよかったかと思い森に近づこうとするとパキパキという気がなぎ倒されていく音が森から響いてきた
何事!?と音がする方へ向かっていくと森の中から人が出てくるではないか
なんでこんな所に!?と思ったのもつかの間その人の後ろからベアータイトが出て来たのに気付いた
まずいこのままではと思い
指を二回鳴らすするとライトの手に槍が現れた
それを片手に構え古代語を唱えて炎を槍に纏わせていく
そしてベアータイトが大きく構えたところを狙った
「火よ!!!!敵を穿て!!!!ファイヤーランス!!!」