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ゴーストキャリアー  作者: 八刀皿 日音
3章  悪魔たちの夜、しかし星は輝く
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4.きっと、一番悪いのはぼくなんだ



「いやいや……こりゃまたハデにやられたモンだ」


 ジャガーから降りたオーズは、周囲の光景に思わず口笛を吹く。



 高速道路のオレンジの灯火の下には、10台を優に超える黒い車の残骸が、まるで廃車場のように山となって積まれていた。



 これらの車は、マキと同じく、人の造ったものをベースにした特別仕様車を用いるオーズら上位の悪魔と違い……下級の悪魔が、車という物に宿るいわば『魂』を吸収し、それをもとにして自らの体を一時的に変化させたものだ。


 つまるところ厳密な機械ではなく、ガソリンなども使っていないので、炎を上げて燃えさかるようなことはない。


 だがその代わりに青白い、たとえるなら怨嗟の声の塊のような、火の粉とも煙ともおぼつかないものをゆらゆらと立ち上らせていた。



 同じく悪魔であるオーズにしてみれば、それは同胞の屍の山と言えるわけだが、別に憐れむでも怒るでも、ましてや哀しむでもない。



 一応は目的を同じくする者同士であり、協力もするが、悪魔の彼らには『負けた奴が悪い』という、極めてシンプルでドライな割り切りがある。


 それゆえ、今のオーズが思うのはどちらかと言えば、わずか5分にも満たない時間でこれだけの数をあっさり壊滅させた天使への称賛だった。



 そう――道路の中央で仁王立ちする、華奢な少女の姿をした天使への。



「大したモンじゃねーか。

 さすが、あのカマエルの秘蔵っ子ってだけはある」



 オーズの呼びかけに、ゆっくり振り返るサリエル。



 鬼火を照り返し、ことさら冷たく輝いて見える彼女の白銀の甲冑は、返り血にまみれているような凄惨さをかもし出していたが――それがまた天使らしい峻烈な美しさでもあると、オーズは感じていた。


 そう、自分たち悪魔に似た――元をたどれば同じ存在であるがゆえの、苛烈極まる強さの輝きだ。



「気安く声をかけないで下さい。

 変質者に絡まれてる、と通報しますよ?」


「いやいや、そう邪険にすることもねえだろ?

 オレたちも一応は兄妹なんだからよ」



 にやけるオーズに対し、あからさまな不快感を面に出すサリエル。



「冗談はあなたの存在そのものだけにして下さい。ヘドが堤防決壊します」



「……なんかヒデェいわれようだな。

 しかし……」


 オーズはガシガシと頭を掻きながら、鬼火を立ち上らせる残骸の山を見上げる。


「やっぱりと言うか……お前、悪魔(こっち)の方が性に合ってるんじゃねえか?」



「……ジョークのセンスも最低ですね。

 公害は速やかにいてこましてしまいましょう」



 オーズをにらみ付け、ぐっと拳を握り込むサリエル。


 それにつれて増大する敵意はオーズも感じ取ったはずだが、彼はまるで気に留めた様子もない。



「なあ、コイツらを蹴散らすの、気持ちよかっただろ?

 己の力を存分に振るうのは楽しかっただろう?

 それに――」



 オーズは不意に言葉を止め、大きく後ろに飛び退く。


 彼の元居た空間には、いつの間にか距離を詰めたサリエルの右拳が突き刺さっていた。



「あっぶねえ。

 ……いやいや、そうやってすぐカッカするあたり、しっかりしてるようでさすが末っ子。

 まだまだお子様よなあ」



「……アッタマ来ました。

 ガチでぼてくってこましこかす……ッ!!」


 怒りをそのまま、思い切り地面を踏みしめるサリエル。



 紅潮した顔は、今にも火が付きそうだったが……唐突にその場に鳴り響いた電子音がそこに水を差す。


 それで着火前に幾ばくかの冷静さを取り戻したサリエルは、不満に頬をふくらませたまま、籠手をした手で器用に、甲冑に備え付けられた専用のポケットから淡いピンク色の可愛らしいスマートフォンを取り出した。



「……なんですか兄様。

 今まさに、最低最悪の身内の恥を徹底的にブチぼてくってこましこかして、物理的にも霊的にも塵も残さず完全消滅させようというイイところだったのに」



 サリエルはオーズをにらむ目を逸らすことなく、カマエルの電話に応じる。


 一方のオーズは、特に何をするでもなく、ニヤニヤしたままその様子を見守っていた。



 サリエルは電話で何を言われたのか、一度チラリと自分の拳を見下ろしたあと、眉間に寄せた皺はそのままに……溜まりに溜まっていた着火性の怒気を吐き出すように、大きな大きな溜め息をついた。



「……分かりました……はい。では、すぐに」



「やっぱり、タイムアップだな。

 いやいや、そういった計算ができてないのも、まだまだ子供の証拠だぞ?」



 からかうオーズの言葉通り、サリエルにカマエルから伝えられたのは、天使としての活動時間に限界が来るからすぐに戻ってくるように、という指示だった。


 深淵から漏れ出る瘴気が多少なりと影響する下界では、天使としての力は徐々に低下していく上に、ヘタをすれば闇に堕ちる可能性もあるからだ――。


 彼女の前に立つ、元は同じ天使だった隻眼の悪魔のように。



「ほれ、子供は帰って寝る時間だぞ。

 それとも……やっぱり、夜更かし上等の悪い子になりたいか?」



 ひらひらと手を振るオーズ。


 そのニヤけた顔目がけて、イラ立ちまぎれにサリエルは転がっていた悪魔の残骸のタイヤを蹴り飛ばすが、当然のようにひょいと避けられた。



「……命拾いしたーって、泣いて自分の悪運に感謝するんですね」



 サリエルはこればかりは見た目通りに子供っぽく、思いっきりべーっと舌を突き出して見せると、翼を羽ばたかせ、夜空へと舞い上がっていった。



「そっちに嫌気がさしたら、いつでも()()()に来ていいからな~?」



 最後までからかうような口調でそう投げかけたオーズは、そのままサリエルの姿が彼方のケテル山へ消えていくのを見送った。


 そして苦笑をもらしながら、上着のポケットからスマートフォンを取り出す。



『……オーズか。どうだ?』


 呼び出し音を3回と待つまでもなく、電話口に出たのはサミアだ。



「この地区の連中はほぼ全滅ってとこですかね。

 しかしまぁ、まだそう離れたわけでもないんで、続けて追いかけますよ。

 そろそろ射程圏内に入るでしょう」


『ふむ……私はすっかり待ちくたびれているのだが』


「ですがね、姐御……いくら初陣とは言え、天使どもがわざわざ直に助けてやらなきゃならないぐらいだ。

 とてもそこまでたどり着けないかもしれませんぜ?」


『――ほう。お前が引導を渡す、と? 別に構わんぞ。

 それならそれで、所詮その程度の相手だったと言うだけのことだからな』


「いやいや、後でエモノを横取りしたって言うのはナシにしてくださいよ、姐御?」


『くどい。お前と一緒にするな』



 特に機嫌をそこねるでもなく、いつもの調子で淡々とそれだけを言って、サミアはさっさと電話を切ってしまった。

 あとに残る極めて無機的な不通音は、まるでサミアが早く行けと急かしているようにも感じられる。



「いやいや……」



 小さく首を振りながら運転席に戻ると、オーズはエンジンを激しく空吹かしさせる。


 高ぶる気分を代弁するその爆音の中、彼は前方の闇の彼方を駆けているであろう黄色いエリーゼを思い描き……目を細めて睨め付けた。











    *    *    *




「はぁー……一時はどうなることかと思ったけど……。

 これで一気に進めるかな」


 マキは修道服の襟元を指でゆるめながら、一息つく。



 周辺の悪魔たちが集中していた包囲網を破ったことにより、彼らは誰に邪魔をされることもなく高速道路をひた走ることができていた。


 さすがにそのまま目的地に直行とはいかないものの、ケテル山に最も近い出口まででも、下の街中を走り回るよりははるかに時間短縮になる。


 つい先刻までの危機的状況を切り抜けられた安堵感と相まって、マキもティータも、そうした事実に気を楽にせずにはいられない。



「まさに災い転じて何とやらー、ってやつですね、あねさまー」


「まったく、ね。

 でも……正直情けないかな。ロイに、大丈夫だってさんざん豪語しておきながら、結局助けてもらってるんだから……ねぇ、ロイ?」



 マキは苦笑を投げかけるが、当のロイはそれにまったく気付かない様子で、食い入るように窓の外を見つめていた。



「ねぇ、お姉ちゃん。

 あれ、あの遠くに見えるのって、観覧車――だよね」


「え?……あぁ、あれね。あれはアニアドのマリンパークのやつじゃないかな。

 あそこの観覧車、結構大きくて有名だから。

 空気がうんと澄んでる日には、てっぺん近くまで登ると、遠くにうっすらブリテン島が見えることもある――って」


「それ……パパも言ってた。

 そっか、小さいときパパに連れていってもらったのって、あそこなんだ……」



 マキは戸惑いながらロイを見る。


 懐かしげに、穏やかに思い出を語りながら、しかし窓枠にかけられたロイの手は震えていた。

 強く――ひたすらに強く込められた、彼自身の力によって。



「……ロイ……?」



「――お姉ちゃん……!」


 弾かれたように振り返り、ロイは急に、深々とマキに向かって頭を下げる。


「お願いを――ぼくのお願いを聞いて下さい!」



 マキは突然のことに驚くが、努めて冷静に、穏やかに、先を促した。



「……急に改まって、どうしたの? 言ってみなさい?」



「ケテル山に……ケテル山には行かないで!

 アニアドに行って欲しいんだ!」



「――え……」


 絶句。そして――


「ええっ!? ど、どうして!?」


 さすがに今度は驚きを抑えきれず、すっとんきょうな声を上げるマキ。



 それもそのはずで、アニアド地区はケテル山とはまるで方向違いだったからだ。



 完全に逆戻りとまではいかないまでも、山を登る道筋から外れ、数区画離れた港湾地帯まで向かうのだから、ロスの大きな寄り道になるのは間違いない。


 せっかく手に入れたアドバンテージが帳消しになるどころの話ではないだろう。



 ロイはうつむきながら、絞り出すようにして言葉をつむぐ。



「パパが……危ないんだ。

 パパが、殺されちゃうんだ……!」


「! エドガーさんが――殺される?」



 マキの問いに、ロイは……。


 自分が意識を失う直前、父の知り合いを装い何度か見舞いに来ていた、怪しい男たちが話していたことを答えて聞かせた。



 その男たちが、父に良くない仕事をさせようとしていること。


 そしてその後、用が済んだら父を始末しようとしていること……。




「……それで、パパは警備のお仕事をしてるから……。

 きっとそれを、泥棒に入るのに利用しようとしてるんだと思う」



 ロイの話を聞いたマキは、渋い顔でなるほど、と一つうなずく。



「そいつらが、ロイのお見舞いを名目に現れてたことを考えると……エドガーさん、ロイのことを人質に、そいつらに協力することを強制された可能性が高いわね。

 で、用が無くなったら口封じ、ですって?

 ……とんだ外道じゃない、べらんめー……ッ!!」



 込み上げるままに怒りをまくし立てるマキ。


 しかしなぜかロイは、マキの怒りがまるで自分に向けられているかのように、悲痛な顔でうつむく。



「でも……でもね、きっと、一番悪いのはぼくなんだ」


「……どういうこと?」


「だって、ぼくは……黙ってたから」



 膝の上でぎゅっと握りしめられたロイの手に、それ自体が光の粒のような雫がぽつりぽつりと落ち、弾け、輝く軌跡を描いて消える。


 それは、魂だけの存在であるがゆえの、想いがそのまま形になってこぼれ出た、どこまでも純粋な涙だった。



「パパが危ないって知ってたのに……なのに、今まで黙ってたから。

 ぼくは……今日はお姉ちゃんと天使様が助けてくれたとしても、やっぱり病気で……いつまた同じようなことになって、死んじゃうかも知れないから、だから!

 いっそパパも死んだら、一緒にいられるんじゃないかって、そんな風に……思ったから……!」



 ロイの肩が震え、車内に嗚咽がもれ響く。



「だけど……だけど、やっぱりイヤだ!

 もし、ぼくが死んじゃっても……それで一人になっちゃうとしても……パパまで死ぬのなんてイヤだ!

 ――生きていてほしいんだ!!」



「……ロイ」



「ぼくのためにって一生懸命になってくれてるお姉ちゃんにこんなこと言うの、ダメだって――すごいワガママだって分かってる、でも、でもっ……!」



 必死に思いを述べるロイ。

 マキは身体を傾けると、そんなロイを左腕でぎゅっと抱き寄せた。



「……よく話してくれたね、ロイ。

 あなたは悪くなんかないよ。


 ――でもね。一つだけ間違ってる」



「……え?」


 顔を上げたロイの額を、身体を離しざま、マキは軽く指で弾く。



「『もし』も何もない。自分が死んでも、だなんて言わないで。


 ――死なない、生きてやるって強く願いなさい。

 病気になんて負けたくない、大好きなパパと一緒に、今日だけじゃない、これからも生きていくって……そう言っちゃいなさい。


 前にも言ったけどね、奇跡だってタダじゃないみたいなの。

 でもね、だからこそ――強く願い、手を伸ばせば、きっとつかみ取れるもののハズなんだ。

 祈って待って、与えられるのを指をくわえて見ているだけじゃない、自分の意志で引き寄せることだってできるハズなんだ。


 だから、見せてやりなさい。聞かせてやりなさい。


 すべてを見ている神サマと、すべてを聞いている天使に……あなたの意志の固さ、願いの強さを。

 向こうがびっくりして飛び上がるぐらいに思いっきり、ね」



 マキは、いたずらっ子のようにニカッと笑ってみせる。



 ロイは少しの間驚いていたが……やがて唇をきゅっと結んで強くうなずいた。


 そして、息を吸い直し、言われた通り、精一杯の声を張り上げる。



「お姉ちゃん、ぼく……病気になんて負けたくない!

 パパと一緒に生きていたい! これからも!

 だから、だから……パパも助けてあげて!」



 よくやったと言わんばかりに、マキはロイの頭をくしゃりとなでた。



「あったりまえでしょ。

 ――ティータ、アニアドに一番近い出口まであとどれぐらい?」


「もうしばらく先ですー。……でも、あねさまー……」



 ティータの声の調子はやや暗い。

 その意をくみ取って、そうね、とマキはうなずく。



「確かに今のままじゃ、アニアドのどこへ行けばいいのか分からないもんね……。

 アニアドにはアリアドネ紡績関連の建物っていくつもあるから。

 ――ロイ、お父さんの仕事場の詳しい住所とか分かる?」


 マキの質問に、ロイは申し訳なさそうに首を横に振る。


「そっか。……ふむ。

 うちのパパなら、従業員さんの顔と名前は全部把握してるはずだから、エドガーさんの名前を出せば、どこで働いているのかすぐに分かるんだろうけど……」



 意外と鋭い父のことだ、いきなり娘からそんな質問をされれば、何かあったと勘繰るだろう。

 どうしてそんなことを聞くのかと問い詰められるのは間違いない。


 そうなれば、正直に話せばもちろん、はぐらかしたところで、犯罪性を感じ取った父は警察に連絡することになる。


 けれど、エドガーの安全を確保する前に警察が介入すると、裏切りとみなされてエドガーの身に危険が及ぶ可能性が高い。


 かと言って、表立っては一介の女子大生に過ぎない自分が、先んじて事態を収めるからそれまで待つよう頼んだところで、納得されるわけもない――。



 考えを巡らせながら、マキは人差し指でコツコツとハンドルを叩いていた――が、やがて何かを閃いたのか、やおらティータに向き直る。



「そうだティータ、ガブちゃんに連絡して」


「ガブリエルさまですかー?」



 疑問符を顔に浮かべながらも、言われた通りスマートフォンを操作するティータ。



「ガブちゃん、あたしのスマホにいきなりメール送りつけたりするぐらいだし、ハッキングとかできるんでしょ?

 天使なら犯罪もへったくれもないでしょうし、ここは一つ手を貸してもらうわ」


「なるほどー……あ、繋がりましたー」




『どうかした?』




 いつも通りの簡潔なメッセージとともに、首をかしげるガブリエルが映し出される。


 マキは簡潔に事情を説明し、協力を要請した。



 すると――ガブリエルは、びしりと中指を立てて見せる。



「……え、なに、あたし何かマズいこと言っちゃった?」



 まさかと思いつつマキが問い直すと……。


 ガブリエルは自分の手をまじまじと見直した後、改めて、今度はぐっと親指を立てて見せた。



「あ、ああ、間違っただけだったんだ……。

 仮にも大天使からそんなマネされたら、さすがにとんでもないことやらかしたのかって、ちょっとビビったよ……ふう」



『そっこうであらいだす。そのままむかってて』



 ガブリエルは嬉々とした様子で、キーボードを叩き始める。


 それを眺めていたマキは、ふと疑問に思って尋ねてみた。



「……でもガブちゃん、やけにあっさり協力してくれるんだね。

 ロイの頼みとは言え、ゴーストキャリアーとしての本来の仕事からは逸脱してるから、お小言ぐらいはもらう覚悟をしてたんだけど」



 ガブリエルは動きを止めることなく、首を横に振っていた。




『……ゴーストキャリアーは、ただ魂を運べばいいわけじゃないから』




 車内に突然、それこそ天上の音楽もかくやとばかりの、ぞくりとするほどに美しい声が響く。


 一瞬、どこの誰が場に割って入ってきたのかと思うマキだったが、すぐにそれこそが、ガブリエルの地声なのだと気が付いた。

 どうやら、手が塞がっているため、一生懸命に力を振り絞って、本人にとっての大声を上げてくれているらしい。



『希望の光を魂の下へ運び、魂を安息の光へと導く――それが、魂の導き手のあるべき姿。

 だから……マキは、間違ってない。

 正しいことをしてるんだから、わたしが手伝うのも当たり前』


「そっか……。

 うん、ありがとうガブちゃん」


『おにゃのこかいたい』


「うん、それを言うならお茶の子さいさいね。

 それ、恐ろしく物騒な言葉にバケてるからね」



 苦笑混じりに言って、マキはちらりと過ぎゆく標識を確かめる。


 アニアドへの出口は近付いてきていた。



「お姉ちゃん……天使様も……本当にありがとう」


 深々と下げられるロイの頭。

 それを、マキはそっとなでてやる。



「うん。

 ……でも、本番はここからだからね」




 マキの一言に、ティータも元気に応える。




 そんな二人にもう一度礼を言って、ロイは――。


 うつむくばかりでなく、自分でも何かできることを探そうとするように……しっかりと視線を上げて、前を向いた。






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