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とある二人の会話

作者: 亜夢人

「粗茶ですがどうぞ」ガチャン


「ありがたく頂くよ」


「………ちっ」


「ん?どうかしたかな?」


「………別に。で、今日は何のようなの?」


「アレの様子を聞こうと思ってね。キミに渡してそろそろ一年になるだろう?」


「一年分の成績がこれに書いてあるわ」


「………フムフム。一年で十一人か。想定してたよりも多いな」


「どれくらいを想定してたのよ」


「五人だ」


「………少ないわね」


「当たり前だろう?何の説明もせずにキミに渡したんだし」


「わざとね?」


「もちろんさ。キミが気付かない事を想定しての五人だったしね。そんなわけで、是非ともアレについての意見が欲しいんだけど」


「そうね………二人目の彼女ならいらないわ」


「そうなのかい?キミたちからすれば、かなり有用な力だと思うんだけど?」


「たしかに、傷ついた魂の昇華だけで見れば有用なんでしょうけど、いかんせん時間がかかり過ぎね」


「………」


「人が死んでいくペースは、現状だとかなり速いわ。その魂を回収する速度が遅くなれば、地上に留まり続けることになるだけじゃなくて、輪廻させるそちらにも影響があると思うんだけど?」


「………それは否定できないかな。ただ、今のままだと魂の回復が追いつかないんだよね。本来であれば、ある程度傷ついてしまった魂は人の手が入ってない場所で回復させるんだけど………」


「自然破壊ね」


「概ね正解かな。人の欲って言うのは留まるところがないからさ、魂が回復する前に刈り取られちゃうんだよね。回復させないと魂は壊れて使い物にならなくなるのに。『人は生まれながらにして罪を犯している』なんて言葉があるけど、まさにその通りだよね」


「………」


「いやいや、こっちだってちゃんと仕事はしてますよ?でもねー、そろそろ限界なんだよ。人の産まれ落ちる速度は変わらないのに、魂の傷つく速度は速くなって、回復させようとしてもすぐに刈り取られるし」


「それで彼女を創ったの?」


「上の方でね、選民思考ってのが出てきてるみたいなんだよ」


「………っ」


「人として使う魂は選別して、要らない魂は切り捨てる。………とは言っても、ほんとに捨てられるわけじゃなくて、その魂が回復していく分を全て他の魂に譲るってだけなんだけどね」


「まさかっ」


「そう、アレに与えた力は『共感』と『譲渡』。相手の魂の回復に、『共感』で自分の魂を回復して、その分を相手に『譲渡』する。なかなか良いと思わないかな?」


「………アンタも選民思考ってことでいいのかしら?」


「まさか。ボクもそこまで人には絶望してないよ」


「じゃあ、なんでっ!」


「これは、所謂テストケースなんだよ。選民のためじゃなくて、魂の回復を追いつかせるためのね。勿論、上の指示だから、選民のためのって言う肩書は入るけど」


「………」


「それに、アレを見捨てようなんて考えてはいないよ。表面上では分からないと思うけど、内部では相手に『譲渡』した時の一部を自分の物としてストックできるようになってる。それがある程度貯まったら、一気に自分の魂を回復させるって構造になってるんだよ」


「ある程度ってどれくらいなのよ」


「うーん、魂の傷つき具合で変わるからなー。アレだったら、五割くらいかな?」


「………彼女の魂は手遅れレベルで傷ついていたはずだけど」


「だからこそ選ばれたんだよ。本当に回復できるのかのテストもかねてるからね」


「………」


「そんな顔されても、ボクにはどうしようもできないよ?それに、キミだって回復出来なくなった魂がどうなるかは知ってるはずだ」


「助かる確率は?」


「そこまでアレにいれこまないほうがいいと思うけど………。そうだね、現状で見るとほぼ確実に助かるって言っても問題はないかな」


「………そう」


「喜んで貰えたようでこちらとしても良かったよ。それじゃあ、そろそろボクは帰ろうかな。色々と、こっちも立て込んでるし」


「………三人」


「ん?」


「いや、後二人だったら現状でも何とか面倒は見れるわ」


「協力してくれる気になってくれたなら助かるよ。だったら、近々起こる予定になってるところから、二つほど魂をこっちに送ってもらえるかな?それで創って、キミに渡すから」


「魂の状態とかに注文はあるの?」


「限界が近い方が良いかな。そっちの方が調査はしやすいし」


「分かったわ。できる限り限界に近い魂を送っておく」


「頼んだよ」


「えぇ」

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