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Ⅴ
深矢が走り出そうとしたその瞬間に、ケータイの着信音が鳴った。
聞こえてきたのは、海斗の興奮気味な声。
「任務対象の顔が割れた!潜伏名は……」
「分かってる」
その焦ったような口調を遮り、深矢はゆっくりと言った。「どこにいるかも検討がつく。今から向かう」
「いいのか?……私情は挟むなよ」
その海斗の声はやけに心配そうだ。しかし深矢はそれを軽く笑い飛ばした。
そして言い聞かせるように、噛んで含ませるように言葉を吐いた。
「甘く見るなよ……優先すべきが任務ってことくらいは分かってる」




