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プロローグ
太陽が照りつけ反射する海面。空気は乾燥しているが、その放射熱によってジリジリと肌の焼ける感覚が皮膚を覆う。
「暑いねー」
眩しい太陽を見上げ、滴る汗を腕で拭う。男は船から降り、夏真っ盛りの常夏の島に降り立った。
「昼過ぎ……か」
時間を確認し港町をぐるっと見渡す。暑そうに頬を火照らせた人々が大きな荷物を抱えながら行き交っている。リュック一つだけを背負った男は悪目立ちしそうだ。
「まずは腹ごしらえかな」
旅行客は旅行客らしく。だが目的は観光ではない、本来の目当ては――
男は眩しさに目を細めつつ、内陸の少し高台に建つ白い建物を見上げた。その白さはこの街の賑やかさから浮いていて、そこだけ涼しそうな雰囲気を放っている。
「良いね、綺麗だ」
目的は決まっているし、ターゲットは逃げない。幸いなことに、今はまだ追っ手もいない。
「まぁ気長にいこうや」
男はニヤリと笑みを浮かべて港町の人混みに紛れるのだった。