第八話 呼び名はホームドラマ?
「親友の恋の相手の親友とは友好関係を保つべし」
…沙希がこんな御触書を出してから数日。
確かに言ってる意味はわかる。わかるよ?でもね?
思ってても出来ないっていうのが人間ってもので…
「はぁ…痛っ!」
大袈裟なため息をついた私の頭を沙希が小突く。
「ため息禁止。スマイル0円でお願いします」
「…そんなマリア様みたいなこと出来ません」
「あ、沙希ちゃん。こっち〜!」
待ち合わせ場所…例の悪夢のファミレスに足を踏み入れると、彰くんがさわやかな笑顔でこちらに手を振っていた。
「ごめんね!遅かった?」
沙希も笑顔だ。ほんわか空気が漂う。
…その一歩先からは闇だ。闇が広がっている。
「何ブツブツ言ってんだ?座れば、杏チャンも」
はい??下の名前+チャン??
「…私名前言いましたっけ?」
「彰に聞いた。立花 杏チャン?」
「杏ちゃん…ってやめてくれない?あのホームドラマ思い出す」
「同じ屋○の下?」
はい。珍回答。
「…ひとつ○根の下だろ」
出ました。灘波 慶のツッコミ。
「まぁ座れよ。ん、メニュー」
「どうも…」
何か変な図だ。私と沙希が右側。3人が左側。
沙希と彰くんは端で向かい合って二人の世界。
…残された3人。何だこの異様さ。
「杏、お前決めた?」
「ちょっと…!何で呼び捨てっ…!?」
「あ?"チャン"嫌なんだろ?」
それはそうだけど…他にもあるでしょ!上の名前が!
「別に俺も呼び捨てでいいし。タメだし。問題ねぇだろ」
…どんな理屈ですか!?
「ちなみにこっちも"慶"でいいし。んで、何?決めた?」
「…アイスティー…レモンで」
…何だかわからないことになった。
…私がコイツらを下の名前で呼び捨てにすることなんか…ないでしょ。




