第六話 カルボナーラはいつも通り
カルボナーラのパスタはいつも通りおいしそうだ。
ファミレスだから所詮冷凍だろうけど私は好きだから問題ない。
でも今日はいつものような味に感じられない。
…ま。原因は私の隣しか考えられないんだけど。
「じゃあ、こないだの海で会ったんだ?俺たち3人でいたんだけどなぁ」
小柄な男のコ。こと、野田 彰は不思議そうな顔で言った。
「お前ずっと泳いでただろ」
「あ、そっか。じゃあ会わなくて当然だ」
納得。と言わんばかりの笑顔。
…さわやか少年。この形容詞がぴったり似合う感じだ。
「まさか杏がナンパとはねぇ…そういうの嫌いなのに」
だから通訳だってば!!聞いてます!?沙希サンっ!
「ね、それって中央高校の制服だよね?俺たち北野高なんだ!」
「そうだよ♪って近いね!駅同じっ」
沙希と彰くんは何だか盛り上がってる…ほっとこう。
私はとにかく隣を見ないことに決めて、カルボナーラを食べ始めた。
「アンタ何であんなに英語喋れんの?駅前留学?」
隣からマネキンの声がする。
…見ないって決めたのに。チッ。
「…アメリカに4年住んでたの。だから」
質問されたら答える。あぁ…私って律儀な人間だな。
「…アメリカ?」
今まで沈黙を通していただるそうなヤツ。
こと、灘波 慶が口を開いた。
「?うん、そうだけど…」
何だ?アメリカに興味あるのかな?
「何?慶、アメリカ好き?」
私が思ったことをマネキンが聞いた。うわ…思考回路おんなじ。
「…別に。ってかアメリカ好きの意味がわからん」
…何気にツッコミキャラ?意外だ。
「で、なるほどね。そりゃ発音も本場なわけだ」
いきなり話を戻される。
灘波 慶はまただるそうにしている。
「…アンタは?」
「生まれも育ちも日本。日本語は得意中の得意」
日本人!?…なわけないよねこの顔で。
「日本とイギリスのハーフ」
…聞いてないのにペラペラ喋るヤツだな。
「顔に書いてるよ。何人だ?って」
ニヤリ笑うマネキン…こと、水嶋 恭介
…どうやらやっぱり私の嫌いなタイプらしい。




