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君がいるから  作者: 柚果
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エピローグ

「ふんふんふ〜ん♪ふふふん♪」


「ふんふんふ〜ん♪」



「ちょっと沙希…いい加減そのニヤけた顔やめてよ」


「無理。だって面白いから」


「…」



1月5日。まだお正月気分真っ只中のとある喫茶店。



私と沙希は向かい合ってお茶をしていた。



学校というほぼ毎日顔を会わせる場所があるにせよ今は休み



沙希はどうしても私に会いたかったらしい。



2日は私が親戚付き合いの為、3・4日は沙希が親戚付き合いの為。



ようやく会えたのが今日の5日。



理由は聞くまでもなくきっとアレ。



なのに会った瞬間ニヤニヤと笑い出し、肝心な事は何一つ聞いてこない。



…だからその顔やめてってば!!



「1日はお二人で消えちゃったようで♪それは付き合ってる私たちに遠慮してからなのかな?…それとも」



…うっ。



そう。あの日、初詣に行った日。おみくじを結びつけた私とアイツはそのまま抜けたのだ。



アイツが彰くんにメールをしたのは知ってる。だけど私は沙希に出来ずにいた。



「…ごめん、怒ってる?」


「何で?私からかう気満々なんだけど?」



ぎゃぁ!やめて!!



「冗談よ、冗談。幸せラブラブバカップルからかって何が面白いのよ」



…それって自分たちのことなんじゃ



思ったけど言わないでおこう。それが賢明だ。



「だけどびっくりした。急だったんだもん」



そう言ってキャラメルマキアートをコクリと一口。



確かに何も言ってなかったから驚いたのも当然だろうなぁ…



「でもいずれこうなるとは思ってたけどね」



…ん?



「それは…沙希の妄想?」


「失礼なっ。ちゃんと理由あってのことよ」



理由って…何?



私が思いっきり首をかしげると、沙希はふふふんと不適な笑みを浮かべている。



そして思いも寄らぬ言葉を口にした。



「彰くんに聞いてたんだよね。"恭介のヤツ立花さんのこと気になってるんじゃないのかな"ってね♪」



…え?…え?えぇぇぇ〜!?



「何それ…!?私聞いてないよ!?」


「だって確信はなかったんだもん。それに言ったら面白くないし」



…沙希はどこまでもやっぱり沙希。



あの癒し系の彰くんと付き合おうとも素の沙希だ。



…彰くんはこういうとこに惹かれたのかな。裏表のない沙希に。



そんなことを思っていると、私の脳裏に嫌な考えがよぎった。



「…沙希ちゃん…まさか私のことは言ってないよ…ね?」



いくらなんでもそりゃないよね!?



「当たり前でしょ。そこはわきまえてますから」



あぁよかった…。この3分ぐらいでやたらと喉が渇いてしまった…



私は冷め切ってしまった紅茶にゆっくりと口をつける。うん、落ち着く。



「良かったね」



沙希の言葉に目線だけを向けると、優しく笑う沙希の顔が見えた。



やっぱりこの笑顔は、沙希をいつもの数倍かわいく見せる。



「…うん。嬉しかった」



あの時、ふと想いが溢れてきて…気が付いたらアイツの腕の中で…



"好きだから。多分お前よりずっと前から"



「ちょっと。思い出し笑い禁止。根掘り葉掘り聞き出すわよ」



「あ…」



うそ!私笑ってた…!?



「ねぇ今なんて呼んでるの?"恭介くん"?"恭介"?」


「えぇっと…それは」



実は未だにアイツのことは"水嶋 恭介"。フルネームで呼んでいる。



口には出さなかったけど、私の表情を見て沙希はわかったように呆れている。



…さすが幼馴染み。



「まぁいいけどね。でも心配させちゃだめだよ?」


「心配?」


「杏は鈍いんだから」



まただ。これで一体何回言われたんだろう…



「あの初詣の日の告白だって"ヤバイ…アイツ絶対狙ってるだろ"って言ってたらしいよ」



ヤバイ?狙ってる?何のこと?



「だから鈍いって言ってんの。あんな姿で涙目であんなこと言われて思わず抱きしめちゃったってさ♪」



ぎゃぁ!アイツ何言ってんの!?



「それを無意識にしちゃうんだもん。彼氏としては当然心配でしょ?」


「…何がよ?意識的も無意識も別に変わらないじゃん」


「…ダメだこりゃ」



呆れかえっている沙希の顔が見える。…わからない。



〜♪



すると沙希の鞄から携帯の着信音が聞こえた。



「あ、彰くんだっ♪はいは〜い」



多分いつまでもラブラブカップルなんだろうなこの二人は…



〜♪



「あ…」



笑って沙希を見ていると、同じように私の携帯も鳴り始めた。



ディスプレイに写った文字は"恭介"



携帯だけの呼び名だ。



『心配させちゃだめだよ?』



別に…心配される理由なんかないけど…



私は携帯電話を勢いよく開いて、そして耳へあてた。




「もしもし…恭介?」



END


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