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君がいるから  作者: 柚果
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第六十話 限りある今

ベッドに横になって目をつぶると



不思議な安心感と幸福感に、私はすぐに瞼を閉じた。




ピピピピピ…



携帯のアラームを止め、ゆっくりと起き上がると外で駆け回る子供の声が聞こえる。



きっとお正月ならではの遊びを楽しんでいるんだろう。



私は定番のお雑煮を食べると、急いで準備に取り掛かった。



髪を結い、いつもより濃い目にメイクをする



着物の場合はいつもこうだ。華やかな着物に顔だけが浮いてしまわないように。



ぎゅっと着物の帯を締めると気持ちも引き締まる。




「杏こっちこっち」



駅へと向うと、思った通り赤色系の着物を着た沙希が手を振って待っていた。



…カウントダウンの時もだけど、こういうイベント事には来るの早いんだよね



「そんなに手上げると着物崩れちゃうよ」



顔立ちがはっきりしている沙希に、赤色が良く似合う。



…って何その顔?



沙希は眉間にしわを寄せて私の方をじっと見ている。



「何よ…?もしかしてどっか変!?」



久しぶりの着付けに不安になった私は、キョロキョロと自分を見回した。



…うん、特にない。じゃあ何だ?



「…化けたねぇ」



感心して言うセリフじゃないでしょ…



っていうかそれは沙希も同じですからっ!!



「あ、化けたっていうか…倍増?どっちにしても嫌味」


「嫌味!?何でよっ…あ!」



昼間だと言っても冬ど真ん中の1月。羽織っていた白のストールが



私の肩からするりと落ちそうになる。



うそ…!?こんなとこで落としたら黒く汚れる…っ!



パシッ



え?



私が振り向いてストールの裾を持ち上げるよりも前に、後ろにいた誰かが落ちる寸前に止めてくれた。



「白は落としたらまずいだろ」


「…水嶋…恭介」



ストールの裾を持って、にこっと笑うアイツがそこにいた。



「あ…ありがと助かった」



ドキン。と高鳴る鼓動を抑えつつ、私はアイツからストールを受け取る。



「沙希ちゃん似合うっ!かわいい!」


「本当?うれしいな、ありがとっ♪」



このバカップル…自由すぎ…



ラブラブ雰囲気を醸し出し過ぎな二人を横目に、ふぅ、とため息をつく。



「似合うじゃん着物」


「…え」


「"馬子にも衣装"ってやつ?」



ニヤリ、と笑うアイツの顔が見えた。



…悔しいけどそんな言葉も嬉しくなってしまう



「…その言葉嬉しくないっ」



あの時は気持ちが高ぶって…伝えるって決めたのに…



こうやって意地張ってしまうのは私の悪い癖だ



「あれ、慶くんは?」



沙希はふと気付いたように辺りを見回しながら言った。



「うん、慶のヤツ急用で行けないって。連絡あったんだ」



"そっか。しょうがないね"と私に同意を求めるようにこちらを振り向く沙希に



"…そうだね"と答えるしか出来なかった。



『悪い。初詣はおれ行かない。…行くところがある』



別れ際に慶くんはこう言っていた。どこに行くのか、なんて聞かなくてもわかった。



きっと姉のところだ。何の迷いもなくそう思えた。



「おい行くぞ」



アイツの声に振り向く。この時間がいつまでも続くなんて限らない。



私はそれを知っているはずなんだ。だから…



「ありがとう。本当は嬉しかった」



意地張ってる時間なんてもったいない。こんなに近くにいるんだから。



隣に並んで見上げるとアイツの姿が私の目に映った。

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