第四話 ファミレスにご注意
全然待ち焦がれていない始業式。
「杏、こないだ会ったときより焼けた?」
人が気にしていることをズバっと言ってくれたのは、
私の幼稚園からの腐れ縁…もとい幼馴染みの上原 沙希だ。
「…元同級生に海に強制連行された」
「海?まだ行く人いるんだ」
「結構いたよ。びっくりするくらい楽しくなかったけど」
今思い出しても意味不明。
何で私が連れて行かれたのか。
そう言うと沙希が呆れたように言った。
「そんなの決まってるじゃない。理由なんて1つよ」
「…何よ?」
「狩り成功率アップの為の最終兵器」
…人を兵器呼ばわりするな。しかも余計に意味わかんないし。
「ね、今日始業式だけですぐ終わるでしょ?お昼食べて帰ろうよ?」
「いいよ。じゃあいつものとこで♪」
いつものところっていうのは駅の近くのファミレスだ。
学生のサイフに優しいのでありがたい。
「いらっしゃいませ何名様ですか?」
「2人です」
「ではこちらへどうぞ」
やっぱり時間的にも混んでるなぁ〜。
何食べよっかな?だいたいメニュー見なくてもわかるし。
「ごゆっくりどうぞ」
マニュアル通りの接客をした店員が戻ってく。
わかっていてもやっぱりメニューは開いてしまう。
「あ」
やっぱりカルボナーラ…って、え?
今なんか声がしたような…したよね?
ちらっと視線を向けると、声を出したであろう人と目が合った。
あ。
その瞬間、私は考えるよりも先に言葉が出ていた。
「マネキン!」




